スペシャルメイド
「……わたくし、人との距離感が上手く掴めなくて学園でも浮いてしまうんです。本当にこれは反省すべき点です……」
琴音さんはシュンとして落ちこんでしまっている。
ここは俺がなんとかせねば。ほぼ俺のせいなんだから。
「いえ! 俺の対女性免疫が極端に低いだけなので琴音さんはまったく悪くないですよ! むしろ琴音さんのそんなところは美点です!」
その独特な距離感があったからこそ俺たちは助けてもらえたと言えるだろう。
普通は入水自殺しようとする人間に関わろうとしないだろうし、あまつさえ借金を代わりに返そうなんてしないだろう。
琴音さんの常識離れの思考と行動があったからこそ、俺たちは救われた。
その琴音さんについていけるように、俺たちは努力するべきだ。
「そうです。お嬢様の常識にとらわれないところはこの上ない美点だとわたしも思います。そして、道広様にそういう方面の免疫がないからこそ、わたしも安心してお嬢様のスキンシップ係を任せられるのです」
微妙な信頼のされ方だった。……まあ、抱きつかれただけで精神的に限界に達するような俺だから、間違いが起こりようがないということか……。
「それでしたら……わたくしが徐々に道広くんに免疫をつければ一石二鳥ではないでしょうか?」
名案とばかりに両手をパンと合わせる琴音さん。
「で、でも……」
「道広くんは、わたくしとスキンシップをとるのは嫌ですか?」
「い、いえっ! そんなことはないですっ!」
むしろ嬉しい。
「あぁ、よかったです♪ これからもご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたしますね♪」
「は、はい……」
女性への免疫がないから任せられた役目だが、あまりにも免疫がなさすぎると職務をこなせない。
なんとも複雑な状況だ。
「……道広様にはお嬢様のスキンシップに耐えられるようになってもらわねばなりませんね。そのためにはわたしも協力いたします」
そう言うと凪咲さんは突然俺を抱きしめてきた。
「わぷっ……!?」
顔面に押しつけられるおっぱい。
琴音さんに比べると巨大さとボリューム感は劣るものの張りと弾力性に優れていた。
「って、ちょっ……うぐっ……」
慌てて顔を離そうとするが、凪咲さんは俺の頭を抱えこむようにヘッドロックしていた。
華奢なようで腕力が強い!?
「お嬢様に仕えるメイド長として武道を修めております。護衛の任務もありますので」
なんというスペシャルなメイドなんだ。
労働で鍛えた俺がビクともしないとは……。
「そういうわけで抵抗は無駄です。どうぞわたしの胸で免疫をつけてください」
というか凪咲さんも琴音さんに負けず劣らず常識が通用しないよな……。
自分の胸をなんだと思っているのだろうか。俺に押しつけて抵抗感とかないのだろうか。
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