[第88話] フクロウとカラス
鎮守の森では、いよいよ最後の試合が始まろうとしていた。対戦するのはフクロウとカラスだ。とはいえ、双方とも、ただのフクロウとカラスではない。フクロウはフクロウの中に君臨するトップ中のトップであり、対するカラスも代表格のカラスだった。スポーツではなく喉自慢だから、審判の判定に全羽、不服を言わず、恨みっこなし・・というのがルールだった。審判は全ての鳥から選出されたコハクチョウが務めていた。二匹は予選リーグを勝ち進み、決勝リーグの決勝まで勝ち残った。開始は、双方の都合がいい夕方に設定された。カラスは? といえば夜に弱く、フクロウは真逆に昼間が苦手というのがその理由だった。苦手というのは就寝タイムだということを示す。
『では、カラスさん、どうぞ…』
総合司会のコハクチョウがサッ! と舞い下りて、そう言った。その言葉に促され、カラスは♪カカア~カアカア~~♪と美声を披露した。審査するコハクチョウ数羽は池の水辺を優雅に旋回しながら耳を澄ました。約3分が経過し、歌は終った。
「はい、お見事でした。では、フクロウさんどうぞ…」
フクロウは軽く羽根を羽ばたかせると、♪ホホウ~ホウホウ~♪と歌い始めた。そして、その歌も、やがて終わった。
「お二羽とも、ありがとうございました。では審査の間、私めがお粗末な喉を披露させていただきます」
総合司会のコハクチョウがそう言った。二羽は、どうでもいいのに…と、つまらなそうに思った。そんなことも知らず、総合司会のコハクチョウは高域の喉で一節唸った。無視する訳にもいかず、二匹は仕方なく聴いていた。いや、聴かされていた。そうして、その歌も終わった。すると、水辺から別のコハクチョウが飛んできて結果を伝えた。
「はい、なるほど…。では、結果を発表いたします!」
盛り上げるドラムの替わりに、係の鳥達が羽根を羽ばたかす音がした。
「双方とも甲乙つけがたく、この試合は歌い分けといたします」
歌い分けとは、人間の世界で言う引き分けである。鳥の世界ではよく、こんなケースがあった。鳥だけに、とりとめがない・・ということのようである。
THE END




