04:あの御方のためという免罪符とYの檻
男系男子派を名乗る人達が保守を自称し、テレビで高らかに男絶対な伝統を語る姿や、支持者がそれを肯定する姿に、言いようのない苛立ちを覚えていた。
(どいつもこいつも、女性の生き方を否定するマタハラ思考なうえブリーダーみたいな思考の持ち主だな。時ノ御祢殿下を、神話の…そう、女神が閉じこもった洞窟…天岩戸に閉じ込めようとしているように見える…。男系男子派であること、今上陛下ご一家を敬愛すること、この国の精神レベルを保つこと、は、やっぱり両立しないんじゃ…。そう、女神が閉じこもった理由が世界の穢れ…あいつらこそ穢れなんじゃないの…)
男系男子派の存在そのものが、帝主御一家への侮辱であると直感的に感じていた。
彼らの主張はおかしいのだと、漠然と理解している。
しかし、彼らは権力と歴史的知識と知名度を兼ね備え、それに群がる多くの信者を従えている。
まずは男系男子派の思考パターンを分析し、彼らがどのような論理で攻撃してくるかを予測できるようにしなくてはならない。
彼らの手札を知らなければ、反撃は出来ないのだ。
《宿リ子さまが帝主になったら、ご本人が可哀想だ。重圧に耐えられないだろう》
《そう。可哀想。煌族として似多門赤十字社で働かれているのに、帝主になったら職を離れ、自由もキャリアも奪われる》
《宿リ子様は優秀なんだからどこでも活躍できるから、大昔から血が繋がっててそれが続いていけばそれでいいってだけの存在にするのは気の毒》
(可哀想…??宿リ子様が、ご自身で帝主になりたいとお考えになってたとしたら?)
それらの書き込みに怒りを感じていると。
(怒っているのかね)
「声様はどう思いますか?」
声の主が労る様に、
(…ふむ。これらの声は優しさに見える仮面をつけているようだ。君は本人が可哀想だ、と言う前に本人が何を望んでいるのか、を知ってから発言するべきだろう、と…考えているんだね)
「そうですよ!時ノ御祢殿下が、本当に何を望まれるのかには無関心で、印象操作に使ってるって感じます。帝主という立場が、そんなにも可哀想なものだというなら、なぜ男系男子には継がせようとするのか。男子であれば誰でも可哀想な立場に耐えられるのかって話です!」
《煌位継承者は別に頭が良いとか品格があるとかどうでもいい》
《男の煌族なら旧御祢家でも誰でもいい》
《別に俺たちには関係ないじゃん》
《帝主は俺たちが決めるもんじゃないんでしょ?》
(これは…私でも分かる…。男系男子派にとっては体が男であることが最重要の象徴条件だから、男なら誰でも我が国の象徴になれる。煌族の血が一滴でも入っていれば十分、という考え方だ。
そして無関心層は無関心過ぎて、象徴の意味を理解出来ていない…。
煌族だけでなく政治家にすら、国民との信頼関係を築く上で、知性、品格、公的な対応力、自国他国の歴史・文化を理解する力、は極めて重要とされている…。
そうした資質を軽んじる人が大多数なら…と言うか、それで今の我が国の惨状があるのでは…。
だって、外国人からこの国を守った先人達を裏切って外国人入れまくって利用したり、反似多聞国人と組んだとされる議員どもや、それに便乗する国民のせいじゃ…?って、この調子じゃそれもまず理解出来ないか…。
あぁ、やだな…この国がどんどん衰えて、内からも外からも侵食されていくのも当然だ、とさえ思ってしまう…。こういう所で…この国を悪化させる全てが繋がっている…)
怒りとも呆れともつかない感情が膨らんで、声様に話しかける。
「この国の歴史なんて、関係ないから口出さないって…。
けれど、帝主という存在とその歴史は、似多門人の精神的アイデンティティに深く根ざしているのは、私でも知っています。
反似多門国が、この国の歴史を悪く捏造することには、皆怒り狂うのに…。
この国の象徴の事は、この国の土台の一つで…この国の根幹に関わる問題なのに…見て見ぬふりができるなんて…。
それって、ただ思考を放棄して、他人任せにしてるだけじゃないですか。 無関心じゃなくて、思考停止の無責任に感じます。流されて、支配される側に甘んじる覚悟があるってことなんですかね!」
(そうだね。決めない、ことで…代わりに誰かが勝手に決めていくのは確かだよ。決めない自由には、考えないまま支配される可能性もついてくる)
「その通りです声様!その無関心の結果をあとから批判する資格、ありますか?私は無いと思います!」
自分には関係ない、と切り捨てるその態度にどうしようもない苛立ちを募らせる。
今の帝后陛下、当時の帝妃殿下が理不尽に猛攻撃された時に、私は何もしなかった。
だからこそ無関心の壁に阻まれても諦めるわけにはいかないし、男系男子派やそれ以外の他人任せにする人々との果てしない戦いになるのは分かり切ったこと。
《別に帝主なんて、いなくても困らない。保守や象徴なんて時代遅れ》
《帝主って税金の無駄。それに歴史なんて生活に関係ない》
《帝主崇拝信者ってカルトで気持ち悪い。カルトたちのお金で、法律の外で勝手にやればいいよな》
先人達が積み上げてきたものと現代人との、精神的な断絶を見てしまった気がして、虚しさが込み上げる。
(ずっと問題になっている移民問題…。
そう、例えば、自国に害を及ぼす害国人を排除するとか。
それだけで保守なのかね。
そんなの、どの国の人も普通にやってると思うんだけどね。
それだけなら、たまたま生まれた地が似多門だった人、ってだけでは。
自分が生まれ育つ地の歴史や文化への興味持って理解する事が、その国らしさの精神に繋がってくって、なんかで聞いたけどな…。
そんで保守ってのは、先祖代々受け継がれてきたその国独自の価値、文化、歴史、精神、制度を現代に適応させながら次の世代へ責任を持って継承→発展させていく姿勢、も含まれるらしい。
男系男子派は明らかに違うだろ。
で、似多門独自…というか、これは存在する全ての国に独自があるけどさ…の、長い深い歴史や、世界唯一の存在である帝主をどうでもいいと言ってしまう、似多門に生まれたから、似多門語使ってるだけの人達の精神は、果たして何人なのか…)
それから、ごく僅かだが、良識ある男系男子派が存在した。
《男系男子派だけど、男系の時ノ御祢殿下に、帝主の資格が無いのはおかしいと思ってるよ》
《自分は男系男子派だけど、この国は民主主義だからねぇ…。
女性女系を皆が望むなら、そっち優先が普通だよ》
《男系男子派ではあるけど、それを優先し過ぎると言うか、拘り過ぎるのは、なーんか違う気がすると言うか…》
この問題が、単純な善悪二元論ではないことを教えてくれた。
(このままではダメだ…)
一人の限界を感じていた。
あらゆる意味で素人である自分が、彼らの強固な壁を崩すことは難しい。
そんな中、ある動画コメント欄で一人の投稿者の言葉に目が釘付けになった。
《時ノ御祢帝主派の皆さん。男系男子派と戦う事を放棄してはいけません。
口先では今上帝主御一家に敬意を持っている、などと言いながら、御一家が貶められているのを平気で無視したり、害を及ぼしている彼らがのさばると、御一家が今以上の危険に晒される可能性が高くなるのです。
私たちが声を上げ続けなければならないのです!》
その言葉は、心を強く揺さぶった。
迷わずその投稿者に、メッセージを送った。
《(この人は自分と同じ思いを…ううん、ずっと先を見据えてる…)初めまして。私も同じ思いです。
ですが、一人では限界を感じています。どうすればいいのでしょうか》
数分後、返信が届いた。
《はじめまして!お返事ありがとうございます。
実は、私と同じように考えている方が他にもいらっしゃるのではないかと思っていたんです。
すごく嬉しいです!》
送り主は、昼田と名乗った。
返信は、想像以上に喜びが溢れていた。
昼田氏も仲間をずっと探していたのだ。
そこから、二人の共同作業が始まった。
昼田氏は、男系男子派が主張の根拠として利用する、煌室に関係した女性蔑視的な動画や、科学的なニュースの動画URLを次々と教えてくれた。
コメント欄でも、昼田氏は淡々と、しかし的確に反論していた。
男系男子派はまともに返せず、ただ感情的な言葉を投げ返すだけ。
昼田氏から提供される情報に触れるたび、彼らの主張がいかに薄っぺらいものかを再認識していった。
しかし、昼田氏との対話が進むにつれて、微妙な立場の違いを感じ始めた。
氏は、男系男子派を批判する一方で、今上帝主の弟御祢である某系御祢家に、特に強い不信感を抱いており、体調を理由に引退した上帝主夫妻にも、不信感を抱いているようだった。
具体的には、以下の様なもの。
《たとえば、某系御祢家改築費についてです。なぜか本家の数倍。数十億。
一説にはもう百億近くとか。何を建ててるんでしょうね。
┊
震災のあと、某系御祢家の中に被災者に寄り添うって言いながら、数千万の装飾品を新調した方もいました。
寄り添うって、そういう意味でしたっけ。
┊
某系御祢家の他の方も、一度の旅行に数千万かけてるのに、服だけお下がりってアピールしてる。節約の演出が豪華すぎて、逆に予算感覚が心配になります。占拠してるとされる国有財産も気になりますし…。
┊
それでいて、傍系御祢自身が以前、兄である今上陛下が即位した後の、
大嘗祭(=新しい帝主が即位した後に一度だけ行う、最も重要な煌室祭祀です。新穀(=その年の新米)を神々に供え、自らも食して、国家と国民の安寧・五穀豊穣を祈る儀式です。)
は、宗教色が強いから云々、身の丈にあった形で内廷会計(=帝主家の私費)で行うべき、と、大嘗祭を国費(=宮廷費)で行うことに疑義を示された経緯があります。
┊
伝統ではない上帝夫妻の火葬もですが、墓に数百億以上とか、なんなんでしょうね…。
この夫妻が、時ノ御祢という、帝主の直系長子にふさわしい格式の高さを持つ
御祢号(=煌族の固有称号、正式な称号です。)
を、わざとメディアなど周囲に使わせないようにしている、という噂があります。
時ノ御祢殿下の身分を、低く見せるための印象操作です。
でも某系御祢や某系御祢妃は逆に、御祢号ばかりです。
帝后陛下に対しても、正式な陛下を付けず、名前に様づけで呼ぶケースさえあります。
┊
125代帝后が、時ノ御祢殿下に対して、16歳になったら皇室を出ていけ、といった趣旨の発言をした、という噂もあります。
┊
他にも噂はあります。たとえば、天下り先疑惑です。
引退され、公務が無いはずの125代帝夫妻の世話係が、数十人もいる、という話です。
124代(照環)帝がお亡くなりになられた後、香淳帝后(=電話で親族と話すのが好きな方で、特に晩年は、電話が数少ない楽しみだったそうですよ。)の世話係は、10人程度だったそうです。
この数字の差は、どう考えればいいんでしょうね。
┊
肝心の、私が本格的に煌室に興味を持ったきっかけは、現在の帝后陛下の、生々しい異例の流産記者会見あたりからです。
流産という、極めて個人的かつ痛ましい出来事なのに、何故こんな酷い会見をさせるのかと思いました。
┊
他にも、ご公務が過密疑惑からの、海外公務が禁止疑惑からの、お茶会で(当時は煌太子妃だった)帝后陛下がスリッパで参加された際の草履隠し疑惑、みたいな話まで出て来てましたし。
┊
で、五年後に適応障害を公表された後、後継問題って言えばいいのかな。
帝后陛下への体調への懸念や、行事の日程や、警備の都合や、当時のメディアの切り取り方なんかが原因…とは思うものの、男子が必要ではないかって、異様な空気に私は感じました。
その流れで、何故か某系御祢妃に男児を、という空気になってて、何故か本人は自信満々であるように見えました。
┊
その後は、科学的に判定が難しい時期に男児と発表された後、産み分け疑惑まで囁かれるようになった某系御祢妃だけでなく、一家全員に、何故…と思う事が増えていきました。》
(これ…かつて聞いた話が入ってる…。私が、無関心だった頃に…家族が話してたやつだ…。…胸、胸が痛いよ…。…帝后陛下…)
昼田氏は、反男系男子派の自分と同じではなく、反某系御祢家派であり、125代帝夫妻にも相当な不信感を持っていたのだ。
立場は同じようで、少し違っていた。
とは言え、昼田氏という強力な協力者を得て安心出来たのも事実だ。
《私は歴史に詳しくは無いですが、問題も多いけど長い歴史があって比較的安全なこの国が大好きですよ。
完璧な国なんて無いと思うけど、完璧な国に近づける努力はしないと。
だからこそ、こうした膿を見過ごすことができないんです》
その言葉は胸に、深く響いた。
昼田氏が抱える不信感と疑惑は、男系男子派に抱いていた嫌悪感とはまた違った種類の重いものだった。
(でも、このままではいけない…)
自分の知識がまだまだ足りないことを痛感した。
この国の歴史を誰よりも深く誰よりも正確に理解し、男系男子派に二度と反論の機会を与えないほどの強靭な論理を構築しなくては。
もっと深い知識が必要だ。
「レベルを上げなければ」
呟きながら何気なく、Y染色体に関する、主に男系男子派等の言動をまとめたメモを見つめる。
《煌位継承は男系男子でなければならない。
なぜなら、Y染色体は父から息子へと受け継がれる唯一の遺伝的要素であり、女系になるとこのY染色体が途絶えてしまう。これは生物学的な事実だ》
《女系継承を認める主張は感情論に過ぎない。
科学的事実に基づいていない。時ノ御祢殿下の御子にY染色体が受け継がれることは不可能であり、それでは煌統の継続とは言えない》
《煌統は Y 染色体によって護られてきたんだ!》
《男系男子派は、某系御祢家の出自の疑惑などに対して、
Y染色体の継承=煌統の正統性というのは、あくまで比喩的な説明であり、遺伝学的に正統性を保証するものでは無い!なーんて言ってるけどさぁ。
遺伝学者や脳科学者の中には、Y染色体を持ち出すなら、生殖医療や遺伝子操作も認めるのか?
と、逆に批判する声もあるのにねぇ。科学的事実(Y染色体は父から息子に伝わる)と、政治的主張(だから男系が正しい)を混同しているのが男系男子派の特徴だよねぇ》
昼田氏に何気なく、男系男子派が掲げまくっているY染色体について聞いてみた。
やはりと言うか、氏の専門は生物学で、特に遺伝子分野に詳しいそうで説明してくれた。
《Y染色体って変異が起こりますし、壊れやすいの知ってます?
・LOY/loss of Y
(=男性の細胞から Y染色体が消失する現象の総称です。)
・mLOY/mosaic loss of Y
(=体内の細胞の一部だけでY染色体が失われるモザイク状のLOYです。
加齢や喫煙などの影響で、男性の血液細胞の一部からY染色体が失われる現象です。ただし、生殖細胞(精子)のY染色体が失われることを意味するわけではありません。)
つまり、Y染色体は不変の存在では無いんです。まず、
┊
・DSD/Differences (または Disorders) of Sex Development
=性発達疾患、または、性差の多様性、の意味で、染色体、性腺(精巣・卵巣)、外性器、などの性の発達が、一般的なパターンとは異なる状態の総称です。
DSDにはさまざまな種類があり、その中には、Y染色体を持ちながら女性として生まれ育つケースもあります。
以下のAISやCAISもその一つです。
┊
・AIS/Androgen Insensitivity Syndrome
(=アンドロゲン不応症、と言われております。遺伝的には多くが
46,XY(=一般的な男性型染色体という意味です。46=染色体が全部で46本(23対)あること。XY=男性に多く見られる性染色体(X染色体1本とY染色体1本)を表します。)
ですが、男性ホルモン(=アンドロゲン)を受け取る受容体が十分に働かないため、身体が男性ホルモンに反応しにくい状態です。
そのため、46,XYでも女性として発達することがあるんですよ。)
⌁
・CAIS/Complete Androgen Insensitivity Syndrome
(=完全型アンドロゲン不応症、と言われております。AISの中でも、男性ホルモンに殆ど、もしくは、全く反応しないタイプです。
染色体は46,XY(=一般的な男性型染色体)ですが、外見上は女性として発達し、多くの場合、出生時から女性として育てられ、本人の性自認も女性であることが少なくありません。
一方で、子宮や卵巣はなく、精巣は体内に存在することが一般的です。)
⌁
スポーツ界でも、女性選手の性別確認のための検査が行われた際に、
染色体(Y染色体の有無)
DSD(性発達の状態)
ホルモン作用など、
複数の要素をもとに、出場資格を巡る議論が起きた事例があるんですよ。
┊
このように、Y染色体を持っていても女性として生まれ育つケースも実在します。
男系だから何千年も全く同じものが受け継がれているなんて、現代の遺伝の常識から外れてますよ。
》
《(ひえー…DSDっていう多様な発達があって…Y染色体があるから絶対に男性!というわけではない、って事か…)そう言えば…そういう科学的?生物学的?な話、あの人たちしませんよね。
》
《都合が悪いからね。
でも恐れずに言い返せばいい。私はそうしているから》
小さく頷きながらも、
《言い返そうにも、どう言い返せばいいのでしょうか…。
》
《確かにY染色体は、一般的には男性に多く見られる染色体で、性決定に関わったり精子の形成にも関わっています(=この、性染色体が性決定に関わる事を発見した研究者の一人が、1メリカの女性科学者です。)し、父親から息子へ受け継がれるので、父系を追跡する手掛かりになるのは事実ですけども。
男系男子派のように、千年二千年単位の我が国の歴史や伝統を、近代遺伝学によって明らかにされたY染色体を振りかざして誇る考え方は、まともとは言えないと思います。
人間の遺伝情報そのものは、もっと複雑なんです。
┊
・23対の染色体(=人間の染色体の総数は46本で、22対の常染色体と、1対の性染色体(=XXまたはXY)で、Y染色体はこの中の一部にすぎないのです。)
・22対の常染色体(=遺伝情報の大部分で、父母から半分ずつ受け継ぐのが大原則です。個体の形質や知性の大部分は、この常染色体によって決まるんですよ。ただし、知性についても遺伝要因はありますが、環境要因の影響も非常に大きいことは、お忘れなく。)
によって構成されています。
┊
男系男子派は遺伝情報全体から見れば、ごく一部にすぎないY染色体に、アッフォの如く固執しています。
男系の証拠などと主張し、女性にはY染色体がないから女系継承になるとこの血筋が途切れてしまう、などと愚かしく考えています。
あの人達の頭は科学という広大な海ではなく、乾きかけの小さな水たまりですよ》
吹き出しそうになる。
《そうなんですね…。(あの人達、血統の神秘性とか純粋性とかよく言ってるよなぁ…)
》
《私たちの血筋はY染色体だけでは無いです。
母方から受け継がれるX染色体や、ミトコンドリアDNA、父母双方から半分ずつ受け継がれる核DNA(=細胞の核の中にあるDNA)、
その中に含まれる22対の常染色体など、多くの要素で構成されています。
なのに、Y染色体だけを根拠とするのは、あまりにも不十分なんです。
女性帝主の場合でも、X染色体は男女どちらにも継承され続けます。
神武帝主の遺伝子を重視するなら、X染色体を無視するのはおかしいんです。
》
《なるほど。ありがとうございます。(声様、昼田氏の声はどう…?)
》
(うむ。たった一系統の遺伝子に、永遠の価値を見出すなどとは、科学とは相容れない考え方だ…と、強い信念を持っているね。科学は生命を、常に変化し続けるものとして捉えている、と考えている)
《もっと言えば煌室も似多門人の一部なんだから、その血筋も当然、この国の先住民である錠紋人系(=D1bなど)と、その後大陸から渡来した夜宵人系(=O系統など)の混ざったものだと考えるのが自然です。
純粋な錠紋人や純粋な夜宵人と言うのはまず存在しません。
》
《あ…すみません、D1bやO系統って何でしょうか?
》
《こちらこそすみません。
似多門人男性の、 Y染色体ハプログループ(=父系の遺伝的系統を分類したものです。) は、
錠紋系(=D1b)、
夜宵系(=O系統など)
に分けられる、と言われます。
》
《説明Thanks。
》
《いえいえ。これは遺伝子学者の間で
・混血説(=二重構造モデル、三重構造モデル)と呼ばれていて、
現代の似多門人は、俗に言う
・渡来人(=夜宵時代以降に、龍国大陸や弔浅半島から渡ってきた大陸系東1ジア人とその子孫)と錠紋人との混血によって形成された、と見られています。
┊
あと、私は錠紋人の生活については詳しく無いですが、錠紋時代の社会では母系的な要素が強めと言いますか、母親側のつながりを重視する社会だった可能性があるようです。
少なくとも男系男子派が言うような、父系だけを絶対視する考えの根拠は見当たらないようです。
》
《(やっぱ遺伝子学方面の人達は、DNAのデータとかルーツに強いなぁ…)そうなんですね!
とりあえず歴史や政治の話と、遺伝子の事実はちゃんと分けて考えなきゃいけないって事ですね。
お陰様で、男系男子派がよく言う純血な血筋が幻想だったんだと分かりました。
》
《ええ。
何度も言いますが、私たちの遺伝子は一つの系統だけでできているわけじゃありません。
なのに男系男子派の中には、誰も調べていないはずの煌室のY染色体は錠紋系(=D1b)だって、断言する人がいる。
まるで、煌室が似多門固有の純血だ、と信じたがってるように見えます。
でもこれだって、似多門の一般国民の中にごく普通に存在していて、かなりの似多門人男性が錠紋系(=D1b)を持っています。
┊
しかし母系の遺伝子(=ミトコンドリアDNA/mtDNA)は、男女問わず母親から受け継がれるものです。
・ミトコンドリア・イブという概念
(=現代人のmtDNAをたどると、アフリカにいた女性に行き着く、という概念です。
ただし、唯一の女性が存在したと言う意味ではありませんし、特定の女性以外の女性の遺伝情報がすべて消えたという意味でもありませんよ。
当時も当然ながら、多数の女性の系統が存在していましたからね。
あくまで、現代まで受け継がれている母系の遺伝情報(mtDNA)をさかのぼると、共通して行き着く祖先女性がいる、という意味です。)
を、聞いた事はないですか。
遺伝学上の母系・父系と、男系男子派の言う女系・男系は別の概念なのですが、
女系帝主を支持する人達の中には、この母系の継承を象徴的な意味で大切にしている方も沢山いるようで、そっちの方が、私は自然に感じますよ。》
昼田氏の言葉を読み返しながら、
《勉強になります!(核DNAこそ父母双方から受け継ぐもの…Y染色体は父から息子へ伝わる父系追跡の手掛かりになるし…ミトコンドリアDNAは母から子へ伝わる母系追跡の手掛かりになる…。ただ、これはあくまで遺伝の話で…人間社会そのものが男系父系社会であるとか、女系母系社会であるとか、簡単に決められるわけではない…ってことか…。完全に理解するには時間かかりそー…。あ、声様、昼田氏が男系男子派に不快感持ってるのは、信じて良さそうですね。それに、煌位継承は遺伝子だけでは無いのがはっきりしました。祭祀や文化といった要素によっても成り立っているって何となく分かりました。)
》
(うむ。この人物は、男系継承が科学や客観的事実に基づいたものではなく、特定の思想に基づいた願望に過ぎないと考えている…。科学的根拠は一切無いのに、DNA検査も存在しなかった時代の系譜を、神話レベルで語ってるだけ。彼らの主張は、まるで過去の遺物だ、ともね。その遺物に固執する人々がいる限り、その問題は終わらないのだろう、とも考えているようだよ)
昼田氏の話はそこから見えない血の痕跡を可視化する装置について、に続いて行く。
それはY染色体の変異を追跡する技術で、人類のルーツを辿るために使われているという。
氏は、その技術が骨髄移植の定着状況を確認するなど、医療の現場で役立っていることを説明した。
まるで、異世界の話を聞いているかのようだった。
昼田氏の話は、自分がこれまで持っていた血筋という概念を根底から揺さぶった。
[※余談※]
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Identification of the remains of King Richard III
(本当にリチャード3世の遺骨なのか)
https://www.researchgate.net/publication/269099701_Identification_of_the_remains_of_King_Richard_III
古代王権は男系・女系の両方が機能する双系であったとの歴史学説と高市早苗総理大臣の皇位継承についての考え方に関する質問主意書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a219178.htm
・質問三の文中、
>Y染色体は(中略)何代かを経る中で原初のものは消失する場合が多い
と、記載あり。
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「平成の天皇家」と「令和の天皇家」 二つの家族はなぜ衝突したのか (講談社+α新書 902-1C)
https://amzn.asia/d/045Q1VAM
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平成皇室をめぐる言論の暗部: 廃太子論から男系男子継承論まで、30年の検証記録
https://amzn.asia/d/0frLLaAB
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