2罪のハジマリ 第一章 04
千秋は何人かの友達にメールで聞いていたが、俺達の『探る』はそんなにコソコソしたものではない
俺の特技があるから、極端な話、本人に事情を聞くだけでいい。
嘘を吐いていてもわかるのだから…。
だが、流石に俺でも間違えることもあるし、良くないことをしていた場合、何の証拠もないと単なるいいがかりだ。
それ以前に相手のことを知らないと事情もわからない。
普段は推理して補っているのだが、自分が知らないことが理由だと分かりようがない。
だから、春美ちゃんとの接触を試みたのだが……。
「頼んだばかりで悪いんだけど、調査の必要はなくなったよ」
前と同じ喫茶店で、冬彦からそう言われた。
「急にどうしたんだ?」
「やっぱり僕の誕生日のサプライズだ。心配させてごめんだって」
「そうか、電話に出なかった理由はなんだったんだ?」
俺は疑いを持った。誕生日のサプライズなら電話に出ないという行動はおかしいだろう? サプライズのために実際に疎遠になるのでは意味がない。
それに通話中ならわかるが、電話に出ないのでは、電話を使っていない時に通話の手間を省いたことになる。春美ちゃんに限ってそれはない。
だが、冬彦は完全に信じている。声を聞けばわかる。
「バイトをしていたから出られなかったんだって」
「じゃあ、まだ、電話に出られないのは続くのか?」
それならわかる。だが、俺はまだわずかに疑っていた。
タイミングがタイミングだ。俺達が冬彦に探るように言われてすぐというのが怪しい。
それに、言い訳がこれから電話に出なくても怪しまれない理由なのも引っかかる。
「うん、まあ、続くらしい。最悪、二人で出掛ける時間も減るんじゃないかと思ったんだけど、そこは大丈夫らしい。そう言われちゃうと、僕のためにバイトなんてしなくてもいいって本音も言えなくて……」
「どこのバイトかは聞いたのか?」
「いや、恥ずかしいから教えられないって」
「……」
冬彦はそれで信じたのか? いや、信じているのだが……。
一応、彼氏なんだから、バイト先くらい教えられるだろう?
「お前は信じたのか?」
「天典ならわかるだろう?」
「そうだな。だが一応、俺はまだ少し調べてみようと思う。春美ちゃんと会えないか?」
「えっ、調べるのか? それはいいけど。春美は天典とは会えないと思うよ。バイトだって言っただろう? あまり、暇じゃないんだって」
うっ、暇な時でいいと言おうとしたのに…。
「じゃあ、お前達が出掛ける時に……」
「デートだから二人きりがいいんだって。『デートだから』を強調して言われた」
「なあ……」
それで怪しいと思わないのか?
そうは聞けなかった。
冬彦は信じきっている。あまり心配をかけたくない。
なにより、それで二人の仲が悪くなる可能性がある。
まあ、調べるのはいいらしいから、勝手に調べるか……。
その後、千秋にそのことを伝えて、明日、会って話すことになった。
友達にもう一度聞いてみるそうだ。
俺も何かできたら良かったんだが、女性の友達は千秋や春美ちゃんくらいしかメールアドレスを知らない。
そんなことを考えて、歩いていたら、春美ちゃんの家の前まで来ていた。
呼び鈴を鳴らそうかと思ったが、今はもう家を訪ねるには遅い時間だ。ダメだろう?
そういえば、電話に出ないのがおかしいってことだったよな?
家の電話に電話してみた。
コール音が十回くらい鳴るが出ない。
これはおかしい。
なぜなら春美ちゃんの部屋の電気はついていて、明らか(、、、)に(、)人(、)が(、)いる(、、)気配(、、)が(、)する(、、)のだ。
その上、春美ちゃんは変に責任感があるコで、まるで事務職の人のように電話してきた人の用件を聞くコなのだ。




