始動
凸凹がない人間なんていません。共生について考えてみたくて小説を書いていきます。
読んで頂けたら嬉しいです。
「我が社は法定雇用率達成を目指します」
社長の宣言に人事総務課の社員たちは内心拍子抜けしていた。
セーリングプリント株式会社は社員120名の中小企業。
食品のパッケージを中心に小ロットのグッズのプリントまで、
幅広い仕事を取り扱っている印刷会社だ。
社員の内訳は本社で営業、人事、総務、メンテナンス業務などを行う社員が20名。
工場勤務の社員が100名。
香山倫心はセーリングプリント株式会社の人事課の社員。
入社4年目の26歳。仕事を覚え、なんとか落ち着いてきたところだ。
特に人事の仕事がしたかったわけではない。配属された課が人事課だった。
でも特に不満もなく働いてきた。与えられた環境に適合していけるタイプである。
人事課の社員は7名。部長のデスクが窓側にあり他6名のデスクは3名が向き合う
ように縦に並べて配置されている。
数時間前、倫心はいつもの時間に出社して、ルーティンの朝礼に参加していた。
セーリングプリント株式会社の朝礼は部署ごとにスタイルが異なる。
人事総務部は自席に座ったまま、連絡事項を聞くスタイルだ。
倫心は「今日もほどほどにがんばって、家でドラマの続きを見よう」と
仕事と関係ないこと考えながら部長の話をぼんやり聞いていたが
「社長からお話があるそうだ。15時にいらっしゃるから、
環境を整えておくように」と部長のアナウンスがあり、
急に落ち着かなくなった。
他の社員たちもそわそわしている。
朝礼後、
「リストラかな?」「経費削減とか?」
社員達が小声で話す会話が倫心の耳に入ってきた。
倫心も社長が何を話すのか気になってしかたなかったが、
とりあえず環境を整えることにことにして、
床に置いたままの段ボールを片づけ、
デスク端に横積みにされていたクリアファイルの山を引き出しに入れた。
13時に社長の舟木 翔が人事課の部屋にやってきた。
社員たちは立ち上がり、社長に注目する。部屋の空気は一瞬にして、重くなった。
「我が社は法定雇用率達成を目指します」
社長の第一声に社員たちは拍子抜けする。予想もしないワードであったからだ。
お読み頂きありがとうございました。
近日中に続きを投稿します。よろしくお願いします