作戦会議
いつも応援ありがとうございます。
『普通』に対する作者の想いを込めました。
良かったらご一読下さい。
倫心の脳内では、佳純からのメッセージや田中に言われた言葉が何度もリフレインしていた 。
ベッドに横になっているのに、一向に眠れない 。
『ただ、ツグちゃんの普通が羨ましかったの』
「普通でいいだろ。腫れ物扱いは息が詰まるんだよ」
普通、普通、普通 。
普通は、誰かに押し付けるものでもうらやむものでもない。
その人がその人らしく、自然体でいられること。それが「普通」でしょ?
私は佳純ちゃんと、普通に一緒にいられるはずだ 。
佳純ちゃんのことを面倒だと思ったことはあるけれど、
憐れんだことなんて一度もない 。
私にだって、佳純ちゃんが必要なの… 。
北岡さんのことだって…。
明日、作戦会議をしよう
倫心は自分に言い聞かせるように、無理やり目を閉じた 。
翌朝、目が覚めると同時に、倫心は決意のメールを送った 。
『佳純ちゃん、おはよう。とりあえず、佳純ちゃんを忘れるなんて無理。
敗者復活戦から勝ち上がるから、もう一度試合をしよう』
倫心は寝不足ではあったが、やる気だけはみなぎっていた 。
会社に着くと、すぐに北岡のデスクを確認する 。やはり、今日も出社していなかった 。
始業時間が過ぎ、昨日と同じように田中が北岡の自宅へ電話をかける 。
コール音が鳴り続けている間、田中の足は床を擦りつけている。
俺が骨折して不自由だった時、みんなに『大丈夫?』って言われる度に
線引きされているような気がして。だから北岡さんにはそんな思いをさせたくなかったんだ……なのに、なんでこうなった?
田中は苦しげに受話器を置いた。倫心はその背中に向かって、毅然と話しかける 。
「作戦会議をしましょう」
「え?」
「モテたくて入部したサッカー部でも、作戦会議くらいはしましたよね?」
「何の話?」
「来て下さい」
二人はミーティングルームへ移動した 。
「欠勤が始まってもう2週間ですよ。解雇は社長が望んでいません。どうにかしないと」
「…。俺はただ、普通に接したかっただけなんだ……」
「田中さんと北岡さんの『普通』は違うんですよ。いい加減、それを認めてください」
倫心の強い言葉に、田中は黙り込んだ 。
「私たちは、北岡さんのための『普通』を再構築しなければならないんです。
アセスメントからやり直しましょう。まだ、私たちは作戦すら立ててない」
「香山さん……」
「正直に言います。私には、バドミントン以外にやりたいことなんてありませんでした 。
仕事なんてお金を稼ぐ手段でしかないと思っていたし 、障がい者雇用の担当になってからも、
『居場所』を布教して回る社長はお釈迦かよって、キモイって思ってました」
倫心は一気に畳みかけた。
「でも、北岡さんも佳純ちゃんも、諦めたくないんです。このまま終わりたくありません。
佳純ちゃんが言ってくれたんです、『私ならできる』って。だから……。まだ、試合は終わっていません」
「香山さん……。……えーと…佳純ちゃんって誰?」
「そこですか?」
「え?」
「田中さん、今から北岡さんの家に行きましょう」
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