2罪のハジマリ 第一章01
最初の作品の話を載せ終えたので、別の作品を続きとして載せます。
というより、ある意味、本当に続編なので一括りにしてしまいます。
ですが、実際に書いた順番は実はこの続きの方が先なので、この前の話より稚拙かもしれませんが、改稿でなんとかしてみようと思います。
ありえないことが起きた。
いや、声を聞いて、ありえないことではないとわかったが……。
放課後の教室。教室の中には俺達の他に誰もいない。俺とこのコ以外には……。
このコは美少女だ。
長いサラサラとした黒髪、そのサラサラ具合は他の男子の先輩が口説き文句に使いそうなほど。
口説き文句に使うのがサラサラ具合の高評価と捉えられるかは知らないがそれ以外に褒め方が思いつかなかった。
胸は平均以上だと思う。服の上から胸があるなと思えるくらい。実際に裸を見たわけじゃないから正確にはわからない。そのコが口を開く。
「ずっと前から好きだったんだ。付き合ってよ」
「罰ゲームか? 俺を相手にしたのが間違いだったな?」
「・・・・・・」
この俺、夏上天典は的確に相手の言葉を分析する。
なに? 俺の見た目の情報がない? 俺はまあ、いいだろう? というか、自分に評価を下すのは苦手だ。俺は以前、いろいろあって、自分に対する高評価を自意識過剰だと思ってしまう。それも治ってきたが、いまだにどこまでが自意識過剰でどこまでが正当な評価かがわからない。
まあ、客観的な事実だけ上げると、髪は短い方、色は染めてるわけではないのに何故か少し茶色っぽい…。
髪の色は人にそう言われただけで、俺はそんなに茶色っぽいとは思ってない。まあ、自毛だからいいだろう?
おっと、状況分析に戻ろう。
このコ、俺の幼馴染の裁城千秋は俺の返答に黙る。
そう、このコは俺の幼馴染だ。
普通ならこんな答えを返す俺が最低認定されるだろう?
だが――
「あ~、やっぱ、わかるよね?」
「ああ、近くで見ているんだろう? 首謀者が・・・・・・」
そこで教室の外から数人の女子が出てくる。
隠れて聞いていたのだろう。みんな、外見のレベルは高い。まあ、美少女の千秋とつるむんだから、そりゃ、美少女だろう。
その中のリーダーっぽい人が口を開く。
「え~、なんで、わかるの? 千秋ならありえるでしょ? 幼馴染なんでしょ? 幼馴染なら恋してなんぼでしょ?」
罰ゲームというのはホントなのだ。
加えていうと、この首謀者が最低なヤツということもない。
普通ならそうかもしれないが、この学校、しかも相手が俺に限定されればそれは違う。
俺は昔からウソを見抜くのが得意で相手がホントのことを言っているのか、ウソを言っているのががわかる。
それどころか、声を聞けば、なぜウソを言うのか、理由やその言葉に混じった本音までわかってしまう。
ある時から、それに磨きがかかった。
そして、その特技で、自分の気持ちを周りが誤解していたせいで告白してきたコに、君が本当に好きなのは俺じゃないと指摘したところ、大当たり。そして、俺にウソを見抜かれないようにするのが流行りだした。
だが、そのコも気の毒だった。
俺の親友のことが好きなのに、周りの人が『そのコはその親友といつも一緒にいる俺のことが好きなのだ』と勘違いして、学園祭の告白イベントで告白するように言われ、気の弱いそのコは盛り上がっている周りの友達に何も言えずその日を迎えたというわけだ。
正直、あの時はどうしようか、迷った。俺じゃないなんて言うのも最低な気がするし、それなのに返事をしても全校生徒の前なのだ。
だが、そのコの気持ちを無視するのが一番良くないと思い、結局、指摘し、そのコは無事、俺の親友に告白した。
そのコも美少女だったからもったいなかったなあ……とはかけらも思っていない。
相手を好きでもないのに付き合うことはしたくない。少なくとも俺は……。
まあ、回想をやめて現状を考えると、今回のは流行りの一環だ。
それにしてもやばかった。
千秋が相手なら、この特技がなければ、告白を受けていた。
なにせ、俺の想い人なのだから……。
告白がウソだったことで首謀者を恨むか、千秋に告白のセリフを言わせたことを感謝すべきか迷いながら、まあ、千秋に目をつけるのは間違いじゃない。『少し本気にした』という感想に落ち着く。
だが、特技なんてなくてもわかっていたのだ。
「まあ、お前が冬彦のことを好きなのは知ってるからな……」
天王寺冬彦
それが千秋の想い人、そして俺の親友の名だ。
冬彦は十人の女子に聞いたら十人ともイケメンと答えるくらいカッコイイ。一緒に歩いていると、女子が嫌になるほど振り返る。
ちなみにその俺の親友は、今、学園祭の告白イベントのコと付き合っている。
だが、俺の予想では特別好きな人がいないから友達として付き合っているという感じだ。だから千秋にもまだチャンスはあると思う。
そう、だから、俺の親友が付き合っているという表現は少しおかしい。
というのも、俺の親友は超がつくほど鈍感な上に色恋沙汰に関して無知なのだ。
告白も断れず、受けた後、俺に『付き合う』の定義を確認しにきたのだが、その時の言葉が『付き合うって、一緒に遊んだり、勉強したり、出掛けたりすればいいんだよな? 要するに仲良くして友(、)達(、)に(、)なりましょう(、、、、、、)ってことだよな?』なのだ。
どうやら、一目惚れ等の『よく知らない人を好きになる感覚』がわからないらしい。
だから、本当は俺の幼馴染ということで近くにいる千秋に一番可能性があるのだ。
「でも、冬彦くんは付き……ごめん、わかった。たしかに冬彦くんラブの千秋が告白するのは無理があった」
首謀者のコも冬彦の性格を知っているので冬彦が付き合っているとは最後まで言うこともできない。
冬彦と告白イベントのコが付き合っているという話はかなり広まっている|(というか全校生徒が知っている)のだが、冬彦のことをよく知っている人は付き合っているわけではないと思っている。
「いいかげん、罰ゲームで俺をからかうのはやめて欲しいんだが……」
「そうだよ。天典が本当に告白された時にうっかり罰ゲームだと思っちゃったらどうするの?」
「……はあ~」
「天典くんも大変だね?」
どうやら首謀者のコは俺の気持ちをわかっていて、勝算アリと判断し、罰ゲームにしたらしい。そこまでわかっているのなら千秋を振り向かせるのに協力して欲しいくらいだ……。いや、実際には自分で何とかするけど……。
「あぁぁ~!」
罰ゲームを見守っていたコの一人がいかにも失敗したという声をあげた。
スマホを見ながら何かしていたようだ。メールの送り間違いか?
「どうしたの?」
「どうしよう、千秋!?」
「だから、どうしたの?」
「今、罰ゲームを見られなかったみんなに、証拠の動画を送ろうとしたら、冬彦くんに送っちゃった! ごめん、ホントにごめん!」
俺は眉をしかめる。
周りのコ達が慌て始める。
「ちょっとちょっと。千秋の気持ちは知っているでしょ!?」
「そうだよ。冬彦君ラブの千秋にそんなことは酷だから厳重に守るようにというは話だったでしょ!?」
「千秋、ごめん! ほんとにごめん!」
それを見て、首謀者のコが言う。
「真偽のほどは? 夏上くん?」
「君はエスパーなのか? そこまでわかるのはこの中では千秋だけだと思っていたんだが……。でも、言う必要はないな。だろ? 千秋?」
「うん」
「もう、二人で通じ合っちゃって! 私達にも説明してよ! 今のがわざとだったって」
「えっ?」
他のコ達が声をあげながら動画を間違えて送ってしまったコを見る。
そのコは申し訳なさそうにしながら、それでも言い訳をしない。
何か言えばいいのに……。まあ、だから許せる。
そして他のコが千秋に問う。
「そんな! いいの? 千秋?」
「大丈夫だよ。天典は優しいからね」
「優しい? どこが? 黙認するのが優しさなの? 私は怒るよ!」
そのコの優しさに、この状況で怒ってくれる友達が千秋にいることを嬉しく思い、このコは俺(、)に(、)関して(、、、)は(、)一歩足りないなと思う。
「大丈夫だよ。わざとなのは半分(、、)だから……」
「半分?」
俺の言葉にみんなが不思議そうな顔で俺を見る。
何を言い出すんだと呆れている顔と不思議に思っている顔が半分ずつといったところだろう。
その中で責められているコは一人だけ驚く。
「誰だってあるだろう? こうなったらいいなってことを行動直前まで進めて、結局、それをしなかったこと。そんな感じでやってたら本当に間違えて送ってしまったんだよ」
「そっか。でも、それでもしてもいいことと悪いことが!」
「そうだね? とりあえず……」
首謀者のコが話をまとめようとする。
俺の予想通りに実際にこのグループでリーダーなのだろう? 彼女がどう言うかでこのコをまだ責めるかに大きく影響する。そんな予感がする。
「とりあえず、あんた達、ホントに付き合わないの? 通じ合い過ぎでしょ?」
「は?」
「そっち!?」
「だって、これだけ通じ合っていて付き合わないとか、付き合うにはどんだけ通じあえばいいのってことになるでしょ!?」
みんなが呆れる。だが、もうこれ以上責めようとしているコはいなかった。
「まあ、私が余計なことを言っただけだね? これは千秋のことだよ。責めることができるのは千秋だけ、責めていいのも千秋だけだよ」
「うん、いいよ。もう、こんなことしないで、正しい方法を諦めないで、ライバルとしてがんばろ!?」
「うん、ありがと、千秋」
間違えたコを責めない空気になってから女子の一人が千秋に聞く。
「でも、千秋はなんで、わざとなのが半分だってわかったの?」
「ん? そこまで具体的に確信していたわけじゃないけれど、本当に酷いことをされていたら、天典なら怒ってくれていたからね。怒らない時点でそんなに悪いことじゃないんだよ」
「……」
みんなが驚きと呆れで沈黙する。
「千秋、あんた達、本当に恋人じゃないの? もし、それが事実ならこの世界に恋人と呼ぶにふさわしい人達はほとんどいなくなっちゃうよ?」
俺はスルーして、話を変える。俺の悲願はこの際だから置いておこう。
「で、冬彦の誤解は俺が解いておくよ」
「うん、お願い」
「スルーするな! 恋人より上の存在!」
「今の会話を送ったほうが効果あるんじゃない?」
「ダメだよ。冬彦くんもこうだから……」
「ああ、なら、間違えて送ろうとしちゃうのもわかるかも」




