第六章 03
「事件、今度こそ、終わりましたよね?」
「ああ、これで終わりだよ。ご苦労様、天典さん」
「まさか、異世界のカミサマが関わっていたなんて思いませんでしたよ」
「……」
返事がない。
天典は聞いてみる。
「どうかしたんですか?」
「えっ、ああ、あの力は私が与えたのを思い出しましてね」
「えっ!? 異世界の人間なのにですか?」
「ええ、そうですよ。でも、あんなに悩んでしまって……。与えたのは失敗だったのでしょうか」
「そうでもないんじゃないですか?」
「えっ!?」
「少なくとも彼にとって、彼の作った世界は悪に手を染めてしまうほど大切なものだったんですから、そんな大切なものを得られたことが失敗なはずがないじゃありませんか」
「そう……ですかね?」
「ええ、きっとそうですよ。その証拠に彼は世界を作ったことを後悔していなかったじゃないですか」
「……」
「まだ、何かあるんですか?」
「いえ、私は本当に神様なんでしょうかね?」
「なんですか、それ? でも、自分の存在について自問するなんてよくあることですよ」
「私に神様としての力を与えた存在がいて、私さえもその存在の手のひらの上で踊っているだけだとしたら――」
「いいじゃないですか。そんなことを言いだしたらキリがないですよ」
「私はね。今回のことで少し怖くなったんですよ」
「怖い?」
「自分も世界を救えなくなったらどうしようかと……」
「そんなの、気にしなければいいんですよ」
「そういうわけにもいかないでしょう?」
「だって、神様にも救えないのならしょうがないでしょう? 救うように努力してもらえたなら世界はそれだけで嬉しいと思いますよ」
「ですが……」
「生まれた後の世界がどうなるかなんて世界の責任ですよ。人間だって、いつか親が先に死んで、自分で自分の責任を取らなければいけないんですから」
「……」
神様が黙る。
天典は言葉を続ける。
「世界が滅ぶなら、世界が悪になったか――間違えたのでしょう? 神様のせいではありませんよ」
「間違えた世界を導くのも神様の責任なのでは?」
「ハハハ、ですけど世界が進む道まで神様が決めるわけではないでしょう?」
「ええ、まあ」
「なら、世界が決めた決断には世界が責任を取るべきなんですよ」
「でも――」
「でもじゃありませんよ。自分が決めた道が滅びに向かうなら、それも世界の運命なんじゃないですか?」
「その道は滅ぶからやめろと説得すべきなのでは?」
「ハハ、そんなに言うならそれくらいはしてもいいんじゃないですか?」
「……、天典さん、何か、私の知らない理屈を隠していません?」
「バレましたか?」
「ええ、バレますよ。私は神様ですからね」
「ハハハ、それでいいじゃないですか? 神様。……俺は思っただけですよ」
「思った?」
「世界を救うのは神様じゃなくて――
そこにある理と正しき想いなんじゃないかと――
なぜなら理が間違えた想いで改ざんされると危険だからではないかとーー」




