憎しみはパンツとともに消えゆ
ソフは貧民を中心に仲間を増やしていく。
元貧民の仲間達は、元の生活に戻りたくない一心でソフに従い、冒険者として生きていった。
パンツマスターの能力は実際に凄まじく、新生『絶対なる白』はすぐにAランクパーティとして確固たる地位を得ていった。
Sランクの座も、再び見えてきた。
「今日の冒険の成功に、かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」
冒険者ギルド近くの酒場、『歌う悪魔亭』。
そこでソフたちは盛り上がっていた。
冒険が成功したお祝いである。
冒険が終われば大いに騒ぐのが『絶対なる白』の流儀であった。そこに妥協は無い。
「パンツ軍団の連中、またドラゴンを狩ったってよ」
「へぇ~。あやかりたくは無いが、羨ましい話だな」
ドラゴンスレイヤー。それは一流の冒険者のみが可能とする、偉業。
それを成した冒険者である『絶対なる白』には羨望と、嫉妬と、だからと言ってパンツを被りたくないという視線が集まる。
残念ながら、彼らに憧れてパンツを被る猛者は現れないようだ。
「くそ、あいつらはまたAランクになったのかよ……」
「しかたないでしょ。私たちは『パンツマスター』が無ければ、ただの普通の冒険者なんだから」
その視線の中にはソフのかつての仲間、『アリ=エール』たちのものもあった。
ソフの元を去って行った彼らは、今ではDランク、一般的な冒険者として活動をしていた。
「なんであいつらばかり……」
アリの憎しみが宿る瞳が、ソフの頭部を捉えた。
そこには、純白のパンツが被られている。
パンツを見たアリの顔から、表情が抜け落ちた。
「やっぱ、いいか。またパンツ被りたくないし」
「そうそう。普通でいいじゃない」
アリは、自分たちがなんでソフを見捨てたのかを思い出す。
そして、やっぱり今の方が良いと、もうパンツは被りたくないと思うのだった。