帰還
南明様に連れられて、ようやく自分の与えられた宮に帰ってくると……
「「王蘭様!」」
春さんと凛々が待っていたとばかりに出迎えてくれた。
「よかった……少しやつれて……はいないようですね」
春さんは私の顔を見るなりほっと胸を撫で下ろす。
「王蘭様……よかったです~本当に心配致しました……私……なんにも役に立てず……」
凛々は顔を見るなり瞳を潤ませていた。
「心配してくれるだけで嬉しいわ。ほら、可愛い顔が台無しよ、涙を拭いて」
私は自分の服で凛々の涙を拭き取ってあげると……
「い、いけません! 王蘭様!」
春さんが慌てて止めにはいる。
「ふふ、はーい。あーやっと帰ってこれた……牢屋の暮らしも悪くなかったけど、やっぱりここが落ち着くなぁ~。って事で、春さんのスープが飲みたくなってきたんだけど……」
チラッとうかがうように春さんを見る。
「いつ帰ってきてもよろしいように用意しております。早速召し上がりますか?」
春さんは笑いながら聞いてきた。
「やった! お願いします!」
私が喜んでいると……
「えっと……王蘭様?」
あっ……居たの忘れてた……
後ろを振り返ると驚いた顔の南明様が私達の様子を見つめていた。
「王蘭様は女官と仲がよろしいのですね……」
「え、ええ。だって自分の世話をしてくれる人達ですからね、信頼してますから」
「なるほど……」
南明様は何か言いたそうに見つめていたが……
「では私はこれで……また細かい話を聞きに来るかも知れませんので、よろしくお願いします。それと……先程の髪飾りですが見せてもらってもよろしいですか?」
「えっ⁉」
私は急な事に驚いて平静を装うのを忘れてしまった。
「な、なんでですか? 南明様には関係ないですよね?」
「ええ、でも少し気になったので」
クッ……やはり役職持ちだけある……
私は髪飾りをしまってある胸元をギュッと握りしめた。
「これは……お見せできません」
「そうですか。ならもう一度牢屋に入りますか?」
南明様も引く様子はないらしい……ずっと手を出して微笑んでいる。
「それでも……です。渡せません」
「はぁ……ではスープは諦めて下さい」
うっ……春さんのスープが……
「二人ともごめんね。また牢屋に入ってくるね!」
「「王蘭様……」」
二人に心配かけないように極力明るく笑って見せた。
私達は再び来た道を戻って牢屋を目指す。
「はぁ……スープを飲む時間くらいくれてもいいのに……本当に最悪……」
ブツブツと文句を言いながら南明様の後をついて行く。
「王蘭様が髪飾りをお渡しいただければ、すぐにでも戻りますよ」
「それは……」
「一体なんなんでしょうか?」
「ただの愛の絆ですよ……」
「愛の絆……?」
「さぁもう言ったんだからいいでしょう? 人の恋路の邪魔なんてしたら馬に蹴られて死にますよ!」
「一体なんの事やら……」
話しているうちに懐かしの牢屋にたどり着いた。
二回目ともなれば勝手もわかっている。
警備兵が牢を開けてくれると……
「ありがとう」
ニコッと笑ってお礼を言い、牢屋に足を踏み入れた。




