2罪のハジマリ 第一章 03
翌日、同じ喫茶店で俺は千秋に冬彦の誤解を解いたことを話した。
実際は誤解なんてしていなかったが・・・・・・。
「ホント? ありがとう、天典!」
千秋は満面の笑みでそう言った。
俺はしばらくその笑顔に見惚れてしまった。
そこで、ああ、俺はこの笑顔が好きなんだと実感した。
「天典? それで、ここに呼んだ他の理由は? それだけじゃないんでしょ?」
「ん? 千秋とここでお茶をしたかったからとかじゃダメか?」
「そんなことを言っても後で理由を話すんでしょ? 後でも先でも話すことに変わりはないよ」
「はあ~」
「うん?」
やっぱり、本気にしてくれない。
千秋に俺の特技があれば、わかるんだろうがな?
そういえば、冬彦も千秋がこういうことを言っても本気にしないよな?
俺達三人で一番持たなくてもいい俺がこういう特技を持っているのはどういうわけだろう?
いや、むしろ、だからか?
俺以外が持つと俺達の関係が壊れるかもしれないから……。
まあ、ともかく、これを話すということは、俺はついさっき好きだと実感した笑顔を曇らせなきゃいけないんだな?
冬彦、恨――めないんだよな、これが……。
なにより、俺の好きな笑顔は冬彦のおかげなのだから……。
できるんだろうか? 俺に?
この笑顔を俺に向けることなんて……。
まあ、この時間を止めることなんてできないのだから、今はこの笑顔を曇らせよう。
それは必要なことだから……。
「冬彦に春美ちゃんが最近おかしい理由を探ってくれと頼まれたんだ」
「そっかぁ、浮気なら……なわけないか? 春美ちゃんが冬彦のことを好きなのは痛いほどわかるし……。あ~あ、ホント、浮気ならいいのに」
「それを本気で言えない千秋もかわいそうに……」
そう千秋は本気で言ってない。
千秋も同じ人を想うライバルとして春美ちゃんを認めているのだ。
「そういうことは思っていても言わないでよ」
「で、どうする?」
「どうするって?」
「千秋は調べるのか? 俺だけで探ってもいいけど…。もしくは千秋がそんなコは放っておいて私と付き合おうって言うとか?」
「言えたら苦労しないし、私がどうするかなんてわかるでしょ?」
千秋は携帯をいじりながら言う。
といっても、俺を無視する行動じゃない。むしろ――
「早速、情報収集か?」
「うん、まあ、本人に直接聞く手もあるんだけど、私達には話してくれない可能性もあるし、友達に聞いてみようと思って」
「ちなみに電話に出ないことが多いからわかったって言ってたぞ」
「え? あの冬彦が相手が電話に出ないくらいで心配するの?」
千秋がメールを打つ手を止めて聞く。
不安が混じった本音だった。
だが、その不安なら取り除ける。
「罪仙の家の人が冬彦に心配だから何か知らないか聞いたらしい」
「ああ、なんだぁ。冬彦はなんて?」
千秋は再びメールを打ちながら聞いてくる。
「もうすぐ、冬彦の誕生日だから期待しているらしい」
「アハハ、冬彦らしいなぁ。天典は冬彦の誕生日、何か考えているの?」
「うん? まあね。千秋は?」
「私も考えているよ」
「この件の解決をプレゼントにするのはどうかと思うよ」
「うっ、いいじゃん。天典だって、ホントはまだ考えてないんでしょ?」
「アハハ、流石にわかるか?」
「まあね」




