第21話 定例会
黄「じゃあとりあえず、お酒とおつまみ買いに行く?」
定例会は月に1回。メンバーの部屋かレストランなどで開かれている。
今日は私の部屋だ。
食材は多少あるけど、お酒は切らしている。
近くのコンビニでいいかな……。
桃「そうだね、買いに行こっか」
黄「桃田ちゃん、買い物終わったら何か作ってよ」
黄瀬ちゃんが、勝手知ったる様子で冷蔵庫を開けながら言う。
桃「いいよ。何がいい?」
私は軽く振り返りながら答える。
黄「ん〜……この中身だとポテサラかな?」
冷蔵庫の中を覗き込みながら、指で食材をなぞる。
桃「了解」
黄「やった!私、桃田ちゃんのポテサラ大好きなんだ」
そう言うなり、黄瀬ちゃんが勢いよく抱きついてくる。
桃「ちょ、ちょっと黄瀬ちゃん、苦しいって。それにお酒買いに行くんでしょ?」
身体を押し返しながら苦笑する。
青「そうですよ」
青菜ちゃんが呆れたようにため息をつき、私たちの間に割って入る。
青「それに黄城さん。あなた、キャラクター名で呼ぶなって言っていたのに、なんで呼んでるんですか?」
桃「え?どういうこと?」
私は首をかしげる。
黄「それがびっくりなんですよ!」
黄瀬ちゃんが身を乗り出す。
黄「実は健介さんがアカケンさんだったんです!」
桃「あぁ……それね。それは知ってるよ」
軽く肩をすくめる。
桃「今日、喫茶店でその話してたし。というか皆、普段の言動は気をつけた方がいいね」
紫「え?そうなの?」
紫藤さんが目を丸くする。
紫「私この前、オリジナルのASMR台本、彼に聞いてもらっちゃったよ。……もしかして私ってバレた?」
白「えっ?」
白鷺ちゃんが一瞬固まる。
白「紫峰さんのASMRって、その……セクシー寄りですよね?それをアイツに?変なことしてないですよね?」
紫「してないわよ」
腕を組みながらそっぽを向く。
紫「あっ……いや、したというか、してしまったというか……」
少しだけ視線を逸らす。
紫「まぁ、そこまで刺激強くはないと思うけど……」
紫「ていうか白鷺ちゃん、健介くんの幼馴染でしょ?なんで言ってくれなかったの?」
白「健介に何したんですか?」
青「赤石さんに何したんですか?」
二人が同時に身を乗り出す。
紫「いやいや、大したことじゃないって」
手をひらひらさせる。
紫「ちょっとしたお駄賃というか、サービスというか」
桃「まぁ……その話は一旦置きましょう」
場を仕切るように手を軽く叩く。
桃「大事なのは呼び名の方でしょ?」
黄「そうですよ!」
黄瀬ちゃんが勢いよくうなずく。
黄「白鷺……っ、心ちゃん。健介さんがアカケンさんって言ってくれててもよかったんじゃないですか?」
白「いや……」
白鷺ちゃんが視線を落とす。
白「恥ずかしいっていうか……なんとなく気づいてはいたけど、そこまでオタクだとは思ってなかったというか……」
紫「まぁまぁ」
にやっと笑う。
紫「この状況、独り占めしたかったんでしょ?健介くん取られたくないから」
白「別にそんなんじゃないです!」
少し声を荒げる。
紫「そう?じゃあ私が奪っちゃおうかな?」
わざとらしく首をかしげる。
白「それはやめてください!」
青「それはやめて!」
ほぼ同時に反応する。
紫「えっ、青菜ちゃんまで?」
くすっと笑う。
紫「健介くん、モテモテね」
黄「とにかく!」
パンと手を叩く。
黄「健介さんはアカケンさんなんです!だから今後は本名呼びでいきましょう!」
紫「そうね。でも私、本当にバレてなかったかしら」
桃「いや……正直、バレかけてましたよ」
紫「やっぱり?」
黄「ちょっと紫藤さん!」
桃「黄城ちゃんもだからね」
軽く指摘する。
私は喫茶店での出来事を、順を追って説明した。
桃「というわけで」
話を締めるように周りを見渡す。
桃「今後はみんなで気をつけよう。それに彼、正体を知ることに罪悪感を感じてるみたいだし」
白「アイツが罪悪感を?」
眉をひそめる。
桃「白町ちゃんも知らなかった?実は彼、前は虹川ソラっていうVtuberを推してて、彼女のことは知っているでしょ?」
紫「もちろん。虹川ソラは今のVtuberなら、全員が憧れる個人勢Vtuberよ」
青「雑談配信やゲーム、企画系やASMRまで、全部完璧なライバー。でもそれと何か関係が?」
桃「実は彼、彼女の配信の時にしたコメントに反省しているの。彼の発言から彼女の特定が進んで、最終的に活動休止になっちゃったって」
黄「えっ?でもそれは彼女のことを執拗に追いかけた一部のライバーのせいだって」
桃「それはそうね。でも、彼の発言が活動をやめるきっかけの一部になったのは事実なのかもしれない。そこに反省しているの」
白「なるほどね。アイツ私にはそんなこと言ったことなかったのに」
桃「まぁ。彼の中でもショックな出来事なことだろうし、仕方のないことかもしれない。それより今後のこと。これからはお互いの本名呼びに戻し、これからの生活では彼に『クロマリンク』だと気づかれにくい生活を心がける。それでいいね?」
黄「了解です!」
青「分かりました」
紫「オッケー」
白「そうですね」
桃「じゃあ、この話終わり。お酒買いに行きましょ?」
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