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法定雇用率達成を目指して共生について考えてみたら、みんなが進化した  作者: 青海


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濁色と屈折

いつも応援ありがとうございます。

やっと、落ち着いて新章を書くことが出来ました。

この章では「誰もが働きやすい職場になって欲しいなあ」という

ふわっとした願いをこめて書きました。

読んで頂けたら嬉しいです。

「この状況は濁色だ……」


倫心は目の前の光景を見て、心の中でつぶやく。


濁色の定義は、なんだっただろうか。

確か……純色に白も黒も混ざり、濁ってくすんだ色。


ご当地アイドルがプリントされたカラフルなクリアファイル。

茶色の包装紙の切れ端。

白色の皺だらけの緩衝材。

黄土色の段ボール。


全てが混じり合い、無残に床に散乱している。


美しいグラデーションとは言えない。濁っていて、くすんでいる。


でも、濁色だって、色なのだ。


「宝探しを続けないと」


倫心は呪文のように唱え、ブレてしまいそうになっていた自分軸を、再び強く立て直した。


工場の発送場。


工場の発送場では、倫心と宮西が二人で黙々と片づけをしている。



「こんなに散らかして、怒らないの?」

宮西が、恐る恐る倫心に問いかけてきた。

「『怒らないの?』って聞くということは、悪いことをしたって分かっているのよね?」

倫心は優しく、質問で返した。

「……」

宮西は再び黙りこむ。

「分かっている人を、私は怒ったりしないよ。

でも、どうしてこんなことをしたのか、知りたいな」

「……」

宮西は何も答えず、拾ったクリアファイルを作業台に戻していく。

「教えて欲しいなあ」

「……」

宮西は黙々と作業を続けるだけで、やはり何も答えない。


宝物は簡単には見つからない。

冒険の旅には困難が付き物だ。倫心は深く思案した。


工場休憩室。


一方、工場休憩室では、まだ興奮が収まらない女性パート社員たちが、田中を取り囲んでいた。


「なんなの、あの態度は?許して良いの!?」

「障がい者だから特別なの?」

「あの子は普段から態度が悪いわ。休憩室のごみの分別も、いくら言っても直さないし」

「田中さん、どうにかしてよ!」

「そうよ。川原さんが可哀そうよ!」

田中はパート社員たちの勢いに押され、冷静さを失いだじろぐ。


「えーと……」


その時、ずっと俯いていた川原が、ゆっくりと顔を上げた。

「宮西さんよ。『あの子』でも『障がい者』でもない。名前は、宮西さん」


予想しなかった力強い発言に、驚いて、全員が川原を見た。


「皆さんがそんなに怒るのは、日頃の不満が爆発したからですよね?」

「まあ……」

「その不満の正体は一体なんですか?」

「え?」

「本当に宮西さんに原因がありますか?ただ、どう接したら良いか分からないから、

戸惑っているだけなんじゃありませんか?」

「……それは……」


パート社員たちは、図星を言い当てられて、気まずそうな表情になる。


「きっと、宮西さんも一緒です。戸惑っているんです。不安なんです。

腫れ物扱いされているのが、分かっているんです。こわいから、叫ぶんです。

なのに私は……」


川原が言葉に詰まった時、田中が冷静さを取り戻し、口を開いた。


「ドラマじゃあるまいし、失敗しない人なんていませんよ。皆同じです。

失敗から学んで、進化していけば良いんです。人事部にも障がい者社員がいます。

無理させ過ぎて、危うく飛ばされそうになりました。正直、『めんどくせー』って思いました。

『担当、外れたい』って。だけど、北岡さんと仕事する前の自分より、今の自分の方が良い。

相手を思いやる余裕がある今の自分の方が……なんか……色々、家族との関係も良くなったし……

なんか……」


田中は言葉がまとまらず、しどろもどろになる。


「そうね。今の田中さんの方が、人間らしくて良いわ」

「それはそう……」

「皆一緒か……私も昔インクの分量間違えて、不良品を100個作ったことある……」

「私は発送ミスして、営業さんに商品届けてもらった……」

「私は宮西さんを怒らせた……。でも、このままじゃ嫌。あきらめたくない。」

ちゃんと話したい」


川原の目には、確かな決意がこもっていた。


「そうですね。やっぱコミュニケーション大事っすね」と田中があえてフランクな口調て言った。

「ええ。宮西さんが働き出してから私、仕事が楽しくなった。

最初は生活費の足しにって初めて。今では老後の蓄えにってそれだけだったのに。

今は必要とされる喜びがある。だから…ちゃんと話したい」

「私も…話したい。ご縁があったわけだし」

「あの…私も棚の文字は…前から見難いと思っていたの。いちいち老眼鏡かけるのも面倒だし」


「どうしたらみんなが働きやすいか、一緒に考えましょう」

田中が提案し、皆が同意した。


休憩室の空気がやっと循環し始める。


田中は目の前の光景を見て

新人研修で聞いた社長の言葉を思い出す。


「虹の色は、光の屈折で生まれる」


虹だって、屈折しないと、色として映らない。



本社人事室。

田中は人事室に戻ると倫心が電話対応していた。


「はい。では当日、車で迎えに伺います。失礼します」

倫心は電話口に挨拶をすると受話器を置いた。


「ああ、疲れた」

田中はぐったりと椅子に座りこみ、ネクタイを緩め

「そっちはどう?」と倫心に聞いた。

「なんとか、落ち着いてもらって、今日は片づけだけして、退社して頂きました。

宮西さんからは結局、理由は聞けませんでした」

「パートさん達の話しだと、棚に貼ってある梱包材の名前のシールを

『漢字で難しいわよね、ひらがなにしましょうか』

って川原さんが言ったら、宮西さんがキレちゃったみたいな」

「そうっだんですね…」

「『決めつけた私が悪かった』って川原さん泣いていた…。けど、

最後は『宮西さんと話したい』って言ってた」

「よかった。でも、どんな理由があったとしても商品を投げるのは責任がある行動とは言えない…」

「まあ、そうだけど、それをどうやって伝える?」

「なので、宝探しの旅に出ることにしました」

「はあ?」

「先程、ご両親には了承を頂きました」

「え?」

「もちろん、社長にも報告済みです。社有車の使用許可も取ってあります」

「そういうことじゃなくて、宝探しって何?どこに行くの?」



読んで頂きありがとうございます。

感想を頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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