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余り良い噂は聞かないが、その美しさだけでは世界に名を轟かせていたアドルフ。

だから、実際に顔を合わせるまでアウロアがどのような反応を見せるのかブライトは不安でならなかった。

だが、蓋を開けてみれば相当嫌だったのか、普段では考えられない事に自分に縋りついてきてくれた。

謁見中はずっと手を握り合い、肩を寄せ合う様にしていた。

謁見が終わった後も、いつもであればさっさと一人で自室に戻るアウロアだが、今回は大人しくエスコートさせてくれたのだ。

嫌悪感からくる精神的疲労で、見るからにぐったりしており、気の毒でならなかったのだが・・・・

嫌な思いをしていたアウロアには悪いが、アドルフに気持ちが奪われない事を確信した途端、ブライト的には気分が浮上しニヤニヤとしまらない笑みを浮かべてしまう。

だが、そんなブライトとは正反対に、エルヴィンが嫌なものでも思い出したかのように、顔を顰めた。

「あのアドルフ殿下って誰かに似てるって思ったら、フェレメンの王太子と雰囲気が同じなんだよな」

「フェレメンの?・・・あぁ・・あの色ボケ殿下?確かに、アドルフ殿下も同じ人種だよね」

ヴィルトも何かを思い浮かべるかのように、視線を遠くへ飛ばした。

「体格も容姿も全然違うのに、纏う雰囲気が同じってのが怖いね」

「それを言うのならイライザ嬢とリリア嬢。あの二人も同じだろ?」

「確かに。教養のある阿婆擦れと、無知な阿婆擦れ?」

「上手い事言うじゃないか!だが、無知と言うより・・・娼婦だな。あれは」

「恐らく此処に長期滞在して、国王夫妻に其々ちょっかいかけようと、今頃相談してるかもしれないね」

「まぁ、その前に本国に強制送還されるだろうけど」

ヴィルトとエルヴィンの会話を黙って聞いていたブライトが表情を引き締め、ポツリと呟いた。

「―――これを機に、アウロアの憂いを一気に払拭したいな」

その言葉に一瞬、驚いた様な表情の二人だったが、すぐに考え込む様に目を閉じた。そして・・・

「できれば色ボケ殿下も処分したいよね」

ヴィルトの言葉にエルヴィンも、

「処分・・・まぁ、王太子の座から下ろしたい事は確かだな。俺、あいつの事は殺したいくらい嫌いだし」

何年経とうと、今は亡き親友を苦しめた男を許す事は出来ないらしい。

本当であれば、王太子の座から引きずり下ろし廃嫡の上、平民に落してやりたい。いや、それでも生易しいくらいだ。

なんせ、エルヴィンの中では、フェレメン王太子は死罪決定なのだから。

「ならさ、いっその事・・・目の上のタンコブ野郎共を、片付けちゃう?」

ヴィルトの言葉に、ブライトとエルヴィンは大きく頷いた。

そして、誰を片付けるのかを互いに確認し合い、取り敢えず晩餐会での状況を見てから具体的な計画を立てる事にした。


彼等が上げた片付けようとしている面々とは・・・

リイズ国王太子とその婚約者。

フェレメン国の色ボケ殿下。

当国のイライザ嬢。


リーズ国のあの二人は、言わずもがなこれから問題を起こすだろう。

フェレメンの色ボケ殿下も、何かにつけカスティア国に来ようとし、アウロアに接触をはかろうとしている。

そしてイライザもまだブライトを諦めてはおらず、いまだに自分は側室になるのだと騒いでいるらしい。


「どいつもこいつも中途半端に地位があるから、面倒くさいな」

「まあ、そうだな。下手すりゃ他国の王位継承権に口出すようなもんだから」

「致し方あるまい。実際、あれらが国王になった時の混乱を考えれば、感謝こそすれ、責める者など居るまい」

ヴィルトとエルヴィンのどこか不安げな言葉を、ブライトはあっさりと切り捨てる。

アウロアに対するポンコツぶりは見る影もなく、噂に違わぬ堂々とした英主である。

「取り敢えずはこの晩餐会を乗り切ろう。本日参加する者達にも、彼等の行動や言動に注意するよう通達しておくように」

「はい」

「承知しました」

先ほどまでの砕けた雰囲気は跡形もなく消え失せ、二人は立ち上がり胸に手を当て頭を下げると其々の役割を果たす為、執務室を後にしたのだった。


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