第21章虹色の大剣の謎、破れた絆は簡単には戻らない
砂魔竜の巨体は、一刀のもとに断たれ、砂漠の静寂の中に横たわっていた。
切り口からはドロリとした緑色の体液が溢れ出し、熱を帯びた砂を汚していく。
(……あの大剣は、一体何だったんだ?)
僕の手には、すでに元の姿に戻った刀が握られている。
発動した瞬間、胸の奥を鋭い棘で貫かれたような激痛が走り、直後、全身の魔能を根こそぎ奪われたような虚脱感が襲ってきた。視界がぐにゃりと歪み、猛烈な睡魔が意識を塗り潰していく。
「……さっきの大剣。あれがお前の魔能か?」
クリウスアーナが、死骸を見つめたまま静かに問いかけてきた。
僕は焦点の合わない目で彼を振り返り、掠れた声で答える。
「何も……分から、ない……んです……っ」
膝から崩れ落ちる僕を、クリウスアーナが素早く抱きかかえた。
「……魔能の過剰消費か。気になる魔能だが、強くなったな、黒ドラ。かつての仲間として、その成長は素直に嬉しいよ。……新しい仲間もできて、楽しそうじゃないか。だがな――」
彼は僕をそっと地面に寝かせ、背後の二人に冷ややかな視線を向けた。
「今のお前たちには、致命的な欠陥がある。それを乗り越えられるかはお前たち次第だ。……殺そうとしたこと、詫びておくよ」
少し離れた場所では、里見さんとホワイトドラゴンが、凍りつくような沈黙の中で対峙していた。
「……あの虹色の魔能。何だと思った?」
里見さんが、低く、探るような声で切り出す。
ホワイトドラゴンは、煮え繰り返るような感情を押し殺し、拳を白くなるほど強く握りしめていた。
「分からない。……だが、黒ドラは苦しんでいた。まさか、お前……あいつに何を『流し込んだ』?」
「何もしていないわ!! ホワイトドラゴン、貴方も同時に彼を掴んでいたでしょう。そっちこそ、自分の魔能で黒ドラくんに何かしたんじゃないの!?」
里見さんの鋭い追求に、ホワイトドラゴンが激昂する。
「ふざけるな……! 僕が、仲間を道具にするような真似をすると思うか!」
「なら、あの異常な出力は何よ! 私の知る魔能を超えていたわ!」
今にも殴りかからんとするホワイトドラゴンの拳を、里見さんは視線だけで撥ね除けた。
「……やめて。私はただ、仲間として彼を助けようとした。……それだけよ」
ホワイトドラゴンは激しく舌打ちし、吐き捨てるように背を向けた。
「……勝手にしろ。僕は、あいつをあんな目に遭わせるような『仲間』は認めない」
一人残された里見さんは、去りゆく彼の背中と、夜の帳が下り始めた砂漠の空を見上げた。
「……私も、あの子を助けたいと思っただけなのに。……ねえ、お姉ちゃん。仲間って、こんなに脆いものなの?」
その呟きは、誰に届くこともなく、熱風に巻かれて消えていった。




