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01

大天使に命ぜられて早2,000年。ガブリエルとウリエルはとても悩んでいた。

死者を裁く仕事が遅れているのである。もとより、先代達でさえ3人でやっと片付けていた仕事を彼らが2人で片付けられるはずがないのだ。



「ウリエル……やっぱりミカエルを呼び戻した方がいいんじゃないかしら」

「だが…ミカエルは大天使になるのを拒んで今下界に落ちているのだ。それを忘れたわけではあるまい?」

「忘れてなど……ただ、私たち2人には荷が重過ぎるわ。もしミカエルを呼び戻せないならあの時ミカエルが行っていた通り、ラファエルを戻すしか適任はいないわよ」

「ラファエルだと!?あの堕天使に助けを求めようというのか?おお、神よ!」

「ちょ、ウリエルうるさい」

「すまない」



2人の話し合いは3日3晩続いた(といっても天使なので3日3晩は彼らにしてみればあまり長い時間ではない)。結局、下界からミカエルを呼び戻すことで落ち着いた。



「でも……呼び戻したところであのミカエルが素直に大天使になるかしら……」

「…あのミカエルだからな……ああ、こういうのはどうであろうか」

「何?」

ウリエルの案を聞いたガブリエルは満足げに笑ってうなずくと、ウリエルをつれて天上界の端へと歩いていった。









「グレゴリオ、あなたは今日を持って見習い天使を卒業しました。これからは立派な天使として天上界に尽くしなさい」

「はい、先生」



真面目なグレゴリオは浮かれていた。今日、やっとのことで見習い天使を卒業したからである。だから、グレゴリオは目の前から歩いてくる存在に気がつかなかったのだ。



「あなたは誰?」

「私はグレゴリオ。今日見習い天使を卒業したばかりのなりたて天使です。あなたは?」

「あら、天使なのに私を知らないの?」



それをいわれてはじめて、グレゴリオは声をかけてきた女性を見た。



「え……あ、あなたは、大天使ガブリエル様!?」

「ようやくわかったのね。……普段ならなにか罰をあたえているところでしたがまあいいでしょう。グレゴリオ、これから私についてきなさい。」

「は、はい。ガブリエル様」



ガブリエルとグレゴリオは、きれいに整った美しい庭園を歩いていた。だが、今までグレゴリオにはこの美しい庭園の主を見たことがなかった。



「ガブリエル様、質問してもよろしいでしょうか…?」

「なにか?」

「なぜ、今日見習いを卒業したばかりの私をこのような場所へお連れになるのですか?」



グレゴリオが問うと、ガブリエルは神妙な顔つきでグレゴリオを見ると、庭園の中の柱に座って語り始めた。



「グレゴリオ、これからあなたには大天使の補佐をしてもらいたいの」

「この私に…ですか?」

「とりあえず最後まで聞いて。今、大天使と呼ばれているのは私とウリエルの2人だっていうのはわかるわね?」

「はい、ガブリエル様」

「それじゃあ、本当は私たちの他にもう1人、大天使になる者が居たのは知ってた?」

「……いえ、そこまでは存じ上げませんでした」

「彼の名はミカエル。ミカエルは訳あって先代の大天使たちによって下界に落とされたの。

でも正直な話、私とウリエルだけでは仕事をこなせなくなってしまったわ。だから、下界に落とされたミカエルを天上界に呼び戻して大天使を3人にしようというわけ。」



グレゴリオは息を呑んだ。このような話などおよそ自分とは関わりのない話だと思っていたからだ。そして、彼にはこの話は今後自分にもっと関わってくるのではないかと確信していた。



「まず、ウリエルがこの先にある泉からミカエルを呼び戻すわ。話はそれからよ。さあ、泉のほとりに行きましょう」



2人はウリエルがいる泉に着いた。ウリエルはとても気難しい顔つきで泉に向かって何かを呟いていた。



「聞いているのかミカエル。貴様は下界に長居をしすぎだ。いい加減にこちらへ戻って来い……何?下界の女など知ったことか!」

「下界の女……?」

「ミカエルは大の女好きなのよ」



ガブリエル小声で耳打ちをしてくれた。

どうやら泉は下界のミカエルにつながっているらしい。グレゴリオは思わず顔を近づけた。



「とにかく、真面目に話を聞け、ミカエル。貴様はもう戻ってこなければならないのだ。それに、早いとこ動かないとガブリエルが黙ってはいないぞ」

「私はそんなにうるさくないわよ」



ガブリエルが苦笑した。

その直後に泉が輝きだし中から少し反響して聞き取りにくい男の声がした。



「私が悪かった。ウリエル、ガブリエル。今戻るからそちらで準備をしてくれないか」

「わかった。今から準備を始めよう」



ウリエルとガブリエルは顔を見合わせてそれぞれに祈りの言葉を唱えはじめた。

すると、みるみるうちに泉から1人の男が現れた。



「実に2,000年ぶりだな、ウリエル、ガブリエルよ」



おそらく、泉から出てきたこの男がミカエルなのだろう。

グレゴリオは彼を見上げながら思った。



「それで、なぜいまさら私を呼び戻したんだい?」

「審判を下せるものがいなくなってしまったの」

「俺とガブリエルは別な仕事で忙しい。だから、大天使としてミカエルに死者の審判を貴様に任せたいのだ。」

「そこにいる小さい天使はグレゴリオといってあなたの補佐役になるわ。自由に使って」

「ふむ……大天使になるというのは納得いかんが……この男、なかなか使えそうな素直そうないいやつだな……よろしく頼むぞ、グレゴリオ」

「よ、よろしくお願いします!」



こうして、見習い天使グレゴリオの過激な補佐生活が幕を開くのであった。

2019/10/20 転載

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