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法定雇用率達成を目指して共生について考えてみたら、みんなが進化した  作者: 青海


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20/33

吸収と反射

この章では仕事の経験からヒントを得て

主人公の自分軸を描きました。

読んで頂き、感想を頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

「色の正体は何ですか」

舟木社長の唐突な質問に、倫心は息をのんだ。


宮西美香里。24歳。先天性の心臓の疾患がある知的障がい。愛の手帳4級。


宮西の採用についてのミーティング後、

倫心は舟木社長に呼ばれていた。

ミーティングでの自身の発言が、

決して穏当なものではなかったことを自覚していた倫心は、

静かに身構える。


舟木社長は穏やかに質問を続けた。

「忘れてしまいましたか?新人研修で習ったはずですよ」

「…色の正体は、光です」

倫心は、喉の奥から絞り出すように答えた。

「そうです。色の正体は光。反射と吸収のバランスの違いで、

人の目に映る色が違うだけ。宮西さんが入社することで、

わが社が何を吸収し、何を反射するのか。

どんな新しい色になるのか、試してみても良いかもしれないと思っています」

「え?」

「セーリングプリントは印刷会社です。お客様に彩りを届けるのが仕事。

新しい色を取り入れて、ブラッシュアップしていかないと。

宮西さんの実習プランをお願いします」

「ありがとうございます。先ほどは、分かったようなことを言ってしまい、

申し訳ございませんでした」

倫心は胸が熱くなった。

舟木社長は、リスクを承知して、法定雇用率という数字の枠を超え、

宮西さんを受け入れる決断をしたのだ。


舟木は、倫心が退室した後、一人インクの空瓶を手に取った。


腕を伸ばし蛍光灯に瓶をかざす。


『迷彩君』にも光が届きますように…。


インクの瓶は光を反射し、微かな輝きを帯びた。



人事部に戻った倫心は早速、宮西の相談員に連絡を取り、実習のスケジュール調整を行った。


そして、仕事の切り出しのアンケートを詳細に書いていた、

介護士の資格を持つ川原に、宮西の実習中の指導を依頼した。


依頼を受けた川原は、期待に胸を膨らませる。

誰かのために、どうしたら良いか考えて過ごす日々が再び始まる。

作業の精度以外の、人の心に向き合うのは久しぶりだ。


どうしたら作業をしやすいか。どうしたら手順を無理なく覚えられるか。


川原は宮西が作業に集中できるよう環境を整えた。

広いスペースを確保し、手順を細分化し、

途中まで出来たものを置いておけるよう配慮した。


実習中、宮西は川原の指導を受け、一つひとつの作業を熱心に取り組んでいた。


そんな二人の実習の様子を見に来ていた倫心は、改めて思う。


吸収と反射で生み出された新しい色が、周りと調和し、

美しいグラデーションを描く。そんな彩りがある社会が良い。

理想論だと馬鹿にされても構わない。

私は、みんな仲良くが良い。共に生きていく社会がいい。


倫心は、自分の「共生」という軸を強化した。


宮西は2週間で梱包用の箱作りの手順を習得し、

習熟速度を上げて成果を出した。

実習の評価を受け、宮西は無事に障がい者雇用のパート社員として採用された。


倫心は、北岡の件があったため、就業時間は宮西に負担のないよう細心の注意を払って配慮した。


宮西が休まず通勤し、問題なく仕事を熟す日々が数か月続いた、ある日のこと。


工場から本社人事に、緊迫した電話が入った。


「え、どういうことですか。宮西さんが、川原さんに怒っているってことですか?」

電話をとった田中は驚いて大声を出す。

倫心は田中の電話が気になり、PCを打つ手を止めて、田中を見守った。

「はい…分かりました。とりあえず、工場に向かいます」

田中は電話を切り、受話器を置いた手を軽く握りしめた。

「…宮西さんが、かなりヒートアップしてるって」

田中は不安そうにしている倫心に告げ、「とりあえず工場に行ってみよう」と促した。

「はい」と返事をした倫心。


焦燥と不安がインクの染みのように

いびつにじんでいった。




読んで頂きありがとうございます。

感想や駄目だしなどのコメントお待ちしてます。

よろしくお願いします。


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