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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第四章炎魔再熱
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第34章竜化の道

次の日の朝、僕たちの部屋に置き手紙があった。

シャレンティエンさんからだった。


『私はこの道場を出て、森にいる。黒ドラはそこへ来い。里見とホワイトドラゴンは、道場に来るように』


手紙に書かれている通り、僕は一人で森へと向かった。

鬱蒼とした緑の奥へ進むと、そこにシャレンティエンさんが立っていた。


「シャレンティエンさん……」

「よく来たな、黒ドラくん」

「こんな森の中で、一体何をするんですか?」


シャレンティエンさんは答える代わりに、懐から小さな笛を取り出して唇に当てた。

高く澄んだ音が響き渡ると、草むらや木々の影から、ゾロゾロと無数の魔物(まぶつ)たちが現れた。


「えっ、魔物(まぶつ)!?」

僕は思わず身構えたが、シャレンティエンさんは不敵に微笑んだ。

「安心しろ。皆、私の友達だ」

「そうなんですか……」


警戒を解くと、一部の魔物(まぶつ)たちが僕の足元にトコトコと近寄り、甘えるように体をすり寄せてきた。その愛らしさに、僕は自然と目尻を下げて頭を撫でてあげる。


「さて、黒ドラくん。君にはこれから私たちの試練をクリアしてもらい、最大能力である『竜化』を身につけてもらう」

半竜化(はんりゅうか)、じゃなくてですか?」

「そうだ。まずは完全な竜化を成し遂げなければならない。半竜化(はんりゅうか)というのは、竜化(りゅうか)と人間の姿の中間に位置する状態だ。竜化(りゅうか)によって解放された莫大な魔能(まのう)を保ちながら、人間の肉体を維持しなければならないからな。つまり、まずは基本となる『竜化(りゅうか)の解き放たれた魔能(まのう)』を、全て完璧に扱えるようになるのが先決というわけだ」


シャレンティエンさんはそう言うと、一枚の地図を僕に手渡した。

そこには、いくつかの地点に丸い印がつけられている。

そして、火山の絵が描かれた場所には、ひときわ大きく『ゴール』と書かれていた。


「この地図は……?」

「今から、君には私たちの試練を乗り越えてもらう。これをすべて突破したとき、君は竜化(りゅうか)へと至るはずだ。この島にあるゴールの火山を目指すにあたり、どのルートを通っても構わない。ただし、地図にある丸い印の場所には必ず立ち寄れ」


シャレンティエンさんは背を向け、森の奥へと歩き出す。

「私はゴール地点で待っている。制限時間は、明日のこの時間までだ。もし間に合わなければ、もう一度最初から丸い場所を巡り直しだ。いいな?」

「えっ、あ、はい!」


僕は地図を握り締め、意を決して森の奥へと足を踏み入れた。

「まずは、一番近いここに行ってみるか」


歩き始めて早々、空から狂暴な鳥が襲いかかってきたり、茂みから仕掛け矢が飛んできたりした。それらを必死に避けながら、ようやく最初の目的地に到着する。

そこには地面にぽっかりと開いた、奥深くへと続く不気味な縦穴があった。


すぐ近くの岩の上に、また紙が置かれている。

『この穴に炎を流し込み、地中に潜むものを焼き出せ。ただし、熱の温度調整を誤れば、地中から怒った蛇が飛び出して噛みついてくるぞ。安心しろ、毒はない。少し痛い程度だ』


「えぇ……」

僕は思わず顔を引きつらせた。

しかし、やるしかない。手から黒炎が出るように集中し、念じる。

「はあっ!」

手のひらから黒炎の渦を放ち、穴の中へと流し込んだ。


だが、火力が強すぎたらしい。

「チッ!」という不快な音と共に、僕の足元から無数の蛇が飛び出し、容赦なく足首に噛みついた。

「グッ……!」

浅い傷とはいえ、鋭い痛みが走り、足元からタラリと血が滴る。蛇たちは目的を果たすと、すぐに地下へと戻っていった。


僕は足の痛みに耐えながら、奥歯を噛み締めて再び立ち上がった。

「もう一回だ……!」

再び炎の渦を作り出し、穴へと流し込む。

しかし、またしても調整に失敗し、飛び出してきた蛇に噛まれてしまう。


それでも僕はめげなかった。

何度も、何度も挑戦を繰り返す。足の噛み傷が増えていくにつれて、感覚が研ぎ澄まされていくのが分かった。炎のコントロールのコツを、体が掴み始めていた。


「次なら、いける……!!」


僕は慎重に黒炎の温度を微調整し、限界まで集中して穴の中へ滑り込ませた。

数秒の後

ジリジリという音と共に、見事にこんがりと焦げた肉の塊が中から飛び出してきた。すると、生き残った蛇がその肉を咥え、満足したように巣の奥へと持ち去っていく。


「これで……いいのかな?」


一筋縄ではいかない試練に冷や汗を流しながらも、僕は次のポイントへと急いだ。次々と丸い印の場所を訪れ、ボロボロになりながらも必死に試練を乗り越えていく。


「15個の丸のうち、10個クリア……。あと、5個……っ」

気づけば、周囲はすっかり帳に包まれ、夜になっていた。



一方その頃、ゴールの火山近く。

シャレンティエンは岩に腰掛け、月を見上げながら優雅に梅酒を煽っていた。


「あいつなら、明日の昼前にはここに辿り着くかねぇ……」


その時、突如として足元が激しく揺れ動いた。

「また地震……? いや、何か嫌な予感がするな…。」


不穏な空気が満ちる中、暗闇から、一人の男が姿を現した。手には懐中時計を持っている。灰色髪のその男の顔を見て、シャレンティエンの目が鋭く細められた。


「クロノス……!!」


「お久しぶりです、シャレンティエン。あの要塞のこと以来でしょうか……」

クロノスは不敵な笑みを浮かべる。


シャレンティエンは油断なく拳を握り、じりっと間合いを詰めた。

しかし、クロノスは焦る様子もなく、懐中時計をもてあそびながら言葉を続ける。


「おやおや、そう焦りなさるな。時の運命……いや、あの方の命令でしょうか?今の君にぜひ見せたい素晴らしいものがありましてね」


クロノスが指さした森の奥から、ガサリと草を分けて一人の女性が現れた。

そのミントグリーンの美しい髪を見た瞬間、シャレンティエンの息が止まる。


「フローラちゃん……!?」


それは、かつて死んだはずの、シャレンティエンの大切な友人『ガイテミア・フローラ』だった。


「そうです。死んだはずの君の友人、ガイテミア・フローラちゃんです。まあ、今は……」


クロノスが言葉を切り替えた瞬間、フローラの瞳が妖しく光り、地面から無数の太い植物のつたが牙を剥くように飛び出した。蔦は鋭いスピードでシャレンティエンを捕らえようと襲いかかる。


しかし、シャレンティエンはまるで酒に酔ってふらついているかのような、変幻自在の千鳥足でそれらを紙一重で回避した。


「改造して、我らの操り人形ですけどね…。」

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