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リイズ国は元々はカスティア国の一部だった事は、この世界に住んでいる者であれば誰もが知っていた。

だがそれは、当事者以外は忘れてもいい位は年月は経っているはずだ。

それなのに、未だ貴族だけではなく平民までもがその事を認知しているのには、理由がある。


リイズ国は他国から、カスティア国の腰巾着と影では呼ばれているからだ。

別にカスティア国にいい様に扱われているとか、そういう事ではない。

リイズ国がカスティア国を頼り切って、自立していない事を揶揄してそう言われているのだ。

元々、建国できた理由が兄王の弟への溺愛であるが故、いつからか当然のように何かあればカスティア国を頼る事が常習化されていた。

正に悪習である。

まだ親戚筋と呼べる間柄の時は致し方ないかもしれない。

だが、数百年も経てばほぼ他人だ。それなのに、未だに甘えてくるなど国王としてのプライドがあるのかと問いたくなる。

実際、何代か前のカスティア国王はリイズ国をちゃんと(・・・・)独立(・・)させようとしたらしい。

だが、言われた当の本人たちが『何故?』と首を傾げたのだという。

当時のリイズ国王にも問題があったのだろうが、話が噛み合わず諦めてしまったようだ。

ブライトからしてみれば、何故もっと粘らなかった!!と怒鳴りつけたい気持ちでいっぱいだ。

そこで親離れできていれば、自分達がこんないらない苦労を背負うこともなかったのに・・・と。


「取り敢えず、あの二人が何を仕出かすかはわからないが、それをネタにリイズ国と距離をとるのもいいかもしれないな」

「そうですね。恐らく今夜か明日の朝には、あのお二人のどちらかが突然、具合が悪くなるのかもしれませんしね」

神妙な表情でこの先の事を思案するブライトに、ヴィルトはおどけたように笑う。

アドルフ達の各国強行日程とは、一国に付き一泊二日というあり得ない日程なのだ。

そんな彼等が急に『具合が悪くなる』という事は、何かをやらかす事を意味している。

「おいおい、変な事を予言しないでくれ。・・・・ってか、あの二人の様子から実際に事を起こしそうなんだよなぁ」

エルヴィンは目を通していた書類から顔を上げ、控えていた文官に渡し、一言二言指示を出すと文官は退出していった。

「所で、アウロア様は大丈夫でしたか?見るからに汚物でも見るかのような目で、アドルフ殿下を見ていたようでしたが」

「あぁ・・・すんごい顔してた。お嬢はああいう自意識過剰な男、大っ嫌いなんだよね」

ヴィルトとエルヴィンは、数時間前のアウロアの表情を思い出し苦笑していると、ブライトが何故かエルヴィンに詰め寄った。

「え?エルヴィンはアウロアの事を・・・『お嬢』と呼んでいるのか?」

「おっと・・・ついつい気が緩んでしまって。失礼しました」

「取ってつけたように畏まらなくてもいい。で、どうなんだ?」

「どう、と言いますと?」

「だから!我が妻をいつもそんな風に気安く呼んでいるのかという事だ!」

「やだなぁ、陛下。嫉妬ですか?」

茶化したようにエルヴィンが言えば、ちょっと不貞腐れたような顔をしながら「そうだよ」と、いかにも不機嫌そうに返した。

「心が狭いなぁ、陛下。俺とアウロア様の関係はヴィルトに聞いてる通りですよ。兄妹であり、守るべき主でもある」

「・・・・分かってる」

分かってはいるが、何だかむしゃくしゃするのだ。

「それに、俺が呼んでるからっていちいち嫉妬してたら、身体が持たないですよ」

「何故だ?」

「だって、フロイデンでは、ほぼ全員がお嬢と呼んでるんですから」

とってもいい笑顔で言いきられ、むしゃくしゃしていた気持ちが一気に萎んでいくブライト。

「陛下は長期間、フロイデンに滞在したことがないからね」

ヴィルトの言葉にエルヴィンも「そう言えばそうだったな」と頷く。

「フロイデンの貴族はこっちの貴族から見れば、平民をちょっとお上品にした感じの奴等ばかりだから、驚くかもしれないなぁ」

「まぁ、脳筋が多いからね。国王の事を『親方』って呼んでる国は、まず無いだろうし」

あははは・・・と笑う二人に、ブライトはなんとも言えない顔をする。

「別にリース様を馬鹿にしているわけじゃないよ。独立した時は皆『陛下』って呼んでたんだけど、リース様が今まで通りでいいと何故か怒り出してね」

「あぁ、あれは笑えたな。『国王陛下』って呼ばれるたび変な顔して鳥肌立てた腕擦ってるんだから。とうとう耐えきれず、国賓なんかが来ない限りは『親方』呼びで定着したんだ」

「アウロア様も『姫』と呼ばれるの嫌がってたし、リヒト様なんて間違っても『王子』なんて呼んだら、殺気バンバンよ。正直、一応は王家なんだからどうなのよって思った事もあるけど、別に外と内の使い分けしてるからいいかなって、皆は思ってるみたいだね」

ブライトにとっては信じられない内容だが、あの国ならあり得るかも・・・と、どこか納得してしまう。

「話を戻すけど、アウロア様は、アドルフ殿下みたいな何もできないくせに気位だけは高いクズが大っ嫌いなんですよ」

「フロイデンは実力主義だからね」

ヴィルトとエルヴィンの言葉にブライトは納得した様に頷いた。

「確かに、相当苦手だったようだな。鳥肌を立てていたくらいだし」

アウロアも始めは王妃らしく表情に出さないよう努めていたようだったが、最後の方では口元がかなり引きつっていたのを隣でハラハラしながら見ていた。


未だアウロアとの距離を縮める事が出来ていないと焦っていたが、取り敢えずアドルフは彼女の眼中には無い事にほっと胸を撫で下ろすのだった。


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