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神翫-SHINKAN  作者: あかり屋
1章 羽拾い

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6/6

1章 羽拾い 6-出会い

「あぁ、こんな事なら護衛の方を素直にお願いしていればよかった」

朝に家を出たものの、いつもならとっくに街に着いている時間になっても到着しない。

足をかばいながらの歩行は思った以上に時間がかかった。

「今日のうちに医者に診てもらいたいのに…」


街に着くと夕日が沈むところだった。

「もう病院が閉まってしまうから…宿より先に病院ね。」


急ぎ足で病院へと向かい、診療時間ギリギリで診てもらうことができた。

骨に影響はないが、筋や筋肉を痛めているかもしれないから1〜2週間は安静にとのこと。

(ちょうど収穫祭になる頃だし、予定通り宿に連泊する形にしよう。)

あいている宿を探して街をふらつき始めた。


「おなかすいた…」

祭りの時期なのもありどこの宿も埋まっている。

「都会じゃあるまいし、いくつかあいてると思ったのになあ」

甘い考えだったと悔やみ、広場のベンチに腰掛けぼんやりと上を見上げる。


祭りの前の飾り付けられた壁がキラキラと街灯を反射している。

飾り付けられた街と、途方に暮れる自分との対比が心に来る。

遠くからはワイワイとした声が聞こえる。

祭りはまだだが、既に仕事を終えた人たちが先に酒屋で宴を始めてしまうのはよくあることだ。


「うーーん、考えても仕方ない。とりあえず食べよう!」

私はその声のする方へ足を進めた。


カランカラン

ドアの上に付いているベルが鳴る。

「いらっしゃいませー!」

元気の良い挨拶が向けられる。


空いている席を探しキョロキョロと視線を動かすと

遠くからも聞こえていたワイワイと宴をしている席を発見する。


割れんばかりの男たちの笑い声。

大きな肉体の数人の男たちが

酒を片手に女性を囲っていた。


同じく酒を片手に大笑いしている赤い髪に羽根飾りを挿した女は

成熟した女性らしい体つきで

しかし大男にも負けない強さを纏っていた。


(楽しそうねぇ)

なんて思いながら近くの席に腰を下ろす。

店員に注文をいくつか行い、賑やかな店内で一人ぽつんと食事を始める。

この後どうしようか考えながらも聞き耳を立てる。


「がっはっは!姉ちゃん本当におもしれぇな!朝まで飲もうや!姉ちゃんになら俺の秘蔵の酒も惜しくねぇ!」

「はっはっは!安い女じゃないが旨い酒があるなら仕方ないね!特別だぞ〜不味い酒だったら覚悟しろよ!」

そう言って女はふらつきながら席を立つ。

「ちょっろ、トイレぇ〜」

ろれつも曖昧で顔も真っ赤な女が、歩いて数歩目で私のテーブルに倒れ込んだ。


「わっ!」

ひっくり返った料理が私の服にかかる。

慌てて商品が汚れていないかと置いていた籠を持ちあげると

汁を纏った皿はコロコロと転がり

お姉さんの服も汚してから止まった。


「あららぁ ごめんねぇ」

そう言ってお姉さんはむくりと起き上がり

髪飾りから羽を1枚抜き取った。


「プルガーレ」

聞いた事のない呪文。

羽は金色の粉に溶け私の服へと染みこむ。

すると、繕ってあった箇所まで新しい布かのように美しく修復された。


「ん〜ちょっと強すぎたぁ?まあいっか〜」

「あ、あの、ありがとうございます。でもお姉さんの服も…」

「ん?あ〜私はいいのよぉ〜私がこぼしたんだしぃ」

「よければこの羽使ってください。」


持ってきていた血の取れないおまけ用の羽を取り出し渡した。

「んぇ?ありがとう〜あなた気前いいのねぇ」

そう言って羽を受けとったお姉さんは自分の服に魔法をかけた。


「プルガーレ」

そう言った瞬間、羽は強い閃光を放ち

金の粉がはじけた。

部屋中にキラキラと粉が舞い

店内が騒然とする。


「えっ俺の服が直ってる」

「お、俺もだ」

「今のは何だ?何が起きた?」


「貴方ちょっと来なさい」

声色を変えたお姉さんに手を掴まれ外に引きずられる。

「痛っ」

足がもつれ倒れ込む体を、お姉さんが抱き上げた。


「ウォラートゥス」

ぐっと体に重みを感じた次の瞬間

街を見下ろすほどの上空にいた。


「ひっ」

高さに驚き私はお姉さんの体にしがみつく。


「さっきのは何」

「何って…売り物です。私は羽売りです。」

「いつもあんな物を売っているの?」

「い、いえ、お渡ししたものは商品にできない欠陥品で…」

「…」


お姉さんは少し考え込んだ後、街の一番高い時計塔のてっぺんに降り立った。

私をそっと降ろし、再度問う。

「欠陥品ってどういうこと?」

「これが完成品です。こっちは欠陥品で、どうしても汚れが取れなくて」

「ちょっと見せてね」


お姉さんは私の手から羽を取ると

「ふーん悪くない。いや、結構良いやつを売っているのね。でもさっきのは…貴方、この後の予定は?」

「えっと、明日お得意様に羽を売りに行くのですが、宿がなくてどうしようかと…」

「私の部屋に泊めてあげるわ。代わりにこの羽いくつかいただいても良いかしら」

「いいんですか…?助かります!」

「私はデイジー。立てる?」

「はい」


渡りに船だった。私はデイジーの手を取った。

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