凸に注目!みんなの凹凸有効活用しちゃいましょう 後編
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グッズ制作作業場。
白木は腕時計をじっと見つめている。
「さすがに遅すぎる」心の声が漏れる。
インクを倉庫から取りに行った赤川が1時間たっても戻ってこない。
「指示の仕方が悪かったのかもしれない…」白木は少しの後悔を抱え、
急き立てられるように部屋を出た。
作業部屋に続いている廊下の50m先に
インクを抱えたまま、赤川は蹲っていた。
白木はかけより声をかける。
「赤川さん、大丈夫ですか?とりあえず、作業場に戻りましょう」
「すみません。すみません。ここがどこか分かりません。
すみません。すみません」
と赤川は同じ言葉を繰り返し、立ち上がろうとはしない。
「ここは廊下。まっすぐ行けば部屋に戻れます。」
「僕は役立たずだ…。すみません。すみません」
赤川は体を縮こまらせる。
「インクを取ってきてくれてありがとう」
白木の言葉を聞き、赤川はゆっくり顔を上げて。
猜疑心に満ちた目で白木の顔を凝視する。
白木が微笑み、怒ってないことを確認し、ようやく立ち上がる。
白木は赤川が動いてくれたことに安堵しつつ、
「なぜこうなったのか」という疑問が心に広がった。
翌日より、白木の試行錯誤が始まった。
最初に赤川へ印刷機の簡単な設定方法を教えようと試みる。
白木はなるべく平易な言葉で、ゆっくり説明をした。
説明後、白木が「分かりましたか?」と聞くと、
赤川は「分かりました」と答え、
「メモをとります」とメモ帳を取り出した。
だが、いっこうに書き始めない。
「どうしましたか?」白木が聞くと、
赤川は黙り込む。顔を覗き込むと、その顔から表情が消えていた。
白木は慌てて「もう一回、説明するから」と最初から言い直す。
一工程ずつ話し、赤川がメモをとるのを待ってから次の工程へ進んだ。
一通り説明が終わると、赤川はメモを見ながら操作ができていた。
白木はほっと胸をなでおろした。
しかし……。
「え、メモをなくした?」 翌日、白木は耳を疑うような報告を受け、思わず聞き返した。
「すみません。すみません……」 赤川はインクを取りに行った時と同じように、
その場に蹲った。
「大丈夫、今日は検品をしてくれればいいから。焦らなくていいから」
白木はなんとか励まそうと声をかけ続けた。
その日以来、赤川は遅刻をするようになってしまう。
理由を聞くと、「着ようと思った服にシミがついていて、
どれを着ればいいか分からなくなった」と正直な答えが返ってきた。
正直なのは良いことだが、白木は「そんなことで……」とも思ってしまう。
また別の日には「いつもの道が工事中で、道に迷った」と言われ、
白木は呆れてしまいそうになったが、
「これがスペシャルコミュニケーションだ」と自分に言い聞かせた。
白木は胃に違和感を感じるようになり、
気が付けば腹のあたりに手がいくようになっていた。
工場のトイレ前の廊下。腹を押さえながら駆け込む白木を、川原が目撃する。
心配した川原が人事課に連絡し、急遽、面談が行われることになった。
ミーティングルーム。
倫心と田中は赤川との面談 を施行していた。
赤川は感情を昂らせて、訴える。
「こんなに信頼してもらえたのは生まれて初めてだったのに。
もっと役に立ちたかったのに、僕は白木さんを困らせてばかりだ。
白木さんは怒らない。それが余計に申し訳ない。僕はいない方がいい。辞めます」
極端な結論だが、その言葉には悲痛な切実さが宿っていた。
「お気持ちは分かりました。結論を出すのはもう少し待ってください」
田中が慌てて落ち着かせる。
「そうですよ。彩クリスタルのグッズを作りたくて入社したんですよね?
簡単に諦めないでください」
「……僕はどうすればいいのですか」 赤川は倫心の言葉の意図を汲み取れず、
純粋な疑問としてぶつけた。
「マニュアルがあれば、それを見ながら作業できそうですか?」田中が聞く。
「……見てみないと分かりません」。
「そうですよね。赤川さんが理解しやすいマニュアルを作ってみます。
一緒に試してみましょう」 倫心はそう提案した。
ミーティングルーム。
赤川との面談後、白木との時間が始まった。
白木がぽつりとこぼす。
「赤川さんは一生懸命やっている。メモをなくすのだって、俺だってたまにやる。
でも、そもそもわざわざメモをとるようなことじゃないんだ。
繰り返せば覚えられるし、覚えてしまえば簡単なんだけど…」
白木は婉曲な表現で、自分なりに歩み寄っても埋まらない溝への戸惑いと、
募る疲労感を吐露した。
「白木さんには簡単なことでも、赤川さんには難しいことかもしれませんね」
田中が柔らかい言い方で白木の意図を包み込む。
「白木さんが一人で抱えることではありません。
解決のために、マニュアルを作ろうと思います。
白木さんの作業の様子を動画で撮らせていただいてもいいですか?」
倫心が打診すると、白木は頷いた。
「ええ。解決策になるのなら、なんだって協力しますよ。
俺だって新人の頃はミスをした。みんな同じだ。
なんだって最初からうまくはいかない。俺だってそうだった。」
負担が増えて、腹痛を抱えながらも、赤川を「切り捨てる」という選択肢を一度も口にしない白木。
その圧倒的な忍耐力と包容力を目の当たりにし、倫心は胸が熱くなった。
前職で新人研修動画を作成した経験がある北岡にマニュアル作成を依頼した。
北岡は学生時代、映像制作サークルに所属していて編集技術がある。
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