城への侵入
エーテとプランタとベルの三人は、クロがいるセント城へ歩いて向かっていた。
今日クロは、入学式? とやらに出席しているらしい。
「またここに来なきゃいけなくなっちまうとはねえ。もうあそこに閉じ込められるのはごめんだぜ?」
プランタが淡々と喋りだした。
「ねえ、ふたりは宝器庫に閉じ込められる直前までの記憶または、閉じ込められた時の記憶ってある?」
「うん。ないね」
「これはあれだな。消されてるな」
「しかもそれ以外の記憶も所々ないよね。僕たち何千年も生きてるのに」
「私たちにこんなことできる存在がいるなんてね」
「そいつに負けたのか勝ったのかも思い出せねえ」
三人は悪魔の笑みを浮かべながら呟く。我々「三原宝器」と呼ばれる三体は、この世界に生まれ落ちてからいつだって最前線だった。
俺たちに好き勝手できるような輩は全員――
「「「ブッ潰す」」」
****
三人は城門の前までたどり着いた。とても大きな城門で、上まで見上げるとクラクラするほどだ。
城門には門番のような人が二人いる。三人は門番に笑顔で挨拶をして、中に入ろうと元気に歩き出す。
しかし案の定、城の敷地に入る寸前で門番二人に止められてしまった。ちぇっ。
「こんにちは。申し訳ありませんが、皆様はどちらの方々でしょうか? 今日、城にはお客様はいらっしゃらないと聞いているものでして」
エーテは困惑した。現代の人間はオレたちのことを知らないのか。どうしたものだ。
なるほどな。とりあえず、機転が利いた嘘で誤魔化すしかないだろう。
「えーと……。私たちは北東から来た者共で、この王都に立ち寄らせていただくにあたって、ご挨拶をさせていただきたく」
「許可がありませんと、ここを通す訳にはいきません」
コイツ……。オレが喋ってるのに被せ気味で返答してきやがった!
「ですが……。姫と王子にも、ここで待ってもらう訳にはいかないので……」
は? ちょっと待って、姫と王子?
プランタとベルは顔を見合せた。辺りに姫や王子のような人は見当たらない。
(え、もしかして僕たちのこと? どうしよう。なんか演技した方がいいのかな……?)
ベルがあたふたしていると、プランタが突然、いつもと違う口調で喋りだした。
「ねえ、用心棒の方? わたくし、ずっと立っているから足が痛くて仕方ないわ! 何をしているの? わたくしは長旅で疲れているのよ! 早くしてちょうだい? フン!」
プランタは両手を握りしめ、頬を膨らませながら怒った顔でこちらを見ていた。いつもの無表情で無感情のプランタからは想像できない姿だった。
エーテは驚いた。一体何が起こったんだ。こんなに驚いたのは、600年前に北東の山でドラゴンの孵化を見たとき以来だ。
プランタの横にいるベルの方にゆっくり目を向けると、自分と同じく、ベルはプランタの方を向いたまま口を開けて固まってしまっていた。
プランタは気を利かせてくれたのだ。エーテは門番にバレないよう、すぐに元の顔に戻した。
「申し訳ありませんが中に入れていただくことは……」
「なりません」
くっそ、人間ごときが! ぶっ飛ばしちゃおうかな。やらねぇけど。
すると突然、セント城からとんでもない覇気が放たれた。その覇気に門番二人はよろめく。
「なんだ今のは! 城内で一体何が起こっている!」
次になにやら声が聞こえてきた。その声は、三人が恩人と呼ぶ、一番敬愛している者の声だった。
「「これらを守ってやれ」」
……。
その声を聞いた瞬間、三人は一瞬で真剣な顔つきに変わった。
そしてプランタは、二人の門番に向かって腕をのばし、手のひらを向けてこう唱えた。
『プログレッション・コンフュージョン』
「キサマ! 何をし……た……」
プランタの手に直径五十センチ程の魔法陣が出現し、二人の門番は力が抜けて気を失うようにその場に倒れた。そしてプランタは手を下ろすと、
『ポイントオペレーション』
と、涼しい顔で唱えた。
シュン……。
三人の体は一瞬の光とともにその場から消えた。
城門の辺りは、まさに一瞬で静寂と化した。
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