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魔法の戦―1

 ベルは足どり軽く森の小道を歩き出す。ラングルスは後ろからそれについて行く。


「話の続きだよ。概念の血族が振るう攻撃は、同じく概念である魔族の魂を深く傷をつけ破壊させる。そこら辺の魔族は概念の血族であれば完全に魂を破壊することができるだろうね」


「俺とかが倒せばその魔族は国の外で復活しないってワケか」


「そ! だけど魔族をまとめてるトップ『至高王』は……」


「お前らの主人みたいな"純血"に近い概念の血族レベルじゃねぇと完壁に殺せねぇんだな」


 ベルは前を向いて歩いたまま右手の親指を立てる。


「至高王は何千年も国内に攻め続けてるけど尽く失敗してる。そして恐らく至高王を毎回退けてるのは、最強の宝器〈セントラルハーツ〉だね」


「セントラルハーツはただの宝器だから、そいつがトドメをさしても国の外の魔族領で復活ってワケか」


「僕らがパンピーに実体を壊されても魂は生きてるから復活できるのと同じだね。ま、殺されるなんてありえないけどさ」


「妖怪かよ、お前ら」


「言い得て妙だね。僕らは特定の傀儡に取り憑く妖怪だ。でも傀儡が必要なだけまだマシでしょ」


 ベルがクルッとこちらを振り返り、後ろ歩きしながら続ける。


「ということで傀儡無しで自由に湧いてイタズラする幽霊、つまり――」


「至高王以外の"モブ幽霊"を片付けろと」


「せいかい!」


 ブワンッ……!


「お?」


 ラングルスの背後に突如、紫の魔法陣が現れた。


 ビリビリ……。バババババッ!


 魔法陣は光り、そこからベルとラングルスに目掛けて激しい雷光が放たれる。


「うわ、なんだよ!」


 二人は空中へ身を翻し、地面がえぐれるほどの雷光を咄嗟に交わした。


「もう降参したろ! まだ試験しなきゃいけねえのかよ!」


「いやあ、これは僕たちじゃないよ!」


ブオオオン……!


 交わした先に無数の魔法陣が展開され、雷光が絶え間なく襲いかかってくる。二人はそれを目で捉えながら一撃一撃確実に避ける。


 ブオンッ!


「うえ!」


 数メートル頭上に魔法陣が出現した。その魔法陣は黒いエネルギーの塊を無数に生成し、停滞させている。


「なんだこれ。自動で発動する罠、『オートマティックマジック』の類だと思ったけど、そうじゃないな。どこかでリアルタイムで監視しながら撃つ魔法の角度とタイミングを選んでいるような……」


 やがて出現した黒いエネルギーの塊はうねうねと形を変え、コウモリのような生物に変身した。コウモリは上から二人を目掛けて高速で飛来し、ミサイルのように突っ込んでくる。


キューウウウン……!


 ベルは飛んでくるコウモリをダガーで弾く。弾かれたコウモリは破裂し、黒いヘドロのようになりダガーに付着した。

 ヘドロが付着したダガーの刃はシュウウと音を立てて溶けだした。


「オエッ!」


 ベルは慌ててダガーを下に振り、ヘドロを弾き落とす。


「ふっ……。そうか、これはアイツのか。さすがだな」


 コウモリの群れがラングルスに向かって上から飛来してくる。しかし、ラングルスはタバコに火をつけてその場に留まったままだった。


「おじさん! 避けてよ!」


 ボンボンボンッ!


 何匹ものコウモリがラングルスの元に到達し、土煙をあげる。


 キュイイイン……! カッ……!


 しかしベルが伏せていた顔をあげると、攻撃を受けたであろうラングルスの姿は掻き消えていたのだった。

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