29 そして巫女様は・・・静かに懇願した。
こんにちは。こんばんは。
この作品は、性的表現。不適切。不快な表現が多数出てくると思われますので、お読みになる方はご注意ください。
また、ご容赦ください。
今回のお話は、前回からの続きとなります。
エーロック男爵に仕える人造人間が一体、『星野ヒカリ』視点で進行されます。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
「んぐはッ」
{巫女さまぁぁぁあああ!!!???}
・・・。
・・・・・・。
・・・私の名前は『星野ヒカリ』。
ダンジョン・フィールド『男爵領』の領主である『エーロック』様によって製造された人造人間が一体。
年齢は22歳となるけれど、それは設定された年齢であり・・・私たちはの姿は製造時に男爵様によって調整されている。
すべては『エーロック・ビデオ』というアダルトなビデオ作品を制作するため・・・これに出演する一人として、私は総合的に『美女』となるよう製造された。
健康な全男子が求める『エェェェロックなお姉さん枠』らしい・・・。
・・・思うところはあるけれど、それが私の使命であるならば全うするのみ。
けれども・・・かのビデオ作品では脇役が決まっていて、主演作品に関しては『妖魔封師』の売り上げとキャラ人気次第らしい。
まぁ、別に主演を希望するわけじゃないけれども、やるからには主役級の仕事はしたいところなわけで?
ほら、まぁ、男爵様はこの度『妖魔封師』の主演女優を選んだ・・・それが、今をときめく注目の『光』を放つ者・・・『命の巫女』様・・・えーっと、名前は『夜乃ユキト』様。
しかし、その主演女優である巫女様が血を吐いて倒れそうになっている。
男爵様が血相を変えて巫女様へ駆け寄るものの・・・巫女様は一歩踏み込むと、歯を食い縛って倒れないように全身に力を漲らせ、抜き放っている刀の刃を返すと駆け寄る男爵様へ斬りかかった。
「近寄らないでくださいッ!」
ふーむ・・・私なら「近寄るな変態ッ!!」って叫ぶかなー。
{あぁあ、危ないですよ巫女様ッ! 何ゆえに血を吐かれているのか存じませんが、体調に不具合があるのでしたら、まずは休まれる事をおススメいたしますッ!}
いや、血を吐いているんだから休むんじゃなくて治療でしょうよ。
両肩を大きく上下に動かしながら口を大きく開いて呼吸する巫女様は、振るった刀の切っ先を男爵様へと向けたまま睨みつける。
脚がブルブルと震えているのは恐怖から・・・ではない? おそらく、力が抜けていっている。
{み、巫女様。今はどうか落ち着いて・・・私どもは、巫女様に危害を加えるつもりはございません。先にも述べた通り、我がエーロック・ビデオの撮影を目的としていたに過ぎないのですッ}
うーん・・・それはちょっと厳しいと思いますよ男爵様。
「アダルトなビデオ作品って言いましたッ! 危害を加えるつもりじゃないですか!!」
ほら、さっき説明しちゃったからバッチリ指摘されちゃった。
{危害?}
・・・ん?
だ、男爵さまが本気で何を言われたのか分かっていない様子だッ!?
これはマズい・・・。
「男爵様、エーロック・ビデオはアダルトなビデオ作品です。つまりは、男女のエェェェロックなシーンを撮影するわけですから・・・」
{あ、あー・・・なるほど。確かに『危害』を加えると言えば、そういうシーンもありますね。これは失念していました・・・むぅ}
そういうシーンもある。じゃなくて、そういうシーンばかりの作品でしょうがッ!
ダメだ・・・男爵様では状況が悪化するだけだ。
・・・ならば、ここは私の出番でしょッ!
「男爵様。ここは私に任せてください」
{ヒカリさん。何か巫女様を説得する手が?}
「ふ。私に秘策アリです」
大丈夫。
巫女様のボディはナイスなバディ・・・そのレベルはこの私にも匹敵・・・する・・・いや、私より巫女様の方が良くね?
スリーサイズ。絶対、私より数値が良くね?
・・・なら、間違いなく大丈夫だろう・・・なんか負けて悔しい気持ちとかはないよ。
うん、ないよ。
「巫女様! ご安心ください。イケメンとマッチョも選り取り見取り! あなた様が要望する男を即座にご用意してごらんに入れます!」
「んぶふッ」
あれぇぇぇ!!?
なんか追加で血を吐いていらっしゃるんですけどッ!?
{ちょっとヒカリさん!? 巫女様がさらに血を吐いたではありませんかッ!?}
「そんなはずは・・・男爵様よりもイケメンでマッチョを用意すれば、きっと納得してくださると思ったのにッ!」
{ちょいおまち。私ってそんなにブサイクですか?}
え? ・・・。
男爵様は、イケメンとかブサイクとか以前に・・・頭、カメラだし・・・ただ、筋肉は足りていないね。
うんうん。全然まったく筋肉が足りていない。
・・・さて、なにが不満なんだろうか?
イケメンな上にマッチョだぞ? 躍動する筋肉に抱かれ、イケメンに優しい声音でエェェェロックなひと時を過ごせるというのに?
はッ! まさか・・・巫女様が所望される男のタイプって、小太りブサメン系ッ!? マニアックッ!?
「ヒカリ姉さん。巫女様はそういうのを求めているわけじゃないと思うんだー」
衝撃的な事実に行き着いた私に、しかし「待った」を掛けたのは三女的な我が妹の『日向テル』だった。
なにやら渋いお茶を飲んだような顔で言うと、「私に任せろ」という顔になって巫女様にすり足で近寄っていく。
お手並み拝見と行こうか。
「巫女様。男爵様とヒカリ姉さんが失礼をしましたー。この後の予定を説明しますと、妖魔封師への変身手順を教えてくれる魔法生物の案内に従って、巫女様は『妖魔封師 スノー・ナイト』へと変身します。その直後に『悪鬼』の瘴気に汚染された『不良男子』くんが乱入し、戦闘となりまして、これに巫女様が敗北してエェェェロック・タイムに突入って感じになっていますーッ!」
巫女様は逃げ出した。
私が「あッ!」と声を出す間に、巫女様は踵を返して脱兎のごとく神社の入り口となる鳥居へと駆けだした。
まさに決死の覚悟が垣間見える全力の逃走・・・だったのだけれど。
どしゃッ!
そんな音を立てながら、巫女様は転んだ。
いや、転んだなんて言葉では表現できない現象が起きた。
「男爵様。巫女様の両足が、なんか妙な折れ方しませんでした?」
そう、巫女様が全力で逃走を図った直後に、踏み込んだ足がグニャリと複雑な歪み方をしたように見えた。
これによって力が分散して踏ん張る事も出来ずに転んだ・・・いや、倒れ込んだ。
{ええ・・・骨がおおよそあり得ない歪み方をして、折れましたね・・・}
男爵様も予想外のことにちょっと動けないでいるようだ。
それは、ウミもテルも同じみたいなので・・・私は急いで倒れている巫女様へと駆け寄った。
「巫女様ッ! どうなさったのですかッ!?」
とりあえず、うつ伏せに倒れた巫女様を抱き起すため、私の右腕を巫女様の右脇から胸元へと回し、左腕も同様に回して引っ張った。
すると、どうだ?
骨が折れたような音が鳴ったことで、私は抱き起す動作を止める。と、同時に巫女様が血を吐いた。
「んぇ!? ちょ、肋骨が折れたっぽいんだけどッ!?」
ちょっと抱き起しただけのつもりだったのに、なんでこうなったッ!?
「ヒカリ姉さん! ちょっとそのまま動かないで!!」
私が硬直していると、次女である『青井ウミ』が顔を青くしながら駆け寄って来て・・・巫女様の状態を確認するように触れ始めた。
「発熱あり、発汗も・・・呼吸がおかしい・・・それに、なんだろう? もしかして腕も折れているんじゃ?」
言われて、私も巫女様の腕へ視線を向けて確認してみると・・・確かに骨が折れたように腕というか、手首からもうプラプラと振り子みたいに揺れている。
いつ折れた?
・・・まさか、さっき倒れ込んだ際に両手で身体を庇った時かな?
「男爵様! 巫女様の状態は大変危険です! 異常な発熱と発汗! 吐血もそうですが、骨の状態にも何か異常が発生しています!」
ウミが、巫女様の異常事態に大声を上げる。
私も、このまま抱き上げるのは無理だと思い、男爵様へお願いした。
「恐ろしく骨が脆くなっている感じですッ! 『なおるんです』くんが必要ですッ! あと、男爵様の術で、巫女様を移動させてくださいッ!」
・・・そう。
私もこうして触れてみて分かったことだけど、骨が脆くなっている感じだ。
まるで『割れた陶器を接着剤で組み立て直したけれど、乾いたと思って持ち上げたら砕ける音を立てて壊れちゃった』みたいな感触がする。
{ふむ。それでは皆さん! 我が処女作『妖魔封師』の撮影をここで中断し、巫女様を寝かせるための部屋を準備! また、海水浴場の管理チームに女性用『なおるんです』くんを至急、神社まで運ぶよう連絡を! さぁ! 行動開始ですッ!!」
「「「「「「了解しましたッ!!」」」」」」
神社周辺にて、続々と撮影スタッフの人造人間たちが姿を現す。
機材の片づけをする者。
撮影によって乱れた神社のセットを直したり掃除をする者。
神社の屋内へと走って、布団や薬箱に水やタオルなどを用意する者。
携帯電話で海水浴場にいるスタッフへ『なおるんです』くんの手配を連絡する者。
軽トラを車庫から出して、物資搬入用の神社専用道路から海水浴場まで出る者。
多くのスタッフが、男爵様の命令を受けて動き出す。
男女共に、多くのスタッフが現れたことに・・・巫女様は苦しそうにしながらも、周囲を見回して顔を青ざめさせつつ目を揺らしていた。
「こ、こんなに人が・・・居たなんて」
か細い声はかすれていたけれど・・・どうやら、逃げようとしても無駄だった。と、思っている様子。
・・・いや、ここに集まっているのは撮影スタッフであって、巫女様を集団で暴行するようなエキストラじゃないんだけど。
なにか、絶望した顔で『抵抗は無駄』と悟ってしまっているように見えるんだよね・・・。
{では、巫女様を屋内へ移動させましょうか}
男爵様がスマホを取り出すと、カメラをこちらに向けながら一枚ほど撮る。
そして、画面を指でタップしたりスライドさせたりして何か操作すると・・・次の瞬間には巫女様の身体が宙に浮き上がった。
「な、なに・・・を・・・やめ」
自分が何をされているのか?という恐怖心からか、巫女様が血を吐きながら声を出し・・・折れて動かない手足を動かそうとしているけれど、激痛に顔を強張らせているみたいだ。
「あの・・・巫女様?」
男爵様の術で宙に浮きあがり、そして神社の屋内へと運ばれ始める巫女様へウミが声を掛ける。
「この場に居る者達は、確かにアダルトなビデオ作品を作るためのスタッフではありますが・・・ほら、人間たちの作るドラマとかでも、照明係とか、音声係とか、多数のスタッフが裏方をしているでしょう? それらと同じなのです。演者が万全の状態でなければ、撮影などできません。だから、というのもおかしな話ではありますが、今はどうか、あなた様に危害を加えるような事はしない。と、信じてもらえないでしょうか?」
ふむふむ。さっすがウミちゃんッ!
巫女様も、目を見開いてウミの言葉を受け入れるかどうか悩んでいる様子だ。
けれど、それもすぐに結論が出たようで・・・ゆっくりと目を閉じながら全身から力を抜いた。
「・・・わかりました」
鼻からも血が「つぅー」という感じで流れ出し始め、本格的に危険な状態になっていることが見て分かる。
いや、吐血している時点でヤバいとは思うんだけどさ。
よし、とりあえず私はノートパソコンを持ってこよう! Wi-Fi中継器もッ!
巫女様みたいな状態の怪我人または病人は、どのように対応するべきなのか?っと、調べないとね!
〇
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ダンジョン・フィールド『男爵領』。
ここは、写真の悪魔にして・・・日本風に『写の妖怪人 エーロック』が作り上げた巨大な『エーロック・ビデオ』の撮影会場となっている。
その範囲は、まぁアレだ・・・日本の東京都とほぼ同じ面積となり、さらに離島もあるよ。
エーロック様は、あるヨーロッパ貴族様が持っていた一台の古いカメラが悪魔化・・・日本で言うところの『付喪神』となった存在になる。
かの方が妖怪人となってまずやったことは、元の持ち主が死の直前まで夢に描いていた写真を撮ること。
すなわち『男と女がエェェェロックな事をしている』写真を芸術的に撮影する事ッ!!だった。
そのために、エーロック様は邁進した。
悪魔となって日の浅い頃は、まだ小さかった『男爵領』を『エッチなことをしないと出られない結界』ということで活用していたらしい。
ッで、招いた人間の男女が攻略を開始すると、その様子を一心不乱に撮影するって感じで力を高め、繰り返し続け、いつの間にかメッチャ強い悪魔になっていたらしい。
本人曰く「ただ男女の営みを撮影していただけだったんですよ」とのこと。
どうやら、招いていた人間の男女が『イデスバリー戦士』だったみたいだと気づいたのは、結構・・・あとになってからだそうな。
しかし、そうやって撮影をし続けても、男爵様が求める写真は撮れず・・・ここで、エーロック様は人間たちの住まう世界へと分身体を送り込み、勉強させることにした。
で、人間の技術力が向上していることを知った男爵様は、自分がいつまでも古い時代のカメラだったことを知り、アップデートを行う事にする。
つまり、最新技術のカメラを購入し、これを自身に取り込む作業である。
そんな日々を過ごす中、戦後の日本で行われたオリ〇ピックにて入手した日本製カメラ・・・これに、男爵様は衝撃を受けたらしい。
こうして男爵様は分身体を追加し、日本へと留学させては日本製カメラの最新機種を購入して取り込む。という作業を繰り返していく。
それと同時に、日本の文化を学んでいくのだけれど・・・あるとき、野望を抱いたのだそうな。
{私も、アダルトなビデオ作品を作りたい}
なにがどうしてそうなった?って聞いたけれど、留学中に歓迎してくれた日本の友人たちの素晴らしい文化との交流が、男爵様を目覚めさせたらしい。
そうして、男爵様は人造人間の製造を始め、ずっと『エッチな事をしないと出られない結界』で放置していたダンジョン・フィールドの開拓を始めたのである。
気が付けば、広大な陸地は謎の木々が生い茂るファンタジーな魔物領域となっており、それはもう奇天烈な怪物たちが跋扈する無秩序のジュラシック?ワールドなフィールドになっていた。
男爵様を筆頭に、初期型人造人間たちでモンスターを駆除しつつ木々を切り倒し、土を耕して生活環境を整え、日本で学んだ建築技術などを活用して住まいを増やしていく。
これを数十年でやってのけ、今に至るのだからスゴイことだよね・・・まぁ、そのために百数十万人ほどの人造人間が頑張ったけれど。
結果、このダンジョンはもはやダンジョンと呼ぶにはあまりにも人間の生活圏に染まってしまった。
時間の概念さえも通常空間と連動させることで、朝。昼。夜を完全再現し、晴れ。雨。などの自然環境さえもここでは発生する。
東京を再現した『都会』の再現。
日本であれば、どこかで見覚えがあるだろう『市町村』の再現。
観光地となる『物』や『景色』を配置した山々に海岸・・・。
日本風の寺院もさることながら、西洋の教会風家屋まで配置してある。
全ては、男爵様の野望『エーロック・ビデオ』を撮影するためだけにッ!
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「っと、いう具合に・・・ここ『男爵領』は発展したのです」
ウミが、布団で寝かされている巫女様へと、男爵領に関する成り立ちなどを説明していた。
『大至急、救急車を呼んでください』
そんな巫女様を寝かせた部屋の隅っこで、ノートパソコンを開いてインターネットから『異常な発熱、発汗、吐血している人の応急処置はどうする?』って感じで検索したら・・・。
うーん。ごもっとも・・・。
とりあえず、血を吐けるだけ吐いてもらって呼吸が多少なりと安定したところで仰向けに寝かせ、冷たい水を染み込ませたタオルなどを額に乗せたり、汗を拭ったりして対応している。
また、水を含ませた別のタオルを口に当てて、水分補給も行っている。
{ヒカリさん。巫女様の状態に対する処置は、どのように出ましたか?}
「はい。大至急、救急車を呼べ。って出ました」
{「「でーすーよーねー」」}
でーすーよーねー。
{仕方ありません。とりあえず『なおるんです』くんが到着するまで、皆で看病を続けましょう}
私たちに医療知識があれば、もっと適切な処置もできただろうけれど・・・あいにく、男爵様は医療系の勉強はしていない。
やっているとしても、家庭の医学を少々・・・的な程度だ。
当然、男爵様に製造された私たち人造人間の知識量は、男爵様を基準としているので無理。
そのため、男爵様は医学の習得は早々に諦めて、そのための治療用合成生物を製造した。
それが『なおるんです』くんなのだ。
{他のスタッフは、撮影機材のメンテナンスなどをして・・・日常生活での仕事がある者はそちらに戻って構いません。特に急ぎの仕事などが無い者は、ここに残って有事に備えてください}
ってことで・・・『なおるんです』くんが到着しない事には何も始まらない。
さて、到着まで私はどうしていようか・・・。
「・・・あ、あの・・・質問したいことが、あるのですが」
とてもか細く、弱弱しい声が聞こえ・・・私は巫女様を見る。
一言で『ツラそう』にしている巫女様だが、何か話をして意識を手放さないようにしようとしているように見える。
「はい。答えられることであれば、お答えします」
ウミが優しく、そしてゆっくりとした調子で巫女様に応えた。
「あなたがた、の、目的は・・・ビデオの撮影・・・だけなのでしょうか?」
「・・・と、おっしゃいますと?」
うーん、質問の意図が分かりづらいな・・・。
私同様に、ウミも理解しかねているようで、何を聞きたいのか?を明確にするために問い返した。
「えぇっと・・・その、わたしに『魔王』を産ませよう・・・とか、そういう目的があるのでは?っと」
「・・・魔王を産ませる?」
ウミが、なんのことか?と首を傾げながら男爵様を見た。
すると、男爵様も「きょとん」とした様子で頭を傾げてしまう。
{魔王ですか? 別に『悪鬼』で十分ですから、そんなモノは用意する必要もありませんが・・・}
「悪鬼の王・・・『魔王』ってことじゃ?」
「いや、それなら『悪鬼王』とか『鬼王』とか、その辺で良くないかな?」
男爵様を始め、テルとウミも巫女様の問いを正しく理解できなかったようだ。
ふふん・・・まったく仕方ない子たちだね~。
「みんな、それは解釈違いって奴よ。ほら、怪異化した異世界人の憑依霊たちは巫女様を利用して生者への転生をしようとしている。って、男爵様が以前に調べているし・・・地球侵略賛成派閥の異世界人がそれらを利用して地球侵略のシンボルとなる『魔王』を用意しようとしている。わけだから、私達も同じことをしようとしているのでは?って話しをしているのよ。ッね? 巫女様ッ?」
私の答えに、巫女様は頷く。
どうだ・・・私の解釈力はッ!
{はぁ・・・なるほど。地球侵略を目論む異世界人派閥と同じことを、我々がしようとしている。と、誤解されているわけですかぁ・・・}
シミジミ・・・という様子で、男爵様は巫女様がビデオ作品への出演を拒む理由に行き着いた。
で、あれば・・・誤解が解けたってことで、出演は前向きに検討してもらえるはず。
「いや、男爵様・・・そういうことであれば、どのみち作品内容はその過程をメインに撮影するわけですから、誤解とかそういう以前の問題かと」
ウミの鋭い指摘に、私は「あ、そうか」と認識を改めた。
{なんとッ!?}
男爵様も「言われてみればその通りですね」と言わんばかりに手を叩き合わせている。
しかし、そうなると・・・やっぱり作品への出演はだいぶ厳しいのでは?
と、男爵様が四つん這いになって巫女様へと接近する。
けれど、ウミとテルで這い寄るカメラ野郎を牽制した。
「男爵様? それ以上の接近はダメです」
「四つん這いで這い寄るカメラはアウトーッ! コンプライアンスーッ!」
{二人とも、私はいたって真面目です!}
「「むしろダメなヤツッ退場ッ!!」」
{ごもっともですがぁ・・・}
まぁ、でも巫女様がアダルトなビデオ作品への出演を拒む理由・・・それに関しては私も気になる所だ。
なにせ、私よりも優れたボディラインを有する御方なのだから、裸に自身が無い。とかは無いはずだ。
・・・アレかな? 病気を移される危険性とかだろうか?
ともなれば、あらゆる面で数多くの人造人間を用意できる『エーロック・ビデオ』ならば、懸念事項に手を打てる。
つまりは健康面に問題なし・・・それでも拒むとすれば、もっと別の理由があるということだけれど。
もう、こうなれば直球で尋ねてみるしかないッ。
「巫女様、アダルトなビデオ作品への出演を拒む理由って、なんなのでしょうか?」
やはり、こういう時の質問は遠回りでは通じないもの。
そうとも、カーブだのスライダーだのフォークだのと、小細工は必要ない。言葉のキャッチボールはど真ん中ストレート一択よッ!
「・・・そもそも、私は未成年ですし――――」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・??????
{「「「未成年ッ!?」」」}
私たち全員の声が重なる時・・・苦しそうにしていた巫女様が目を点にして硬直し、同時に私たちもまた思考が停止して固まってしまう。
まさに「・(てん)・(てん)・(てん)」という静寂が生まれる。
しかし・・・未成年?なの?巫女様?
{いやいやいやいやいやッ!? え? そのような芸術的造形美なお身体で、え? 未成年?}
男爵様の情報処理能力がバグった・・・。
狼狽えた様子で落ち着きが無くなる男爵様だけれど、たしかに巫女様が未成年というのは信じがたい情報だ。
根拠はただ一つ・・・私よりも優れた体つきをしているからだ・・・身長は私の方が上っぽいけど。
「いえ巫女様・・・私は『青井ウミ』と申します。年齢は20歳。しかし、男爵様によって見た目は高校生くらい・・・そう、16歳ぐらいに見えるよう調整されております・・・ですので、巫女様が未成年なら、そう、わ、私と、わたわわわたしと・・・同じじじじじおなじ・・・おおおおおおなじ」
ヤダこの子、動揺し過ぎッ!!
「私、『日向テル』は18歳だけど、見た目は12歳前後に調整されてるんだよねーッえ? 未調整で成人女性に見える未成年がいる? 都市伝説ぅ~・・・とし・・・でんせつ・・・」
こっちは絶望しちゃったぁーッ!!
衝撃的な情報だとは思うけれども・・・未成年ってだけで大袈裟でしょうが。
「では巫女様! お歳は? 年齢は? おいくつですかッ?」
重要なのはソレだ。
未成年って言っても、17歳くらいだってあり得るわけだし、現代は18歳が成人扱いの時代なわけだし・・・それでも、わたしよりスタイル良いとかある?普通?ないよね?
「・・・じゅ、16歳です」
そっかー。
「えー? 16歳・・・え? わたしと、ぜんぜんんんんぜぜぇん――――」
「じゅーろくさーい?」
{あぁ、健康的ですねぇ・・・16種の野菜は~}
いや男爵様、解釈を捻じ曲げちゃダメでしょ・・・。
はぁー・・・ったく、しょうがないな。
私は、おそらく男爵様がもっとも聞きたくないだろう事を、今、ここで告げることにした。
「つまり、男爵様の『エーロック・ビデオ』への出演は完全にアウトってわけですね」
そう・・・アダルトなビデオは18歳未満お断り・・・それは利用者もさることながら、制作側も同様なのだ。
っていうか、それでも日本はまだ緩い方なのよねぇ・・・。
{はがッ!? じゅ、じゅじゅじゅじゅじゅうろく歳は、ギリギリ・・・そう、ギリギリ}
私が告げた現実に、男爵様は頭を鈍器で殴られたような声を上げてから、それはもう動揺を隠すこともせずに狼狽える。
「ギリギリー? アウトーッ! ゲームセットォオ!!」
{いやだあああああああああ!!! ややややややっと! やっと見つけた我が処女作の主演女優!! こ、こんなことでぇえ!! こんなぁぁあああ年齢ごときでぇぇぇええ}
どうにかして現実を回避する術を模索していたのだろうけれど、とうとう絶叫してしまった。
なんとかして宥めないと・・・。
「しかしですねぇ・・・ビデオ撮影を強行して、発売したとして・・・主演女優の撮影時の年齢が万が一にもバレてしまったら、警察からお迎えがやってくるわけですから・・・」
{販売停止・・・いや、そればかりか『妖魔封師』シリーズの制作もできなくなるぅ・・・うごごごごごがががががあがががッ}
わぁすごい。
男爵様が頭を抱えながら、それはもうこの世の生物とは思えない動きでドッタンバッタン転がり回っている。
と、そんな男爵様へ、テルがボソッと言った。
「でも、あと2年待てばよくない?」
それはその通りなんだけど・・・。
{それはダメですッ}
さっきまで転げ回っていたのがウソのようにテルへと迫り・・・その頭のカメラレンズでテルを見つめながら、ドスの利いた声音で否定した。
{いいですか? 創作物というのは、思い立ったら即作って即発表しないとダメなのです。なぜならば、私と同じ境地に到達したどこかの誰かが、わたしよりも先に類似する作品を作り、発表してしまうかもしれない。そうなれば、私のオリジナル作品は・・・奴らの二番煎じから五番煎じ作品と評価され、我が『エーロック・ビデオ』は『元祖』ではなく『パクリ』扱いされてしまうのですよッ!! 許さん! そんな事は許さんぞぉぉぉおおお!!!}
すっごい低い声ですっごい早口だ・・・。
「でも、どうせ日本国内に現存する創作物を漁れば・・・『妖魔封師』に酷似した作品は結構あるのでは?」
ウミさーん? それ、一番言っちゃダメなヤツですってー。
{・・・ひ、否定はできません。言葉通り、この日本には山となるほどの創作物がこの時にも作られているのですから・・・だ、だからこそ・・・一刻でも早く作品を完成させ、発表せねばならないのです!}
男爵様の言葉には、頷ける部分もあるけれど・・・しかし、こればかりは・・・未成年をアダルトなビデオ作品の主演女優にするのは・・・アウトーッ!
ぷっぷぅぅぅぅーッ!
む! 車のクラクション!!
外から鳴り響く音を聞き、私はすぐさま障子を開けて廊下へと出る。
と、神社内で待機してくれていたスタッフが「ヒカリさん。届きましたよーッ」と声を掛けてくれた。
「男爵様!」
{そのようですね。ウミさんは残って巫女様の看病を続けてください。テルくん。君は『なおるんです』くんを屋内へ入れる準備へ}
「わかりました」
「えぇ・・・ちょっと、めんどいです」
テルが嫌そうな顔をするものの、私と一緒に廊下へと出て玄関口へと移動する。
その先では、海水浴場の管理スタッフ数名がブルーシートのロール・・・コレを数巻ほど軽トラの荷台から降ろして運び入れてくれる。
「あれ?『なおるんです』くんは?」
玄関より外を見回すテルだけれど、これにスタッフの一人が「大丈夫ですよ。海水浴場にある軽トラでゆっくり運んでいますから、ちょっと遅れているんです」と答えを貰う。
「ほらテル。あの子を屋内に入れるなら、ブルーシート敷かないとダメなのは知っているでしょうが」
「あ、そうだった」
男達に廊下などに敷くブルーシートは任せ、私たちは巫女様が寝ている部屋に敷くためのブルーシートを受け取って運び込む。
廊下を慌ただしく移動して、巫女様が寝ている部屋へと戻った私たちは、襖などを外して端に寄せてからブルーシートを敷いていく。
巫女様の下にも敷かないといけないので、男爵様含めて、四人で布団ごと巫女様を移動させ・・・ブルーシートを室内に敷き詰めた。
と、私たちがブルーシートを敷き終えたくらいで、『なおるんです』くんも到着したようだ。
外から男たちの怒鳴り声に近い掛け声が響くと、重量のある荷物を運び出す作業音がアレコレと響いてくる。
なにせ・・・『なおるんです』くんは海産物だからね。特製の巨大水槽に入れて運んでくるから大変なんだなこれが。
「・・・あの、いったい何を運んで来たのですか? 『なおるんです』くんとは?」
巫女様が、それはもう不安そうな顔をしている。
「大丈夫です。先にお話しした『男爵領』の開拓時に、私たち人造人間の負傷や病気などを治療する目的で、男爵様が開発された『治療用合成生物』となりますので、運び入れるのが一苦労なのですよ」
ニコニコと説明しているけれど、巫女様は『キメラ』と聞いた途端に顔を再び真っ青にしてしまった。
ガッタンガラガラガラゴロゴロゴロガッタンゴロゴロガラガラガッタンガッタン。
そんな音を立てながら、廊下から運び込まれてきたモノが巫女様を寝かせている室内へと姿を見せる。
うんうん。
大型水槽を乗せたパレット台車を海水浴場の男性スタッフ数名が押している姿は・・・まさに筋肉の密集領域。
迸る汗と汗がぶつかり合って弾ける飛沫が筋肉の躍動を潤し煌めかせる。
あぁ・・・素敵だ。
ちょっと、あの筋肉密集領域へ突入してきてもいいかしら?
{ヒカリさん? ダメですよ?}
「はいっッんー」
こえー。男爵様ってば気配も音も無く背後に居たよこえー。
〔こんにちはー♪ 呼ばれて到着~♪ 『なおるんです』ですこんばんわ~♪〕
筋肉たちが、その総力を密集させて運び入れてくれた大型水槽より・・・楽し気な声音と共に頭を出している『なおるんです』くんがご挨拶してくれる。
{すみませんね。急に神社まで出張してもらって}
〔いえいえ♪ それが私のお仕事♪ ですです♪ 大仕事♪ 患者はどこどこ♪ ここはどこ~♪}
・・・にしても、相も変わらずリズムを取りたがる子だな。
喋り方については気にしない方向で行くけれど・・・どうにも気になる喋り方よね。
「では、男爵様。我々は一度、海水浴場の方へ戻らせてもらいますね」
{ええ。ここまでありがとう。治療が終えたら、回収のために呼びますので・・・それまでは、仕事のある方は引き続き仕事を、特にない方は有事に備えて待機でおねがいします」
「かしこまりました」
そうして、颯爽とこの場を去っていく海水浴場の管理スタッフ筋肉ズ。
あぁ・・・もうちょっと脈動する胸筋腹筋上腕二頭筋の密集領域を見つめていたかった・・・。
と、水槽より頭を出して周囲を見回す『なおるんです』くん。
〔はてさて患者はどちらさま~♪ お姿拝見♪ よろしいか~♪ 巫女様どちら♪ こちらさま~♪〕
・・・よく分かんないわ。
{巫女様はこちらにて寝かせてあります。どうも、骨から臓器に異常が出ているようでしてね}
男爵様が『なおるんです』くんの視線を誘導するように手を振って、そうして巫女様が寝ている場所を指差すことで、『なおるんです』くんは患者の居場所を認識した。
〔なるほど♪ ほどほど♪ そちらにおいでになりました~♪ さっそくお仕事♪ はじめましょ~♪〕
すると、大型水槽のガラスに「べたぁ~」とヒダのようにヒラヒラとしたモノがへばり付き、それらがウネウネと蠢き始めると・・・『なおるんです』くんが水槽より身体を出す。
その姿、その形、その存在・・・。
「・・・ひ」
巫女様が、驚愕に目を見開いた上に顔を真っ青から真っ白へ変え、口、鼻、目から血がドロッと溢れ出す・・・って、なんかメッチャヤバい色ととろみの血が出てるんですけど!?
〔はじめまして♪の御挨拶~♪ 私は『なおるんです』です♪よろしくですです♪ 患者さま~♪〕
ずるり・・・。
そんなぬめり音を、鈍く響かせながら水槽より出て来る『なおるんです』くんは、端から見ると超絶カラフルでゴツゴツとしたご立派な形状をしている・・・まさにモンスター。
しかして、その実態は・・・。
ナマコとアメフラシとウミウシとホヤとイソギンチャクとクラゲ数種を掛け合わせた『治療用合成生物』の『なおるんです』くんなのである!
いや、ハッキリと言えば・・・パッと見、とても色彩豊かな巨大ナメクジでしかない。
水槽から、ゆっくりとした速度で外へと出て来る『なおるんです』くんは、そして布団に寝ている巫女様に触角を向けると、何やら扇状に変形させた光線を当てて全身を探る。
〔病気も怪我も♪ おまかせ♪ おまかせ♪ なんでもかんでも『なおるんです』♪ です♪『なおるんです』♪のでご安心~♪ ですからそんなに怯えずに~♪〕
いやぁ・・・その見た目じゃ初見には怯えられるよ。私だって最初はビビったし。
〔あらあらまぁまぁ♪ 内臓破裂に骨粉砕♪ これで生きてる♪ 不思議な状態♪ 仕事にやりがいッ♪ありがたぁい♪〕
はッ! リズムの取り方がラップ調に変わったッ!?
同時に、その背中に青白い光が幾重にも光を発して走ると、まるで大口を開くように「ぐぅわッ」と背中が開く。
その中より、これまた青白い光を発する触手が・・・まるで花開くように生え広がっていく。
さらに触手から、無数に生える細い触手・・・またさらに生える極細の触手が、ユラユラと、ただユラユラと・・・波打つように揺れ動く。
「ころしてください」
巫女様が、自分がどんな事をされるのか?を悟った眼で、静かに懇願してきた。
・・・。
・・・・・・。
・・・だから、私は・・・。
巫女様に敬礼ッ!
次回は、とりあえず、出演してもらうにはどうするか? を予定しています。
『なおるんです』くんには、女性ボイスと男性ボイスの二種類がいる設定です。
女性患者には女性ボイスを。男性患者には男性ボイスを。という感じでの運用となっており、希望があれば女性患者でも男性ボイスタイプを、男性患者でも女性ボイスタイプをご利用できます。
なお、ボイス関係なく喋り方は一緒です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




