間話3凍りつく過去
―次元No.2
タルタニア大陸 竜帝歴26年
水帝竜領・ネーロラ地方・魔能研究都市スッケオ―
雪がしんしんと降り積もる、静寂に包まれた都市。
だが、その街の中心には、静寂を切り裂くような夥しい数の死体が転がっていた。
赤黒く染まった雪原の中に、一人の男が立っている。
水色の髪。返り血に濡れた剣と銃を手に、凍てつくような無表情のまま、白く冷たい息を吐き出した。
生き残った数名の騎士たちが、男を取り囲むように距離を詰める。
「武器を捨てろ……! 貴様、これほどの凶行を働いて、ただで済むと思うな!」
だが、男は言葉を返さない。
最も近くにいた騎士の首元を一閃。
反撃の隙すら与えず、血飛沫と共にまた一人、また一人と物言わぬ骸に変えていく。
その凄惨な光景を、震えながら遠くで見つめる――白髪の若者がいた。
彼の名は、ホワイトドラゴン。
その目からは、止めどなく溢れる涙が頬を伝い、雪の上に落ちていた。
やがて、血の海を静かに渡り、水色の髪の男が彼の前に立つ。
かつて誰よりも信頼し、背中を追いかけたその人が。
男は無言のまま、ホワイトドラゴンの頭にそっと、血のついた手を置いた。
「……すまんな、ホワイトドラゴン。
お前なら、もう一人でも強く生きていけると思っていた。
“もう涙なんて流さない”……あの日、そう約束したのに。
こんな姿を見せて、すまない。」
ホワイトドラゴンは、怒りに拳を震わせながら男の腕を掴み上げる。
今すぐその顔を殴り飛ばしたい。けれど、その腕には絶望的なほどに力が入らなかった。
「……先輩のことなんか、大っ嫌いだ!!!!!!
今日……今日さ……最高のクリスマスパーティーをするって、約束したじゃないか……ッ!!」
水色の男――は、その叫びを真っ向から受け止め、微かに、苦しそうに口角を上げた。
「クリスマスパーティー……。約束、守れなくてごめんな。
俺のことは……もう、どう呼んでもいい。
……俺はもう、お前の“先輩”じゃないんだからな。」
降り積もる雪は、流れる鮮血も、少年の慟哭も、すべてを無慈悲に覆い隠していった。




