表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

ハロウィン

「もう、ジニアス様! それは、子供たちにあげる分です!」

 コゼットが非難の声を上げる。

 ジニアスは、慌てて手を引っ込めた。

 テーブルの上で、かぐわしい香りを立てている焼き立てのクッキーは、まだ温かい。

「一枚くらい、いいじゃないか」

 つい、そう言ってしまう。

「ダメです! そういって、昨日、作ったクッキー、フィリップ様と食べてしまったではありませんか!」 

「いくらハロウィンでも、監察魔術院に来る子供なんて、そうはいないと……」

「今日は、魔術学校の子供たちが遊びに来るのです! 授業の一環ですけど」

 コゼットの言葉に、ジニアスはしぶしぶ頷いた。

 魔術学校の子供たちは、あくまでも社会見学として訪れるのである。

 日付が、ハロウィンだからといって、お菓子をくれてやる必要はない……と、思うのだが、それを言うと、あまりに狭量だ。

「ハッピーハロウィン! いい匂いだね!」

 ひょいっと、扉を開けて、フィリップが入ってきた。

「うわぁ、おいしそう! 一枚味見してもいい?」

「ダメです」

 コゼットはそう言って、クッキーの入った皿をテーブルから引っ込めた。

「お菓子をくれないと、イタズラしちゃうぞ」

「イタズラするなら、お昼はありません」

 コゼットの言葉はにべもない。

「……腹減った。昼飯は何?」

 クッキーから目をそらしてそう言ったジニアスに、くすり、とコゼットは、笑った。

「今日は、パンプキンスープをつくりました。デザートにパンプキンパイもありますよ」

「わーい。ハッピーハロウィンだ!」

「……フィリップ、お前、自分も、食べること前提だな」

 ジニアスは思わず肩をすくめた。

「みんなで食べたほうが、美味しいですよ。今日はお義父さんもくるはずです」

 ニコニコとコゼットが笑う。

 悔しいけど、コゼットのほほえみの前では、ジニアスは無力だ。

 昼の研究室は、甘い香りに満たされる。

「ハロウィンって、大人がお菓子を食べる祭りではなかったような?」

 訪ねてきたサネスがボソリと言ったが、ジニアスとフィリップは聞こえないふりをした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ