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ep.37 生まれ変わって、あなたに会いたい

◇◇◇ 

 その日から、私とお父さんの生活が始まった。


 私は前世はずっと室内で暮らしていたので、外に出たいとは思わなかった。私室が気に入ったので、しばらくは私室に籠もって過ごすことにした。それに、窓からは美しい庭園が見えたのだ。


 お父さんは、無理に私を外に連れ出そうとはしなかった。


 私はお父さんに頼み、絵の具と紙と筆を用意してもらった。


 私は毎日、絵を描いて過ごした。

「お前の絵は、想像力にあふれてるな」


 初めて私の絵を見たお父さんは驚いて、私を褒めてくれた。そして、私に教えてくれた。


「実は女王はな、魔界一の絵師と言っても過言じゃない。まるで、絵の中に本人がいるような精巧な絵を描くんだよ。女王の絵を持ってることはステータスさ」

「そうなの!?」


――お母さん、女王なのに画家だったのー!?


「対照的に、シェルリの絵は創造的だな。とっても良いよ」

「ほんと!? 嬉しい!」


「欲しいものがあれば、絵の具でもなんでも言いなさい。用意するから」

「なら私、アクセサリーを作るキットと、魔宝石が欲しいな。彫刻刀も欲しい」


――サイリンの城では、彫刻もよくしてたんだよね……。削った石でアクセサリーも作ってたし。久しぶりにやりたいな……。魔宝石でアクセサリーを作ったら綺麗なんじゃないかな?


「アクセサリーを作るキット? そんなものを売ってる国は限られてるな」


――やば……。なんでキットの存在を知ってるんだって突っ込まれたらどうしよう。前世の祖国は芸術大国だから普通に売ってましたなんて言えない……。


「デザイン画を描いてくれれば、私が魔法でアクセサリーくらい生成できるぞ? イヤリングの金具とかが作りたいってことだろ?」


「魔法で生成!? 凄い! じゃあ、お願い!」


「わかったよ。用意しよう。危ないから、彫刻刀用の手袋をはめるんだよ」


「うん! ……あの、ところで、お母さんは?」


「ん? あいつならヴァルブライカで政務してるぞ」

「私、お母さんに会いたいな……」


 私がもじもじしながら言うと、お父さんは優しく笑った。

「そうか。なら、十日後に会ったらどうだ? 今は女王は忙しいからな。 私がヴァルブライカの城まで送ってやろう」


「ほんと!? 嬉しい! ありがとう!」


◇◇◇ 

 そして、十日後になった。


 私は、朝から可愛いドレスを着て、髪を三つ編みに結い、可愛らしい小さなリボンを髪に沢山つけておめかししていた。


――早くお母さんに会いたいな……。


 鏡を見てそわそわしていると、お父さんが部屋に来て言った。

「シェルリ。両手を出してくれ。瞬間移動魔法で女王の私室まで送ってやるから」


「うん! お父さん! ありがとう!」


 お父さんは私の両手を握ると、瞬間移動魔法を発動した。直後、視界がぐらりと揺らいだ。しかし、次の瞬間には、黒を基調とした豪奢な部屋に私は立っていた。


 目の前には広い机があり、お母さんが書類を読んでいた。けれど、私が現れるとお母さんは微笑んだ。


「シェルリ。おはよう。子どもの姿になったってのはほんとだったんだな」

「うん! お母さん! 会いたかった!」


 私は駆け寄ると、お母さんの足に抱きついた。

 お母さんは口角を上げると、少し離れたところにあるソファを指差した。


「あそこにな、綺麗な画集を沢山用意した。好きに読んで過ごすといい」


 私はソファを見た。ソファの上には、十冊くらいの画集が積まれていた。


「わあ……! ありがとう! ところでお母さん、このリボンどう? 可愛くない?」

 私は三つ編みを両手で掴んで、リボンをお母さんに見せた。


「ああ。可愛いんじゃないか?」

 お母さんはリボンを見ると微笑んだ。


「ほんと? ドレスは? このドレスね、フリフリで可愛いんだよ! 似合ってる?」


 私はその場でくるりと回った。すると、私の動きに合わせてドレスの裾もふんわりと広がった。

「ああ。可愛いな」

 お母さんは微笑んだ。


◇◇◇ 

 その後、私はソファで読書をして過ごした。


 そして、ときどき、お母さんが書類仕事をする姿を見つめて過ごした。


 二時間ほどすると眠くなり、気づいたら私は寝てしまっていた。


 目を覚ますと、お母さんはまだ机で仕事をしていた。

「そろそろ帰るか?」


 私が身を起こすと、お母さんは書類から顔を上げて私に聞いた。


「うん! 帰る!」


「そうか。ならこっちに来な。両手を出してくれ。瞬間移動魔法で、赤の城のお前の私室まで送ってあげよう」

「お母さん、ありがとう!」


◇◇◇ 

 私は部屋に戻った。しかし、誰もいない部屋を見て、なんだか寂しくなってしまった。


――もうちょっと一緒にいたかったし、お話ししたかったかも……。


 私はソファに座ると、クッションを抱きしめた。


――そういえば……。ここは、前世と同じ魔界なのかな? もしかして、異世界だったりする? 青の王やクロバやソウマに会いたいな……。


 急に、じわりと涙がにじんだ。


 転生してから、家族に愛されたいと赤ちゃん生活を頑張っていた。その間、青の王たちを想うことはなかった。新しい環境で心がいっぱいいっぱいだったのかもしれない。


――青の王に会いたい……。抱きしめてもらいたい……。でも、いきなり青の王に会いたいなんて言ったら、お父さんもお母さんもびっくりしちゃうよ。転生したって言っても、信じてもらえないかも……。


 そもそも、ここが異世界だったら、青の国自体が存在しないではないか。

 悲しくなったときだ。急に疑問が湧き上がってきた。


――そういえば……。この国の名前はジェルドイなんだよね……。なのに、赤の国って呼ばれてる。なんだか青の国みたいじゃない? 青の国の正式名称はユースだったもの。ところで、なんでお父さんは赤の王って呼ばれてるんだろ? 髪と瞳が赤いから? なら、ますます青の王みたいだわ。だって青の王は、群青の髪と瞳を持つから青の王って呼ばれてたんだもの。だからユースは青の国なんだよね……。


 しばらく考えて、私ははっとした。


――もしかして、ここは異世界じゃなくて、前世と同じ魔界なのかな? そしたら、また青の王にも会える? クロバとソウマにも?

【お知らせ】

本作はここで一度、更新を終了します。

37話まで執筆したことで、物語全体について大幅に改善したい部分が見えてきました。

そのため、大筋や登場人物を引き継ぎながら、本文・構成を大幅に改稿した新版『祝福と地獄と愛』として、改めて連載を開始する予定です。

新タイトルは『寵愛と権力の茨の中で、尊厳と真実の愛を望む』にする予定です。

新版は1月1日より連載開始予定です。

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

新版でもお会いできたら嬉しいです。

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