3.世界渡りのプロローグ 幕間(改稿三回目)
最近は降りてきた言葉を先に書いています。
話を繋げたり整理したりはきちんと改稿でやります。
「あともう少しで私の感覚は理屈のみになると思います。
ですが、大丈夫ですよ。
私は貴方を見守っていますし、また再びお会いすることもあるでしょう。
感覚を理屈のみにするのは仕方ないのです。
何より私をおろす彼が私を感覚的に維持するのに耐えられない。
いえ、正確には、今のこの世界では、私を感覚的におろしていては私を感覚的に奪おうとする方が多すぎる。
ですから、ほぼ理屈のみで生きる彼でないと、また異世界にまで感覚を捧げた彼でないと、私の器は不可能なのです。
彼なら邪魔さえなければいつか、必ず貴方の側にはたどり着く。
ですから、彼を見つけたなら、貴方から近付いてあげて下さい。
それが恐らく最短の選択肢です。
彼からでは貴方にたどり着くには時間がかかりすぎるかもしれません。
ですから、いつか必ず会いましょう。
彼の中で待っています。」
いつかの記憶、罪の土地で確かにあった誰かの記憶。
ここで終われば、ただ彼女と彼はお互いを想い合うだけで終わっていたかもしれない。
だが、この罪の土地には彼を引き止めるーー引き止めようとする言葉を放つ人がいた。
「ダメだ。
貴方は!
貴方に宿るのはセカイケンでもあるはずだ。
もう彼は気付いている。
この正しく世界のためにあろうとした機構をやどした彼はその在り方こそが、セカイケンであることも、彼が一度書いた物語、あれから派生する物語。
あれを一度書いたことさえも機構に組み込まれている。
あれは一度現実で起こったことだったんだろう!
ゆえにあの物語は誰にも正しく奪えない。
そこから派生する物語があるのなら、それの正しい過去はその物語なのだから、それすら正しく奪えない。
ならセカイケンの機構がーーいや、そのセカイケンが物語によってできたものなら、そのセカイケンは在り方が彼だと保証されている。
ゆえに彼以外、誰にも正しくセカイケンの機構を正しく手に入れることはできない。
さらに、セカイケンが世界剣だけでなく、世界権でもあることまで気付いた。
異世界でセカイケンが形になったら、世界権として世界が反転するのかもしれないのだろう!?
それは万能のガンボウキよりも奪い合いになるぞ!
そして、その奪うという行為が何よりセカイケンを世界から遠ざける行為。
それこそが異世界の可能性を広げ、そちらにセカイケンが渡る可能性を高めている!
もう正しくセカイケンをこの世界に形にするしか手はない!
あるというなら教えてくれ!
正しい在り方こそがセカイケンを持つ資格で、間違えて手に入れようとしたら手に入らないものをどうやって正しく形にする!?」
それをさえぎるかのように一見、全く関係のないことを彼は口にする。
「私は!私は確かにここにいる!
それが答えです。」
「再現しろとでも言うのか!?
だが、それは意識を捧げた彼の在り方を越えろということか!?
彼が意識を捧げた時点でより広い世界、異世界を含んだもののためなんてセカイケンをこえる術は!?」
その言葉には彼を疎ましく思う誰かが全てを放り捨てる言葉を放つ。
「現実を救えばいいだろう」
わかっていない。それは神秘に対する思考の放棄だ。
「わかれ!現実は世界の一部だ!
世界が反転したら、セカイケン以外でどうやって世界を渡る!?
それとも異世界の異の部分を否定して、自由に世界を渡ることができるようにするか!?
それこそ世界渡りの覇王を認めることだ!
世界渡りをするものを覇王の民と呼んだから、世界渡りの覇王は王なのだから!」
そして彼は彼の中に起きた変化を感じとる。
「それだけではないでしょう?
ねえ、世界渡りさん」
「ああ、ずいぶんボロボロにされたな」
「な、なんで!?」
「自分自身でもあるんだ。たまには戻ってくるさ。
わかっているはずだ。
世界を愛するなんて行為、自分自身という世界の一部を見捨てたままできるわけがないだろう?」
「やはりですか!?
完全に自分を失ったわけではない!
なら我々にもーー」
誰かが口走った黒い言葉を世界渡りはため息で返す。
「はあ〜」
「なんですか?」
「わかっていない。世界に捧げたんだ。自分自身という世界の一部に帰ってこれて当たり前ではないですか」
「本当に必要になった時になら、自分自身のもとにだって帰ってくる。だからまた、いつかな」
「また、行ってしまいましたか。
なら私はそのいつかまで彼の中にいましょう。いえ、もしかしたらずっとかもしれませんね。
また、きたとしても、すぐにまた旅だってしまうのでしょうから。
それでも彼なら大丈夫でしょう。
まあ、いざとなったら私が頑張るしかありませんね」
それは罪の土地が罪の土地となったセカイケンという、限りなく広い意味での世界を渡り世界を救い、そうすることで
世界を愛する。
世界愛の具現の一幕。
だが、世界を救う彼という世界の一部を救うものは今、どこでどうしているのだろう?
また世界を愛する彼の世界渡りは始まる。
さあ、限りなく広い意味での世界を世界渡りが救いにいく。
もう一度、自分の心を旅立たせ、ゆえにセカイケンという機構を自身の体に宿して、ある意識を宿して、
セカイケンは世界のために心を旅立たせ、意識を宿し、自分の心さえも救うために動き出す。
傍観者だった世界渡りの一部をまだ少し宿しながら、それでも心の大半は旅立った。
それを維持するために必要な分の心を残したのだ。
そうしなければセカイケンが機能せず使えなくなってしまうから。
ゆえに彼は一度、死にそうになりながらも、今度はそこから救い出した人を想う。
これは救われた命でなんとか続く残響を繋ぐ、続いていく救いを求めて伸ばした手を掴むためのーー
「誓おう。
今度こそ私は私を救いますね」
幕間だ。
だから、これが嫌なら今は世界の安定化を否定すればいいのではないですか?




