16.『友達』と書いて『共犯』と読む
<前回のあらすじを30文字以内で説明せよ>
綺都「突然始めやがったラブコメ。」
翼 「ベッドから謎の工事現場のような轟音。」
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「貴様、美織のことをどう思っている?」
翼の切れ長の真っ直ぐな瞳を向けられた綺都は思わず持っている湯のみを落としそうになった。
「…どう思ってるって、それは友達としてってこと?」
「まあそれもあるが…一人の女として、だ。」
そう言って翼は美織のいるベッドの方に視線を向ける。
何故かその彼の横顔が綺都にはとても悲しそうな表情に見えた。
不思議に思った綺都は首を傾げて一気に乾いた喉をほうじ茶でうるおした。
突然そんなことを自分に聞くということは、彼はもしかしたらもしかしてなのかもしれない。
「それで?どう思っているんだ。」
「……俺はそういう目で神崎を見たことないし、俺なんかが神崎をそんな不純的な目で見る資格はない。」
綺都が受け流すようにそう言うと翼は驚いたかのように目を見開いて綺都の顔を見た。
「資格はない、か。貴様は随分と自分を過小評価しているのだな。それだけの知能とセンスを兼ね揃えているのに。」
心なく発せられた翼のその言葉に綺都はグッと下唇を噛み締めてズボンを掴んだ。
自身で言うのも何だが、己の周囲よりも圧倒的にずば抜けた才能は自分が一番理解している。
だけど、その才能のせいで自分は己の意志で行動するというやり方がわからない。努力をしたことがない。何も自分で考えることが出来ない。普通の人間らしく出来ない。
悔しさと悲しさで黙ってしまった綺都に対して翼は読んでいたチラシを片付けながら話を続ける。
「正直俺は貴様のことをあまり好いていなかった。今まで直で話したことはなかったが、貴様が優秀だとはよく耳にしてきた。
……何でもできる奴は自分に自惚れている。その怠けきった根性が俺は嫌いなんだ。だが、さっきから貴様の態度を見る限り貴様はかなり自身を過小評価している。下手をすれば凡人よりもプライドが低いんじゃないのか。何をそんなに悩んでいる?」
「……話したこともないのに勝手に嫌いとか言うなよ。」
「ああ、今思えば理不尽な仕打ちだったと思っている。すまなかった。……話を続けるが、何でもできるなら普通は人生楽しいのではないのか?何が不満なのだ。」
「……別に不満なんてないよ。」
綺都は天井を仰ぎながら答えた。
「寧ろラッキーとか思ってる。でも、神様が俺に勉強が運動が芸術が武道が……。なんでも出来る才能をくれてもひとつだけくれなかったものがあった。」
「くれなかったもの、だと?」
翼は眉をひそめる。
「うん。……『人間性』だよ。普通の人ならスポーツの成績が伸びなくて悩んだり、テストの順位が上がってよろこんだりするだろ?俺の場合、元から出来てしまうからそんな感情は必要無くなるんだ。それは出来ないから悩むのであって、元から出来るのなら何も心配する必要はない…。ずっとそれだ。何でも出来た俺は自分の意志で考動したことがない。心から喜んだことがない。生まれもったこの才能だけを頼って生きて来てしまった。……だから少しだけ、皆が羨ましかったりする。」
自虐的に翼に微笑んで見せた綺都は視線を下ろした。
それに対して翼は何も言わずに押し黙ってただ指遊びをしている綺都の繊細な指先を見つめ続ける。
何も言わなくなった翼に対して綺都は語り続けた。
あの日友達に言われたこと。
彼の言葉に思いに悩んだ結果屋上から飛び降りようという結論にたどり着いたこと。
その先で神崎美織に出会ったこと。
彼女と親友になったことで今までの自分の日常が180度ガラリと変わったこと。
周りから表情豊かになって変わったと言われたこと。
「あいつが俺の前に現れてから、いい方向に狂いだした。」
「……そうか。」
「広瀬と神崎はどーいう関係なの?」
「ただの幼なじみだ。…羨ましいか?上杉綺都。」
「はっ!? 別に羨ましいわけじゃないけど……。あんな奴と毎日一緒だったら大変そうだなぁって思って。」
「ふふっ、退屈はしないけどな。」
そう言うと翼は壁にはられている可愛らしい時計に視線を移し時刻を確認する。
授業終わりのチャイムまであと20分。
翼はため息をついてドカッ、とソファーに腰かけた。
「さて、本題はここからだ。上杉綺都。」
翼は真っ直ぐと綺都を見つめる。
その視線に綺都は緊張して猫背になりかけていた背筋をピシッと伸ばして座り直す。
そして翼から出てくる次の言葉を待った。
「俺と友達になる気はないか?」
「……へ?」
思わず出してしまった間の抜けた声。
咄嗟に口元を手のひらで押さえた綺都はもう一度翼に言ってもらうように頼んだ。
翼は少しだけ目を細めてめんどくさそうにもう一度言う。
「だから、俺と友達にならないかと言うたのだ。何度も恥ずかしいことを言わせるんじゃない。それとも嫌なのか?」
「いや、全然良いんだけど。……広瀬さっき俺のこと好きじゃないとか言ってたじゃないか。」
「今は好き(^з^)-☆」
「男に好きとか言われても喜ばないからな。」
「結局どっちなのだ早く友達になるかならないかさっさと決めてくれやや乱れてYO!SAY!」
照れ隠しに必死な翼を見て綺都は思わず吹き出した。
こいつ、案外こーいうのは不器用なんだな。と感じて翼に向かって自分の手を差し出した。
「改めてよろしくな。広瀬。」
驚いたかのように目を丸くした翼は綺都の顔と自分に差し出された手を交互に見た。
その反応的に断られると思っていたのだろうか。
「なんだよ、友達になろうってお前が言ったんだろ。」
「いや、まさかこんなあっさり昨日のことを許してもらえるとは……人が善すぎるぞ。貴様。」
そう言って笑いながら彼は綺都の手を握ってきた。
握ってきた翼の手は細長くて華奢な見た目よりもしっかりしてて、成人男性を連想させるような手だった。
いや別に昨日のことは許したわけじゃないけどなと思いながらも綺都はまぁいいか、と肩で小さく笑った。
「そうか友達か。…ふふふふふふははははははは」
「うわ、きもちわる。」
「友達になった証として、貴様に教えてやろう上杉。」
「何を?」
「生徒指導室で俺達がした過ちをだ。」
「いやいいです。」
「遠慮するなよ。友達だろう?」
そう言って翼は気味の悪い笑みを浮かべる。
綺都は思った。
あ、これ前にも体験したことあるやつだ。
自分が初めて神崎とあったときに自首しに無理矢理連行されたときの感覚と一緒のやつだ。と。
「…友達って、何だと思う? 広瀬。」
「そうだな、友達というものは喜びや悲しみを分かち合い、何より辛い時共に乗り越えようとする存在を指すんじゃないのか。……あと、片方が起こした罪を連帯責任として一緒に償うのも、友達としての使命だと俺は思うなぁ。…そうおもうなぁあ上杉?」
「うん!友達取り消そうか広瀬くん!」
友達になるときはよく考えて友達になろうね皆!
でないと俺みたいに後悔しちゃうぞ!☆




