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お芋ほり、激熱報告を受ける

10~11月、子どもたちは秋を満喫する時期。中でも芋ほりは、お土産もできる一大イベント!そのイベントがあった日。預かりに新たな子が飛び込んできた。

 こんにちは、みほしです。

 ちょっと時期がずれたけど、お芋ほり報告を受けたときの思い出をひとつ見て頂きたいと思います!


 10~11月は、行事がないようで結構楽しめる。暑すぎず寒すぎないため、外遊びが捗る時期なのだ。どんぐり拾いをしたり、美的センス抜群の子は落ち葉アートなんてものを作ってたこともある。すごい。私は美術2の成績。微笑むしかない。


 そんな秋深まるある日、子どもたちがそれぞれビニール袋を持って部屋に入ってきた。

「せんせーこんにちは!」

「はい、こんにちは。いいもの持ってそうですね~」

子どもたちの顔がいい感じに綻んでいる。これは芋ほりに行ったなと、すぐ想像がついた。だって大人だもんっ!

「今日お芋ほり行って、さといも掘ってきた」

「さといも……?」

さつまいもじゃなくて? と思い、ちょっと失礼と私は子どもたちのビニール袋を除かせていただいた。

 立派なさつまいもがゴロゴロ入っている。

「いいお芋さんやね~。もしかして、さつまいもかもしれんね」

それとなく、里芋じゃなくてさつまいもかもと提案。

「さつまいもやん。どうしたんせんせー」

なに言ってんだよみほしって顔で見られてしまった。子どもってこういうもんである。非常に素晴らしい。面白い。



 私が担当していた預かりは、当日飛び込みや日預かりもやっていた。お試しで数日間利用し、子どもが楽しそうだったら申請をするという家庭も多かったように思う。

 お芋ほりをした日、日預かりで何人か名簿に名前が入っていた。知ってる子もいるし、今から初めて顔を合わせる子もいる。


 初めての子は、静かだったり泣いたりが結構多い。ママがいい、おうちに帰りたいっていう感じで泣いてしまう。


 秋になると、預かるこの人数が増え始める。4月から保護者が職場復帰する家庭は、この時期からお子さんを預けることが増え始め、年度が切り替わったタイミングで預かり組入りが決まることが多い。新規の子もそうかな、なんて一緒にやってる先生と話していた矢先。

「ちょっと先生たち~」

主任登場。我、緊張が走る也。手招きされ、主任から情報が開示される。

「今日初めての子、昼を折り返して以降ずっと泣いてました。預かりが嫌みたいです。過度に刺激せず、泣かないよう接してくださいね」

預かりが嫌って話すときだけしっかり目を合わせてくるあたり、はやり主任はアレだなと思った。強いなって。うん。


 芋ほりもしたし機嫌よく来てほしいと願っていたが、どうにもことは上手く運ばなかったらしい。

 ギャン泣き状態で先生から連れられ、部屋に置き去りにされる形で新規の子が入場。女の子だった。名前だけ見ると性別は分からない。


 まず先輩から。こういうのは私が最初に行くのはよくない。ほかの子の準備を手伝いながら、こっそり様子を伺う。

「いらっしゃい。預かりの先生です。あ! 今日はお芋ほりに行ったんだね!」

声をかけた途端、火が吹いたように泣き叫び始めてしまう。これは困ったぞと、先輩とソロッと目を合わせた。


 泣き止んだタイミングで声をかけようかと思いきや、その子はものすごい勢いで芋ほりの話を開始。

「せんせー聞いてお芋ほり行ってサツマイモ掘ってきてスコップで掘ってミミズが居て根っこがあってお芋にスコップが刺さって」

息をしてくれ。そして落ち着け。口を挟むと泣くので、聞くほかない。選挙演説でも聞いてるかのような気持ちで、芋ほりの思い出を聞く。


 主任からの情報はなかったものの、後になって担任から多動の女の子であることが告げられた。ADHDの子は、ほかの子がたまに預かりで入ることがある。


 この子は本当によく喋る。そしてじっとしてない。喋りながら積み木をして、隣の子に求められてもないティッシュ配りを始め、積み木を踏んで泣きながら喋る。喋り辞めることは全くなく、1時間くらい芋ほりの激熱報告を受けた。

「それでねお芋一杯掘ってきたけどせんせーは○○ちゃんが掘ってきたお芋見たい?」

問いかけはすぐ拾う。じゃないと会話のターンがこっちに来ない。

「見せてくれるの? わー嬉しいな」

先輩は、メインでほかの子たちに指示を出す役目に回っている。今日は私がメインの日だったが、この子が全く離れずで、役目を交代してもらった。


 彼女が見せてくれたお芋は、かなり大きなサイズのさつまいも。

「おー。いいお芋さんやね。なににして食べるんかな」

「焼き芋かふかし芋かスイートポテトかケーキにして食べたいけどママがいいよって言うかわからないからせんせーからお話ししてね!」

「え、ん?……?」

早口すぎてよくわからない。「ごめん、もうちょいゆっくり」という私の声をさえぎって、「○○ちゃんのおうちは赤ちゃんが生まれるからねー」と、今度は赤ちゃん情報を熱弁。


 その日、早めにお母さんがお迎えに来た。赤ちゃんが生まれると言っていただけあって、おなかはぽんぽこりん。

 お母さんに今日のことを熱弁し、お母さんはそれを聞いて頷きながら、担任と話をするという構図。聖徳太子かと思った。私はどこの声をどの程度聞いていいのかわからず、笑顔でそっとパニクった。


「あーせんせー名前なにぃ?」

帰り際になって私に名前があることに気づいたらしい。

「みほしせんせーです」

「ちがう下の名前」

「ゆうせいです……?」

そこまで答えると、それはもう嬉しそうに彼女は微笑んだ。


 靴を履き、お母さんの隣に立ち、こっちを見上げる。普通ここで「せんせーさようなら」となるので、その流れを連想していた。

「じゃあねーゆうせい! ○○ちゃん、預かりの子になってあげるからね! 明日から毎日来るねばいばーいゆうせい!!!」

声でっけぇって。恋人かと思ったわ。お母さんがものすごい勢いで謝ってきてしまい、「いえいえそんな大丈夫です」と声をかけている間に、彼女は砂場の砂を落ち葉のようにかき集めて、宙に投げようとしている。

「お砂投げたら目に入って痛いからねー!」

私は暗に、砂を投げるでないと彼女を制止。

「おめめ閉じてるから大丈夫ー!」

そうじゃねぇって答えが彼女から返ってきた。


 子どもたちが全員帰って、部屋の掃除をする。

「すごい子でしたね」

「ほ、ほんとね」

先輩と話していた矢先、職員室から呼び出し。私である。


 叱られるぞと闇雲に思い、ド緊張しながら職員室へ。

「さっきの子から電話です」

主任から受話器を渡され、重い空気の職員室でそれを手に取り耳にあてた。

「はい、みほしです」

「ゆうせいお芋は焼き芋にすることになったからね!主任先生に代わって!!」

すごい馬力だった。


 当時私をいじめていた先生からすぐに呼ばれ、職員室内の重力が100トンになった。

「なに言われたの」

「今日掘ったさつまいもを焼き芋にすると報告を受けました。そのほかはなにも話していません」

 今思えばわけのわからん詰めである。


 激熱のお芋ほり報告の翌日から、本当に彼女は毎日預かりに来始め、あっという間に預かり組のいつメンに仲間入りした。


ちなみにこの子、とてもパワフルな上に物知りさん。ほかの子との会話も、そのうち紹介していけるといいなと思ってます!

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