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月の森の物語  作者: 喜多彌耶子
三日月の夜に
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「それで? それでおばあさん、アイラはどうなったの?」


暖炉の側、ゆったりとした椅子に腰掛けているおばあさんの、暖かそうなひざ掛けをかけた膝にぴたりとよりそいながら、ラーニャは続きを強請ります。


部屋の中は暖かく、おばあさんが編んでいるラーニャの冬用の帽子は暖かそうで、ふくふくとした気持ちで、眠くなってしまいそうなのを必死で堪えながら、ラーニャはじっと、おばあさんを見上げます。


おばあさんは、そんなラーニャに、優しく笑うと、膝の上に載せていた頭を、そっと撫でてくれました。


「そうだね、それからの、お話だったね。


――次の三日月の夜、再び開かれたお祭りに、アイラは綺麗に着飾って出かけたんだよ。

もしかしたら、であったあの銀色の髪のひとにあえるかもしれない、そうおもって、ね。

白く輝く花の色のドレスに身を包んで、月の夜にだけ輝ける自らの羽を綺麗に広げて、会場にいったアイラは――そこで、その人にあうんだ。


そのひとは、月の精霊。銀色の輝きを持つ、月の精霊だったんだよ。


アイラを見つけた彼は、微笑んで、こういうんだ。


『おてんばだったお嬢さん――いや、今日は素敵なレディですね。一曲おどっていただけますか?』


そうして、二人は、三日月の光の下、ふわり、ふわりと踊ったんだ。


アイラは、三日月の光を浴びて、きらきら、きらきらとたいそう美しかったそうだよ。

特にその人の側にいると、なぜだかとても、よりいっそう綺麗にみたんだと。


『どうして、君はそんなに綺麗なんだい』


その人は、アイラにきいたそうだ。


アイラは、にっこり笑って、こう返したそうだ。


『だって、月下美人()は、月の光(貴方)で美しく咲く花なのですから』


そして、二人は、仲良くなって、幸せに暮したんだとさ。



……おやおや」


みると、おばあさんの膝の上、ラーニャは幸せそうに、暖かそうに頬を赤く染めて、すやすやと眠ってしまっていました。


おばあさんは優しく笑うと、そっと頭をひとなでして、ラーニャを起さないように抱き上げます。


「ラーニャ、おまえが誰か特別なひとにあうのは、いつのことだろうね」


優しく告げるその言葉は、どこか寂しそうで――とても、慈愛にみちていました。


「おやすみ、ラーニャ。いい夢を」


ベッドの上、暖かな布団にくるみこまれたラーニャの額に、そっとキスを落としながら、おばあさんは優しくそう告げて、そっと部屋の明かりを落としたのでした。




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