表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

帰還


南明様に連れられて、ようやく自分の与えられた宮に帰ってくると……

「「王蘭様!」」

春さんと凛々が待っていたとばかりに出迎えてくれた。

「よかった……少しやつれて……はいないようですね」

春さんは私の顔を見るなりほっと胸を撫で下ろす。

「王蘭様……よかったです~本当に心配致しました……私……なんにも役に立てず……」

凛々は顔を見るなり瞳を潤ませていた。

「心配してくれるだけで嬉しいわ。ほら、可愛い顔が台無しよ、涙を拭いて」

私は自分の服で凛々の涙を拭き取ってあげると……

「い、いけません! 王蘭様!」

春さんが慌てて止めにはいる。

「ふふ、はーい。あーやっと帰ってこれた……牢屋の暮らしも悪くなかったけど、やっぱりここが落ち着くなぁ~。って事で、春さんのスープが飲みたくなってきたんだけど……」

チラッとうかがうように春さんを見る。

「いつ帰ってきてもよろしいように用意しております。早速召し上がりますか?」

春さんは笑いながら聞いてきた。

「やった! お願いします!」

私が喜んでいると……

「えっと……王蘭様?」

あっ……居たの忘れてた……

後ろを振り返ると驚いた顔の南明様が私達の様子を見つめていた。

「王蘭様は女官と仲がよろしいのですね……」

「え、ええ。だって自分の世話をしてくれる人達ですからね、信頼してますから」

「なるほど……」

南明様は何か言いたそうに見つめていたが……

「では私はこれで……また細かい話を聞きに来るかも知れませんので、よろしくお願いします。それと……先程の髪飾りですが見せてもらってもよろしいですか?」

「えっ⁉」

私は急な事に驚いて平静を装うのを忘れてしまった。

「な、なんでですか? 南明様には関係ないですよね?」

「ええ、でも少し気になったので」

クッ……やはり役職持ちだけある……

私は髪飾りをしまってある胸元をギュッと握りしめた。

「これは……お見せできません」

「そうですか。ならもう一度牢屋に入りますか?」

南明様も引く様子はないらしい……ずっと手を出して微笑んでいる。

「それでも……です。渡せません」

「はぁ……ではスープは諦めて下さい」

うっ……春さんのスープが……

「二人ともごめんね。また牢屋に入ってくるね!」

「「王蘭様……」」

二人に心配かけないように極力明るく笑って見せた。


私達は再び来た道を戻って牢屋を目指す。

「はぁ……スープを飲む時間くらいくれてもいいのに……本当に最悪……」

ブツブツと文句を言いながら南明様の後をついて行く。

「王蘭様が髪飾りをお渡しいただければ、すぐにでも戻りますよ」

「それは……」

「一体なんなんでしょうか?」

「ただの愛の絆ですよ……」

「愛の絆……?」

「さぁもう言ったんだからいいでしょう? 人の恋路の邪魔なんてしたら馬に蹴られて死にますよ!」

「一体なんの事やら……」

話しているうちに懐かしの牢屋にたどり着いた。

二回目ともなれば勝手もわかっている。

警備兵が牢を開けてくれると……

「ありがとう」

ニコッと笑ってお礼を言い、牢屋に足を踏み入れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ