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プロローグ2

おためしで連続投稿です。次からはゆっくりめで投稿していきます。

 その日ベルメルは、足りなくなった薬草を補充する為、里から離れた森で採取をしていた。里から離れるのは少々危険ではあったが、この辺りはゴブリンしか出ない為、魔法の心得がある自分なら対処できると考えたからだ。


「ふー、これくらい採ればじゅうぶんかな。ーーミア、そっちはどう?」


 同行者である友人がいるであろう方向にベルメルは声をかけた。


「ーーうん、こっちもだいぶ集まったよ」


 がさがさと草をかきわける音がし、茂みの中から銀の髪を右サイドで一つに結んだ少女が姿を見せた。その手には半分ほど膨らんだ布袋が握られている。


「これならしばらくは大丈夫そうね」


「よかった。なら早く帰ろう。この辺りは里から離れているし魔物が出たら怖いよ」


 キョロキョロと辺りを見回すミアに、ベルメルは落ち着かせるよう肩に手を置いた。


「大丈夫よ。魔物は自警団が時々狩っているし、それにいざとなったら私が一発で仕留めてみせるから」


 腕をまくり力こぶを作ってみせるベルメルに、ミアは目を丸くした。しかしすぐにくすくすと笑い始める。


「ふふ、そうよね。ベルったらフォレストボアも殴って仕留めたものね」


 フォレストボアとは森に住む猪の魔物で子供より大きな姿をしていた。そのフォレストボアをベルメルは過去に素手で殴り倒したことがあったのだ。


「いや、仕留めるって腕力じゃなくて魔法でだからね。それに、そのことはいい加減に忘れてくれないかな」


 頬を膨らませるベルメルだったが、笑っているミアの姿を見て、どうやら恐怖は薄れたようだと胸を撫で下ろした。


 ベルメルと違ってミアはなんの訓練もしていない為、やはり魔物がいる森の中で行動するのは怖いのだろう。その点、ベルメルは祖父の方針で魔法の訓練をしてきた為、それなりに度胸はついていた。


「さて、本当にそろそろ帰ろう。日が暮れるし……」


 ウオオォォォッ!


 ベルメルが帰りを促そうとした時、森の奥から魔物の咆哮が聞こえてきた。ミアが短い悲鳴を上げる中、ベルメルは周りを警戒する。


 近くの茂みが揺れ、そこからフォレストウルフが二匹飛び出してきた。ベルメルが魔法を放とうとするが、フォレストウルフ達はそれを無視し素通りしていく。


「え?」


 フォレストウルフの予想外の行動にベルメルは呆気にとられた。目の前の獲物を無視するなどありえないことだったからだ。


 フォレストウルフが背後に消えていってから数秒後、地面が揺れ始めた。今度はなんだと前の茂みを注視しているとそこから現れたのは大鬼(オーガ)だった。


「!? 【ミラージュミスト】」


 色黒の巨体を目にした瞬間、ベルメルは霧の魔法を発動させていた。真っ白い霧がオーガを覆う中、ベルメルはミアの腕を掴み、反対方向へと走り出す。


「ベ、ベル、いまのオーガ……」


 一瞬だけ見たオーガの姿に、ミアは恐慌状態に陥りかけていた。正直、ベルメルに腕を引かれていなければ走ることもままならないだろう。


「がんばって走ってミア、里まで逃げればなんとかなるから。 ーー【方陣(ほうじん)·縛鎖(ばくさ)】」


 懐から札を取りだし、ベルメルはオーガが通るであろう場所に向かって投げつけた。札が地面に触れると同時に陣が展開される。


 ベルメルとミアは必死に走った。枝や葉で身体が傷付くのも構わずに森の中を突き進む。茂みをかきわけ小さな段差を飛び越えた瞬間、目の前の光景に驚きの声を上げた。


「ちょっと、そこの人っ、どいて、どいてーーーっ!!」


 ベルメルの叫びに、ぼけっと森の中を歩いていた少年は、その視界に二人の少女の姿を捉え慌てて後ろへ下がった。無事に着地したベルメルと少年の視線が交差する。




 こうして異世界に落ちた少年と異世界に生まれた少女は出会ったのだった。

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