購買部の赤い印
医療機器卸から契約更新の相談が来た。現場の担当者はトラッバの対応を評価しているが、購買部は支出削減の方針を出している。真壁が提出した条件案には、赤い印で何か所も質問が付けられていた。品質を落とさず価格だけ下げるよう求める部分もある。
真壁は相手の担当者を責めなかった。購買部には購買部の仕事がある。銀利は監視範囲を縮小した場合の影響を説明し、必要な判断を相手側へ返すよう指示した。見せかけの値引きで後から請求を増やすことはしない。
購買担当者は数字の根拠を示すため、数年前の支出実績を探していた。現在の監視の範囲とは異なるため、単純に比較できないのが悩みだった。真壁は昔の価格に戻せない理由を、仕入れの変化と対応条件の違いから説明した。相手の担当者も「私の仕事は安く買うことだけではない」と言った。社内の説明が通るよう、費用を何に使うか明確にしたいのだという。真壁はその言葉を聞いて少し安心した。
真壁は購買部の担当へ、削減要望の背景を聞いた。相手も限られた予算の中で仕事をしている。必要な監視を守りたい現場と、支出を抑えたい購買部。二つを対立させるより、何が変えられるかを同じ資料で示す必要があると考えた。
相手からの質問には一週間の期限が付いていた。真壁は慌てず、社内の技術担当が確認できる時間を確保した。早い返事より、後から訂正しなくてよい説明を優先した。
翌週、購買担当から追加の質問が届いた。予算が厳しいことに変わりはない。現場の担当者は社内説明を準備し、真壁も必要な根拠を送った。会社同士の交渉は、片方が勝って終わるゲームではなかった。互いに続けられる条件を探す時間がまだ必要だった。




