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純血のかぐや姫  作者: 瑞希
輝夜姫 ~嫉妬が国~
12/29

〈つまりトイレです〉

といっても、すぐにやれることはなく。

私は外国語の勉強や、各国の礼儀作法、魔法魔術を勉強していくしかなかった。


そんなある日。


「憤怒が国から使者がいらっしゃいました!」

門番さんが相変わらず門番せずに走ってきた。

そういえば、この国では一部の人にしか名前はないみたいだった。

やってる職業とか、親の職業と立場で呼ばれるみたい。

例えばお父さんが八百屋をやってたら、八百屋の子とか。

なので門番さんは門番さん。


「ふ…憤怒ならできますよね!」

リンさんに懇願されるように肩を掴まれた。

リンさんは外国語の先生で、今丁度習っていた。

今やっているのは色欲の国の言葉で、憤怒が国の言葉は、もうやり終わった。

というか、憤怒の国の言葉は、ほぼ英語だった。

若干違ったけど、この体の記憶力はそんなのお構いなし。


「そう、ですね。

 話せると思いますよ。」

リンさんはホッとしたように笑って、私を門番さんに託した。

そして更に、ラムセスが現れ三人で和服の裾を引きずりながら、シシャの元へ向かった。




『初めまして、嫉妬が国の王。

 私は憤怒が国から来ました。』

憤怒が国から来たという、嫉妬が国の人と同じく、白い肌と黒い髪の男の人。

唯一違う、赤い瞳の男性が言った言葉は、大体こんな感じだろう。


『初めまして。

 今日はどうしたのですか』

名前は名乗らず用件だけを聞いた。

以前、名前を名乗ったらマナーの先生に蒼い顔で叱られた。

叱られたというか、怯えられたというか…。

とりあえず名乗らない方が良いらしい。


『王の認証に来ました。

 認めます、ですが一度我が国へ来て、あなたの戴冠式に出席します。』

マナーの先生に習ったけど、憤怒が国の人は 良い、と言った後にでも、っていうらしい。

憤怒が国へ行くのと、私の戴冠式(王様になる儀式みたいなの)に呼ばないと認めないってことでしょ、要するに。

憤怒が国は、鎖国してる嫉妬が国にとって唯一の貿易相手だそうだ。

これから鎖国はやめるつもりだけど、大事にしておいて損は無いだろう。


『ええ、もちろんです。』

『そうですよね。

 では、失礼します。』

シシャは会釈をして、そそくさと帰って行った。

…お茶くらい飲んで行けばよかったのに。

紅茶は無いけどね!私も苦手だし!


「な…なんと…」

「ああ。

 戴冠式に招待してくださいと憤怒が国に遊びに来てって。」

門番さんはさっぱりだったようだ。

私も少し前ならさっぱりだっただろう。


「そ、そうでしたか…」

「大丈夫ですよね?」

「ああ。」

今更だけど、ラムセスに聞いてみた。

憤怒が国どころか、どちらにしても各国に行くつもりだったし、

戴冠式も良かったはずだ。

案の定、許可が出た。

勝手な思い込みだけど、ラムセスも言葉分かると思うし。




それから一週間。

各国の使者が立て続けに来るようになった。

追い返しますかとも聞かれたが、これを機に鎖国を風化させることにした。

もちろん、憤怒が国と最優先に貿易するつもり。

力関係的に、それが安定してるみたいだから。


『強欲が国の使者だ。』

最後に来たのは強欲が国の人だった。

栗色の髪に青い瞳の大柄な男の人だった。

暴食の人や傲慢が国の人もがっしりしていたが、この人はもはや巨人レベル…。

身長が150程しかない私には、そう思わざるを得ない。


『初めまして。

 どう言ったご用でしょうか。』

『陛下から、見定めよと』

最初は驚いたものだけど、六回も繰り返した私にしてみれば、もう想定の範囲内。


『そうですか。

 では、泊まる場所をご用意しますね』

私がそう言うと、城の中の人が、シシャを案内していった。




そうそう。最近執務を始めたのだ。畳の上で正座しながら。

執務といっても、裁判所の人、軍隊の人、法律の人がそれぞれやって、私はそれに目を通して許可を出すだけ。

とはいえ、楽な訳でもない。

私は良い王様になりたいので、丸投げは出来ない。

鎖国の話みたいに、変更したい事もあるし。


「かぐや、良いか?」

襖の向こうから、大貴たいきの声が聞こえてきた。

私に執務の部屋が与えられてから、めいさん、リンさん、アドリアナはよく遊びに来るけど、大貴はちょっと珍しい。


「はい。どうぞ」

私は筆を置いて襖を見つめた。


「悪いな、執務中に。」

「いえ、大丈夫ですよ。

 どうされましたか?」

私は大貴に座布団に座るように勧めながら言った。

私は元々家があんなんだったからあれだけど、普通だったら違和感たっぷりだよねぇ。

日本人が日本っぽい所に住んでると違和感って、ねぇ?

ま、今じゃ世界中のどこも、国の文化なんて無いけど。


「俺は一応お前の従者だ。」

「えっ、そうなんですか…」

大貴は椅子に座るのを断りながら、そう言った。

大貴は単に魔法の先生なんだと思ってた。

あ、もしかして、だからリンさんは驚いてたのかな?


「………それは今は良い。

 だからな、俺はお前を守る任務がある。

 命を懸けてな」

「命字教えてしまいましたものね」

大貴が真面目な顔をしたので、私はつい顔がほころんでしまった。

なんだか分からないけどちょっと可笑しくて安心する。

大樹の記憶のせいかな、真面目な顔が似合わなく思えて、少し懐かしい。

もう、あの世界には帰れないのかな…。

後悔はないと思うんだけど…。


「つまらん王なら教えなかった。」

「…ふふっ。私はつまりましたか?」

大貴がぶすくれた顔で言ったので思わず笑ってしまった。


「まぁな…

 それで、だ。あいつは怪しい。」

「まさか、強欲が国のシシャですか…?

 人を疑うのは、あまり…」

私は気が引けた。

確かに、強欲の人は表情が良く見えなかったけど、シシャの人はみんなそうだったし(一部を除いて)

単に表情が硬いだけだと思う。


「疑ってかかるのが俺の仕事だ。

 だから、俺が常に傍に控える。」

「え…」

私は思わず眉が寄ってしまった。

人を疑って護衛してもらうなんて、シシャの方にも国にも失礼だと思う。

それに、そんなことの為に大貴の時間を取りたくない。


「けってーな!」

大貴は笑いながら私の頭を撫でて言った。

王様って、案外偉くないのかな…。




「王よ、シシャ様がお話したいと…」

庭で魔法の訓練をしていると、侍女の人がシシャを連れてやってきた。

大貴をチラリと見ると、頷いて了承してくれた。

とりあえずは、訓練中止だ。


「分かりました。

 下がっていいですよ」

私は侍女の人に微笑んで言った。

侍女の人は深々と頭を下げて城内へ戻って行った。

下がっていいよって言ったのは私だけど、シシャは戻れるのかな…。

帰りはお連れしよう。


『訓練中、申し訳ない。

 話す時(タイミング)が分からなかった。』

シシャの顔は相変わらず無表情だが、その言葉はとても丁寧だ。


『平気です。

 どうされましたか?』

『実は、陛下からの任とは関係なく

 もうひとつ、やらなければならない事がある。』

陛下からの任っていうのは、私を見定めることだったよね。

傲慢や怠惰のシシャさんは見定めるっていいながら観光して帰っていったけど、強欲の従者さんは用事があったみたいだね。


『なんでしょう?

 出来る限りは協力しますが』

『実は、強欲が国から一人出ていった者が』

亡命って言ったら良いのかな?

とにかく、強欲の国から嫉妬が国へ勝手に来てしまった人が居るらしい。


『その者は、嫉妬の王を暗殺するつもりなのではと』

『暗殺ですか…』

それはまた、物騒な。

大貴の言っていたことも強ち間違いでもなかった。

結局この人ではなかった訳だけど。


『確かな情報ではありません。

 我々はその者を殺し次第、帰ります』

こ、殺す…?!

かなり可哀想だ。

国から出ていっただけで殺されるなんて。

確かに、許可なく出ていくのは日本でも罰せられるけど、殺すなんて…。


『それ、私も協力します』

『我々だけで平気です。

 陛下は気を付けて。』

シシャはそういい残すと、城へ戻っていった。

一人で大丈夫なのかな…。

ああ、そうじゃなくて、その逃げた人を私が先に見つけよう。

殺すなんていくらなんでも可哀想だ。

シシャが許さないかもしれないけど、それは見つけてからの話!


「という訳で大貴さん。

 強欲が国から逃げた人を探しましょう。」

「どういうわけだ!?」

説明がちょっと面倒だ。

あ、そうだ。

本当に命を狙われてるなら勝手に襲ってくるかも。


「大貴さん。お花を摘みに行ってきます。」

「お、おおう?」

つまり、トイレに行ってきます。

そこに関してだけはついてこれないからね。

当たり前だけど。

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