63話
ネガジャバウォック撃破し怪鳥女達を取り敢えずは追っ払った俺達は、2つ手前の野営地の転送陣まで戻って一旦3層まで引き返すことになった。
心理的に疲れたとか杖使い過ぎたとかより、このままフェネクス軍に追い打ちされたら普通にマズいっっ。
整備した大階段を中心に手分けして警備も立てつつ、すぐ地上に行きたいところだが俺とアバドンさん達はヨミロートス軍と樹海拠点に立ち寄ることにした。
新生復活の様子を見る。
「モジホコリニュウドウを蘇らせるよ」
ヨミロートスはレウケートレントとダークエント・マガリコダマと魔法陣を張り、モンスター化していない茸や粘菌や苔なんかの魔法素材を中心に対価を組んでサクッとモジホコリニュウドウを小さな矮小体として復活させた。
「あー、ん~~······??」
浮遊する矮小体モジホコリニュウドウの意識はだいぶ茫漠としているようだがっ。
「他の新生復活させた幹部達は意識ははっきりしてきたけど、やはり4層攻略には間に合わないね」
「面目ナシ」
「鋭意リハビリはしておりますが」
既に新生復活している小さな姿のバケヤナギ・エント、オオホムラオニヤンマは確かに自我は取り戻しているようではあった。
「そっか。ネオジャバウォックの方は? 厳しいか?」
俺は錆びた冠を取り出してみせながら聞いた。
「矮小体なら問題ないけど、戦力にならないね。彼に関しては知性の復活や荒ぶってる意識の鎮静化も必要だろうし、4層環境に適応してるから素材も4層で集めた方が早いと思う」
「そうなるかぁ」
ただ拾い歩くってわけにもゆかなそうだしなぁ。
「鳥の襲撃込みだと面倒ね。先読みできるアストロロジーも連れてゆかいといけないわ」
「すぐ完全復活する性質も厄介極まりないです」
「いや、そうでもないのである」
黙っていた、アリッサの籠を置き頭と肩にケムシーノ達を乗せたアバドンさんが口を開いた。
「忘れているだろうが、連中の即時復活はフェネクスの『蘇生の炎の力』を担保としている。その都度生命力を完全に復活させるのは負担が大きいゆえ、ヤツは眷属幹部の生命力は『4割前後』と定められている。当人達も死に慣れきって油断しておる点を含め、存外『柔らかい』連中だ」
「守りは緩いんだ······」
「倒しまくったらフェネクス本体も弱体化できそうね」
「あまり具合が悪くなったら術を解かれそうですけどね」
「蘇生に関してはお前らは面倒にし過ぎなんだよ」
樹海にも玉座を出してふんぞり返っていたクリスタルリトー。残存エッジキューブ群は警備に回しているが、そこそこいいコンディションで速攻復活させた黒玉仙とエビルカーバンクルを従えている。
「なによ? 具体的に言いなさいよ」
「なんで着いてきたんだ? 上がり口を警備しないなら放置してる拠点をどうにかしてこい」
当たり強いダークエルフコンビ。
「拠点?『ただ俺が寝ていた所』だ。お前らすっかり洗脳されていないか? ここはただの牢獄で根城でもなんでもないぞ? 旧魔王軍幹部たるものが、囚人暮らしに慣れ切って『帰属意識』までこさえて、俺様は嘆かわしいぜ」
「「「······」」」
態度と物言いとスタンスはアレだが、ちょいちょい俯瞰的なことを言ってくるヤツ! 基本、ここの迷宮機構全否定派なんだよな。
「皮肉の脱線はいい、さっきの蘇生の話は?」
意外と積極的に話題に参加してきたヨミロートス。
「俺は『記憶を込めた石』に幹部達の情報を細かく書き込んで保持している。俺自身の記憶の中にもな。よって身体と魂を『大体の感じ』でそれなりに復活させ、その上で記憶を写し込めば『大体元通りになる』多少難があってもよちよち状態から始めることぁないんだぜ?」
「あんたんとこは雑過ぎんのよっ」
「物質系種は融通が利くだろうしね。ただまぁ『記憶の写し』を残しておく、というのは確かに効率いいかもしれない」
「まぁ、それは、そうかもね······でも私達の場合、完全な記憶保持は『何人分もの生涯』を抱え込むことになるから、ちょっと」
「それが大袈裟なんだよ。『俺様が引き続きいる』それだけのことだろ?」
「えー?」
「すごい自分好きだな、お前」
「クククッ」
ここまで行くとすごいな、と。
「そこも、ボクもずっと生きてるからわからないではないかな?」
「······なんで用もないのに着いてきたか、まだ答えてないぞ? 放置した拠点では居心地が悪いのか? 暇なのか?」
結構執念深く追求するコメリナ。
「お前達に俺様の『見識』をわからせてやろうと思ってな。クククッ」
「「「······」」」
ずっと『言ってやろう』と思ってついてきたとしたら、コイツも相当執念深いヤツだ!
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地上に戻ってきた。と言ってもネガジャバウォック戦前に戻ったばっかりでいきなり村に戻るのも不自然なので、アバドンさん家の前の東屋で野営することにした。
で、今回は同行者が多かったりもする。
「「ハパーン」」
「「クェーッ」」
マージ・リーフウォーカーとアクアリーフウォーカー1体ずつ。それからヨコヅナペンギン2体も地上に連れてきていた。いずれも特に知性の高い個体。
「鮒を食べるッス〜」
「『不思議ダンス』なら負けませんよ?」
「今日から僕らがお前達のマスターだからねっ!」
焚き火の周りで先日のクピド達も騒いでる。
「大丈夫か?『村にバレる気配』をめちゃ感じるんだが?」
「もう少し森の奥にねぐらを作らせる。元々囚人の文字列にいない野良や間接的に召喚されたモンスターだ。落ち着き、善性もある。より自我が確固としたら一度迷宮に戻し一族を指導させるのである。クピド達もよい経験になる」
教官を通り越して『校長先生モード』になってるアバドンさん。
「きっとクピド達ともっと仲良くなるでしょう。私には見えます」
「上に上がってくるのが増えると、どんどん賑やかになっちまいそうだけどねぇ」
アストロロジーは4駒落ち予見なし、のペナルティでゴールドスコップと『ダンジョンチェス』に興じていた。
全員分お茶を入れ、虫除けの香もうっすら焚き、呑気なもんさ。
ケムシーノ達も延々眠るアリッサと一緒に毛布で爆睡。
テーブルの上にはネガジャバウォックの錆びた冠も置かれていた。この状態なら持ち出し可能。
魂の牢獄か。
自分自身の屈託や、伝説の時代から引き摺った終わらない役割に囚われているのかもしれないな。




