あとがき+捕捉+広報
この作品『呪縛の蝋』は、元々は大学生のとき、サークルの文芸誌に掲載するために書き下ろしたものです。
文芸誌自体は実現しなかったのですが、Webに一旦掲載してました。世間的にはそれが初出です。
それから、僕のやっているサークルの文芸誌『コトダマ』に掲載し、今回「小説家になろう」に投稿するために文章を加工(改行を増やしたり)したものです。
何という再利用感(笑)。それでも誤字脱字はあったのですから商業用の本の校正をしている方には頭が下がりますね。
でも読みやすいように、各章にタイトルをつけたのは今回が初めてです。
■お題について■
今回は、少々縛りがありまして、キーワードとして【お前も蝋人形にしてやろうか?(台詞)】【赤ペン先生】、そして条件として【男キャラ2名以上出すこと】というものがありました。
男キャラ2名というのが実はやおいねらいで、頭に「美形の」がつくらしかったのですが、一応若いころの赤羽教授と伊戸部礼二は美形という脳内設定があるので、まあ良しとします。
「お前も蝋人形にしてやろうか?」というデーモン小暮閣下の名台詞は赤羽教授が回想で出てきましたね。この台詞をそのまま利用して「蝋人形魔術」というこの小説の根幹を成すモノができたのですよ。
「赤ペン先生」の使い方はかなり秀逸だったと思います。前編だけ見ると、赤羽教授のあだ名というだけなのですが、後編の謎解きではこの言葉がかなり重要なヒントとなるのが分かるはずです。
色覚障害については、いろいろな症例があるそうですが、赤羽教授のパターンは創作ということでご理解ください。
■キャラについて■
いつもキャラクターについては地味になりがちなことを自覚していた僕は、この作品では少しキャラクターの造成に気を使いました。
本来主人公・千鶴からして特殊語尾使用。語尾を延ばすほにゃららしたキャラにしてみました。
そして微妙に便利に使わせてもらったヒロイン・雛子はいかにもトロそうな主人公にはツンツン(後に微妙に変化)して、真摯な赤羽教授にはデレデレするという設定にしたつもりなのですが、肝心の赤羽教授との絡みがなかなか成立せずに終わっちゃいました。(つーか、今見てみたら雛子がオジサマに話しかけてる場面、二つしかないよ!)
それでも千鶴とのからみでだんだん千鶴の見方が変わっていく過程は書いてる僕も楽しかったです。
ですが、今回光ったのは脇役ですな。
コードネーム『ガキ大将デカ』井上巡査、とか。
コードネーム『実は隠れ親バカ』三沢芳雄(雛子の父親)とか。
特に井上の出てくる場面は書いててとても楽しかったです。
■怪奇ミステリーというジャンルについて■
蝋人形というギミックが先にたったこともあり、いろいろ触発されるものがあって怪奇ミステリーに挑戦いたしました。
もどきでも一応ミステリーの形にしたつもりですが、なかなかストレスがたまりますね、これ。「言いたいんだけど、まだ言えない」みたいな(笑)。
でもあまり最後までわけの分からないまま引きずるのもアレなんで考察を主にやっていた中編では時々ヒントっぽい事実や、伏線も張ったりしましたし、千鶴たちが考察を述べる場面では、「どこまで書いたらいいのか」とか非常に気を使いながら書きました。
ま、短編ミステリーなんでちゃちいモノですが、とっておきだったのが、「なぜ伊戸部礼二はあのような犯行に至ったのか」「だれが伊戸部礼二の部屋の偽装工作を行ったのか」の2点ですね。
「失踪した六人の村娘の行方」に関しては、大体想像のついた方も多いんじゃないかと思います。
謎解きの場面、「やっと喋れる~!」と、私は気持ちよく書かせていただいたのですが、読者のみなさんはご理解いただけたでしょうか? それだけが心配です。
【その他参考文献】
「中村のきまぐれ法医学」
URL:http://www.kacho.ne.jp/hobby/legal-med.htm
「屍蝋(Wikipedia)」
URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E8%9D%8B
「一度見たら忘れられないミイラ・ロザリア・ロンバルド」
URL:http://www.nazoo.org/phenomena/rosalia.htm
■エピローグについて■
僕は今まで、どの作品にもキャラクターが作中で見せていた迷いに答えを出し、後日談等、明るい“これから”をにおわせるエピローグを必ずつけてきたのですが、今回はその前に片付いてしまったので、あえてあそこで終わらせていただきました。
かなり最終段階まで翌年4月に雛子が千鶴の大学に進学してきて、挨拶がてらに後日談を語る場面をプロットの中に入れていたのですが、何か書きたかったことが全部その前に持ってきてしまったために消滅してしまったのでした。
■ロザリア・ロンバルドについての捕捉■
本作で「最も美しい死蝋」として取り上げたロザリア・ロンバルド(写真下)ですが、執筆当時は本文に書かれたとおり、本当に遺体の保存方法は長年謎のままでした。
しかし最近の調査によって、一昨年の十二月にその方法が明らかにされたことが、ナショナルジオグラフィックの記事になっていました。
記事では、ホルマリンで防腐処理を行い、アルコールで遺体を乾燥させミイラ化させつつ、グリセリンで乾燥しすぎるのを防ぎます。そしてサルチル酸で腐敗菌の繁殖を防ぎ、最後に亜鉛酸で遺体を石のように硬化させた、とあります。
ロザリアの遺体が最も完璧に保存されているのは、最後の亜鉛酸によるところが大きいらしいですね。
ホルマリンは防腐処理においては、今では常識の薬品ですが、サラフィアは、遺体の防腐処理にホルマリンを使った最初期の人間の一人のようです。
ロザリアの父親がサラフィアに遺体の保存を頼んだのは、ここまで完成された保存技術を持っていたからだと思うのです。つまり、サラフィアはロザリア以前にも完璧な防腐処理を施した遺体を作った実績がある、と考えられます。
つまり、世界のどこかには、公開されていないだけで、第二、第三のロザリア=ロンバルドの遺体が存在するのではないかと、僕は考えています。
【参照サイト】
「ナショナルジオグラフィック “眠れる美少女”の謎が明らかに」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2009012701&expand
■最後に■
8月21日に大阪府のインテックス大阪で開催される『SUPER COMIC CITY 関西 17』に新刊として出す『コトダマ』第2号に続編となる『惑わせ狸』が掲載されています。
他の小説も合わせて一冊300円。通販も行う予定ですし、11月に東京で開催される『文学フリマ』にも持参する予定なので、是非是非お求めくださいね!