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モノローグ ~ひゃく以上ぶんのいち~

ある日、一人の勇者とその仲間たちが世界の支配をもくろむ魔王軍と戦い、幾多もの出会いや別れを繰り返し、壮絶な激闘を繰り広げ魔王を退けることに成功し世界には平穏な日々がもたらされた。


勇者は一度剣を持てば波をも切り裂く剣技と岩盤をも砕く力で他を圧倒し、一度魔法を使えば天は裂け地は啼き崩れるかのごとく威力をもたらす。まさに『勇者』と呼ぶにふさわしい人々の希望の象徴であった。


そんな勇者を王国は第二王女の伴侶として迎え厚くもてなし国の重役として重用し、勇者もその恩義に応え王国に忠誠を誓いながら平和を守るために尽力するのであった。


これは今や王国におけるほとんど全ての国民が知るところである有名な話である。


しかしここには一つの追記が存在する。--












「タツミ様、そのような格好で式に出られては若様の威厳に関わりますぞ!」


部屋に入るなり俺の服に文句を付けてくるこの老輩の紳士の名はグレース・ホスピタリティ。

王国の副侍従長という立場であり、それなりに偉い人である。


「聞いておられますかな?タツミ様。」


問われたタツミは こちらの解答を聞く前から服を脱がせ、式典用の服を着せようとしてくるグレースを尻目に答える。


「その式典用の服すっげぇ蒸れるから好きじゃないんだよグレース。それに・・・」


タツミは目の前の光輝く装飾が絢爛と存在感を示している化粧台の上にある一枚の紙に目を落としながら呟く。


「こんなに人数がいて今更威厳もクソもないだろ。」


紙には今日の式典、成人の儀を迎える人間の名前がリスト化されており、王国の有力な貴族の子息や街の有力者の跡継ぎ等の名前がページ一杯にずらりと並んでいる。

おそらく今回の参加者の数は全部で300人は下らないであろう。

というのがリストを見たタツミの感想。

そして、そのリストの中には『タツミ・ウィルフレッド』を含めた『ウィルフレッド』を家名に持つ人物の名が5名記されていた。


「こんなに人数がいるから、でございますぞタツミ様。」


グレースはタツミを諫めつつテキパキと手を止めずに式典用の服の複雑な着衣を施していく。


今年の『ウィルフレッド』の家名を持つ成人の儀への出席者は4人。

去年は5人で一昨年は6人、何年か前には15人なんて年もあったらしい。


「タツミ様の兄様達も皆、この成人の儀において自分の派閥を作り、先々の困難を乗り越えておられるのですから。」






--魔王を退けた勇者の名はアズリード・ウィルフレッド。


王国最強の勇者にして、人類最大の戦力であり、


『英雄色を好む』

この言葉に相応しい人間であった彼は


タツミ・ウィルフレッドの父親であり、数多の女性を愛人として抱え、100人を超える大勢の子供の父親なのであった。




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