到着と試験
ダーマの準備(着替え)が終わるとすぐに一向はバーバラに向けて出発した。
ウルは景色に興味があるらしく、馬車の屋根に登って身体を揺らしている。オークの件で機嫌を悪くしていないか心配だったが杞憂だった。
「それにしてもソージ君は凄いね。医術だけじゃなく飛行術まで使えるなんて。そのくらいの年で出来る子はそういないよ。うちの子も魔法学校に通わせてやれれば出来るようになるんだろうか」
宗司は子供に見られるのは元の世界で慣れっこなので訂正する気もない。別に宗司が嘘を言っているわけではない。相手が思い込む分には勝手だ。
ならば、いちいち訂正するより子供だと思ってもらったほうが楽だ。
それに子供に見える大人よりも魔法が使える子供として見られたほうが便利なのではという考えもあった。
「魔法学校なんてものがあるんですか?それは興味がありますね。それは僕でも入れますか?」
「うーん、どうだろう。表向きは年齢制限はないけど実際にはウルちゃんくらいの歳に入学することが多くて、定員に達するとそれ以上の年齢の人は弾かれることが多いらしいね」
「そうですか…でもどうしてその年齢なんですか?」
「私も魔法に詳しいわけじゃないけど、どうにも15歳くらいまでが1番魔法教育の効果が大きいらしい。うちの上の子はもう今年14だから入れないだろうなぁ。わたしの稼ぎが少ないせいで…」
ダーマは優しいおじさんといった感じだが、どうにもネガティブだ。面倒ではあるが、(見た目はともかく)大人である宗司はそれを受け流すくらいのスキルはある。
社会人の必須スキルだ。
「でも、もしかしたら他にも才能があるかもしれないじゃないですか。それより他には学校とかあるんですか?」
「そうだね。ありがとう。学校…ではないけど冒険者の訓練所とか商人の養成所だとかいろいろあるよ。興味があるなら案内するよ」
(冒険者。やっぱりあるんだ。テンプレどうりなら…)
「へぇ、冒険者の訓練所もあるんですか。ちなみに冒険者は誰でもなれるんですか?」
「成れるよ。ギルドもソージ君みたいな優秀な人材なら大歓迎だろうね。確か明日は統一試験をやる日だから受けてみなよ」
「統一試験…ですか。何をやるんですか?」
「いろいろさ。冒険者ギルドの戦闘試験とか魔法ギルドの魔法実技とか。商人試験なんかは私でも通れるくらいだから安心して。まぁ私はこの年でまだ下から2番目までしか受かってないんだけどね」
再びダーマの自虐が始まる。
(さすがに面倒だし、この話は突っ込まないほうが良さそうかなぁ)
そんなことを考えているとウルから声がかかった。
「にーた…見えた」
宗司も少し浮高く上がると確かに石で作られた壁のようなものが見える。
「本当に魔法は便利だね。僕もそれくらい使えればいいんだけど。今見えているのがバーバラだよ。日が沈みきる前に着けそうで良かった。門の前で野宿すると門兵にめんどくさそうな目で見られるんだよね。そういえばソージ君達、カードはあるの?」
「カードですか…すみません、持ってません」
「そっか。なくてもお金さえ払えばとりあえず街には入れるから安心して。問題はお金だけど…よし、私が出してあげよう!と言いたいんだけどそんな余裕はないから貸すってことでいいかな?」
「ありがとうございます。助かります」
「いやいや、大したことじゃないよ。どこかのギルドに入ればカードも簡単に作れるし、それを持ってけば、お金も戻ってくるからそれで返してくれればいいよ。むしろ、命を助けてもらったのにこんなことしか出来なくて悪いね」
「ダーマさん、それはいいっこなしにしましょう。僕たちだってこうしてダーマさんのおかげで街に入れるんですから」
「はは、そう言ってもらえると助かるよ。じゃあ門兵には私が話をするからソージ君は適当に合わせてね」
程なくしてバーバラに到着した。門の前には街に入る人で列が出来ていた。
「あー、やっぱり並んでたか」
「いつもこうなんですか?」
「いやいや、いつもではないよ。さっき言った通り明日統一試験があるから、こうして周辺の村から出てくる人が多いのさ」
ダーマと話をしていると前にはあと一組だけとなっていた。
「ウル、そろそろ順番だから降りておいで」
宗司が呼び掛けるとウルは屋根から飛び降りて宗司に抱きついてきた。
人が多いのが少し恐いらしい。
「じゃあ、次。あぁダーマさんか。ん?そっちの子供は?」
「やぁ、お疲れ様。この二人は行商に行った村で会ってね。統一試験を受けたいっていうから一緒に連れてきたんだ。こう見えて腕が立つんだよ?」
「冒険者の卵ってわけか。カードはないよな。じゃあ入街料が必要だけど大丈夫か?」
「ええ、それで構いません。」
「坊主たち名前は書けるか?じゃあこれに書いてくれ」
なんとなくぶっきらぼうな対応だ。
宗司とウルは羊皮紙の指定された箇所にそれぞれ名前を書く。やはりウルに文字を教えておいて正解だった。
その間に別の門兵が馬車の荷物などを確認する。
大丈夫なようだ。
「はいよ。坊主はソウジか。随分達筆だな。嬢ちゃんはえーと、ウルで合ってるか?」
「ええ、合ってます」
ウルはまだ人に慣れないようなので宗司が答えてやる。単純に門兵が強面だからの可能性も否定出来ないが。
「うっし。じゃああとは入街料一人銀貨2枚な。カードとか払い戻しについては…ダーマさんに聞いたみたいだな。じゃあこれで終わりだ。行っていいぞ」
門をくぐると多くの人で賑わっている。それに普人族から獣人、エルフなど種族も様々だ。
「ここは飲食店街なんだ。それと奥に大きな建物があるだろう?あそこが冒険者ギルドだよ。この奥の通りが宿屋街なんだけど…今日は私の家に泊まりなよ」
「いいんですか?」
「もちろんさ。狭くて申し訳ないけどね。ほらこっちこっち」
通りを数本横切り、狭い裏通りを抜けるとこじんまりした、取り繕わずに言えば粗野な家が並んでいる住宅街が現れた。そこにダーマの家はあるらしい。
ただそれは日本人としての宗司の感覚で森の小さな家に住んでいた宗司の感覚で言えばさして暮らすのに問題はない。
共用だという馬小屋に馬車と馬を入れると一際小さな家の前でダーマは立ち止まった。
「ただいま。さぁ二人も入って入って」
「お邪魔します」
「おじゃまます」
「あなた、おかえりなさい。セリナ、カリナ、お父さんが帰ってきたわよ~。あら、そちらは?」
宗司は出てきたダーマの奥さんを見て衝撃を受けた。これまでに見たどの女性よりも美しいエルフだった。思わずダーマの顔を見てしまった。
(雑誌に書いてあった男は顔じゃないっていうのは本当だったのか。いや、でもダーマさんはすごくいい人だしね)
「どうしたんですか?そんなに呆けちゃって」
「サリナの綺麗さに見とれちゃったんじゃないかな」
「いやだわ、あなたったら。もう私もおばさんよ。」
「そんなことないさ。あっと、紹介してなかったね。こちらはソージ君とウルちゃん。危なかったところを助けてくれたんだ。お礼にもならないけど今日は泊めてあげようと思ってね」
「まぁまぁ、それはありがとうございます。狭い家ですけどゆっくりしていってくださいな」
「頭をあげてください。ダーマさんのおかげで街に入れたようなものですから。」
「うふふ、優しい子なのね。ほら、セリナ、カリナ、ソージ君とウルちゃんよ。お父さんを助けてくれたんですって。ご挨拶なさい」
遅れて現れたのはこちらも金髪の少女たち。セリナは綺麗さと可愛らしさが共存している。カリナはウルと同じくらいか少し下でとても可愛らしい。
完全に母親の遺伝子を受け継いでいる。ダーマの成分は微塵も感じられない。
「セリナです。お父さんを助けてくれてありがとうございます」
「わー、狼ちゃんすごーい」
宗司の後ろに隠れるようにしていたウルがカリナの言葉を聞くと宗司を見上げた。
宗司にはウルがどんな表情をしているか見なくてもわかった。お得意のあれだ。
「あっ、僕は宗司って言うんだ。この子はウル。仲良くしてあげてね」
「ウルちゃんって言うんだ~。ねぇ、遊ぼう。そーだ!縄跳びしよう」
カリナはウルの手を掴むと、夕飯には戻ると言い残して外に飛び出していった。
「あらあら、やっぱり子供ってすごいわねぇ。ささ、何もない家だけど入ってください。セリナは水を汲んできて頂戴」
セリナは宗司に恥ずかしそうに頭を下げると奥に戻っていった。流れる金髪をつい目で追いかけてしまう。だが、彼女の後ろ姿にはそれよりも気になる部分があった。
服の背中側はつぎはぎだった。どうやら宗司の予想以上らしい。
今に通されると木を組み合わせただけのテーブルに椅子。
壁からはすきま風が入り、外で遊ぶカリナとウルの声もはっきりと聞こえる。
「さぁソージ君座って座って」
「もうすぐお夕食の準備も出来るから待っててくださいね。私はお鍋見てきますから」
「あ、ちょっと待ってください」
宗司はウルの荷物からいくつかの袋を取り出し、サリナに手渡した。
「これ、良ければ食べてください」
「あら、何かしら。まぁこんなにお肉と果物を。こんなに新鮮なもの頂けないわ」
「ソージ君そんなに気を使わなくても…」
「いえ、僕のいた場所ではこうして人のお宅にお邪魔するときはこうやって何かを差し入れるのは礼儀でしたので。なにもしないというのはなんだか気持ち悪くて」
「そういうことなら頂いちゃおうかしら。今日はご馳走だわ」
サリナは嬉しそうに台所に戻っていった。
ダーマは宗司に申し訳なさそうに頭を下げた。
「ソージ君、すまないね」
「いえ、本当のことですから。それにそういうのはいいっこなしって言ったじゃないですか」
「はは、本当に君には敵わないね。私なんかよりよっぽどいい商人になるよ。」
その時サリナとは入れ替わりにセリナがお茶を持って戻ってきた。
「あれ?これはいつもの出涸らしじゃないな。セリナが大切にしていた茶葉じゃないか。さてはセリナ、ソージ君が気に入ったな?」
「な、何言ってるの、お父さん。こ、これは、あれで、そう、お父さんを助けてくれたお礼だから…ど、どうですか?」
「ん?あ、すごく美味しいよ。ありがとう」
宗司が微笑むとセリナはお盆で顔を隠してしまった。
「わ、わたし、お母さんの手伝いがあるので」
そう言うと恥ずかしそうに台所へと戻っていった。
その後ウルとカリナが戻ってくるとすぐに食事となった。
やはりというべきか、食事は宗司が渡した物を除くと薄味の塩スープだった。
それでも賑やかな食卓は味以上のものを与えてくれた。
いつもなら食事にうるさいウルも文句ひとつ言わずに食べていた。
最後に出てきた果物ではなんとウルが自分の分をカリナに分けたほどだ。
宗司はそれにウルの成長を感じずにはいられなかった。
翌朝、日も昇る前に家を出た。
統一試験の受付は一日中しているようだが、毎回4の鐘がなるころには長蛇の列になるそうだ。
宗司たちは昨日入った門の前の広場にやってきた。
その片隅にいくつかの簡易受付のようなものと大きな掲示板が立てられていた。
既に人が多く並んでいた。
(すごいな、これは。こんなに朝から並ぶのはねずみの国かパチンコ屋くらいだろう。それにしてもまさか異世界に来て試験を受ける羽目になるなんて。入社試験以来だからちょっと緊張するなぁ)
宗司はウルとともに列に並ぶ。とりあえず受付だけなのか列の進みは昨日の入門に比べると早い。
見回すと様々な種族の人が並んでいた。若い男女がやはり多く、中にはウルよりも年下の子供もいる。
「試験には忘れずに番号札とカードを持ってきてくださいね。はい、次の方どうぞ。って、えっ、そそそそソージさん。それにウルちゃんも」
前にいた大柄の男が退いたのを確認すると二人は受付に進み出るとなんと担当はセリナだった。
「やぁおはよう。昨日はありがとう。二人一緒でも大丈夫かな?」
「もちろんです。二人とも統一試験で大丈夫ですか?」
「うん。お願い」
「じゃあこの1番上に名前。その下には希望の試験を書いてください。各試験の開始時間と場所は掲示板に書いてありますので自分で確認してくださいね」
宗司は渡された用紙にざっと目を通す。多くの試験があるが中には受験料を取るところもあるようだ。ただそういったところは仕事というより、釣りなど趣味の団体が多い。中にはファンクラブなんてものもある。
もちろん、今は受ける必要もなく、一文なしのためそういった試験は却下。
主要なギルドは全て無料なので問題はない。
時間が被らなければいくつ受けてもいいようなので、宗司は冒険者、商人、魔法の3つを選んだ。
ウルには冒険者と狩人だ。
提出する前の確認をしていると宗司は気になる記述を見つけた。
「このランク試験っていうのはなに?」
「それはですね、例えば冒険者の場合は上からS~Fに別れていますが、そのどのランク程度の力があるかを見る試験ですね。冒険者は上のランクに行けば行くほど危険も大きくなりますから、どれだけ経験があろうと力がなければ上のランクには進めないようになっているんです」
「なるほど、資格試験みたいなものですか」
「そうです。他のギルドの物も概ね同じです」
「わかった。ありがとう。それじゃあ、これ、お願い」
「はい、確かに。カードはまだですよね?各会場で確認を行っていますのでそれまでに発行しておくようにお願いします。では、こちらがお二人の番号札です。あの、そそソージさん、がんばってください。あ、やだ、私ったら」
「あ、うん、ありがとう。あ、もういくね」
札を渡す際にセリナは宗司の手をがっつりと握る。
後ろからの「まだかよ」という視線に耐えかねて宗司は受付を離れた。
もちろんそれ以外の理由もあるが。
「にーた…セリナ…顔…赤い…なんで?」
「…ウルはまだわからなくていいんだぞ」
宗司達は冒険者ギルドの扉を開いた。
試験を受けるのに必要なカードの発行と試験の受付を行うためだ。
中はやはり多くの人で賑わっていた。
「すみません、カードの発行と試験受付はここですか?」
「はい、こちらでやってます!そちらのお嬢さんも一緒ですか!?」
受付は兎の獣人。名札にはラージと書いてある。確かに声がラージだ。それ以外にもラージなものがあるが培った社会人スキルを発動し、目が行かないようにした。
「あ、あのそんな大きい声出さなくても聞こえますよ」
あまりに大きな声なのでウルはぱたりと耳を折り畳んで抑えてしまっている。
「す、すみません!あたし、新人なもので!」
理由になっていない。
なんだか面倒な予感しかしないので宗司はさっさと済ませることにした。
「あの、とりあえずカードの発行いいですか?」
「は、はい!では、こちらの用紙、じゃない、こっちの用紙、でもなくて、これに記入をお願いしま…あ痛っ」
「その前にやることがあるでしょう。すみません、この子、受付に立つのはこれが初めてで。ここからは私が代わりますね。ラージ、あなたは試験の列の誘導整理をしてきなさい。そちらのほうがその大きな声が役立つでしょう」
ラージに代わって宗司達の前に座ったのは青い髪のエルフ。ファイルを抱え、背筋の張った、いかにも"出来る女"といった雰囲気だ。名札を見るとクールと書いてあった。
名は体を表すとはよくいったものだ。
「では、記入の前にカードの説明をさせて頂きますね。こちらのカードは正式には組合所属証明カードと言います。冒険者、魔法、商人ギルドを中心となり発行しているものでギルドがその人、つまりあなた方の身分を保証するものです。これによって認可を受けた国や街への入国料などを免除されます。再発行には金貨2枚必要ですので無くさないようにお願いしますね。ここまで宜しいですか?」
「ええ、大丈夫です」
「はい。こちらのカードを持っていると自由民という扱いになります。自由民は基本的にそのときにいる国家の所属ということになります。ただし、どこかのギルドの専属になった場合は別ですが、それはまだいいでしょう。なお税金についてはギルドのほうから各国にまとめて支払います。ですのでギルドを通した依頼の報酬はそういった税金と手数料を引いたものということになりますのでご了承ください。また個人で依頼を受けるのは自由ですが税金はもちろん依頼者とのトラブルなどにもギルドは干渉しませんのでご注意ください。その他細かい規約などは入り口脇の掲示板にありますので確認をお願いします。そこまでご理解頂けたら用紙への記入を」
そこまで聞くと宗司はサラサラと用紙に記入していく。
説明がいろいろと書いてあるが日本の甲乙とか書いてあるものに慣れた宗司からすればとても易しい。
自分の分が終わるとウルに簡単に説明して交代した。
「では、えーと、宗司さんですね。冒険者ギルドの第一回入会試験は4の鐘で始まります。ランク試験もご希望とのことですが、時間の希望はありますか?もちろん入会試験に受からなければ自動的に破棄しますのでご安心を」
宗司は他の試験の時間を思い出す。
(えーと、確か魔法ギルドのが9の鐘だから、1時で商人のほうが12の鐘だから4時。ウルの狩人の試験10の鐘があったな。門のところに返金の手続きに行くことも考えて)
「二人とも出来れば13の鐘以降開始がいいんですが大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。丁度13の鐘の時間に空きがありますので、ギルドの脇の訓練所に集合でお願いします。書類のほうは…二人とも不備はないですね。ではこちら、仮のカードです。ギルドに入会すると正式発行となります。ランクが上がればカードも豪華になりますので頑張ってください」
「わかりました。あと、素材をいくつか売りたいのですが大丈夫ですか?」
「素材?あ、薬草なんかを持ってきたんですか。それなら反対側のカウンターで買い取りをしていますのでそちらでお願いします」
指示通り反対のカウンターに向かうとこちらは人が少ない。恐らく通常業務を行うエリアなのだろう。
「い、い、いらっしゃいませ!こちらは買い取りカウンターです!あ、あなたはさっきの!す、すみません!」
どこかで聞いた声だ。というかこんな大きな声を出しているのは建物内に一人しかいない。
「あ、どうも。列の整理に行ったんじゃないですか?」
宗司が話を切り出すとさっきまでの肩をすぼめる。ラージがスモールになってしまった。
「行きました。でも男の人の目がなんだか怖くて声がでなくて…それで人の少ないここに座ってろって」
(たらい回しにあったってことね。でも視線が集まるのは…わかるなぁ)
「まぁ、元気出してください」
「ん…どんまい」
「ありがとうございます…あっ、買い取りですよね!それなら大丈夫です。たぶん、きっと!」
(本当かよ!まぁ掲示板には鑑定と査定は専門の人がするって書いてあったし、大丈夫か)
「ウル、リュックから毛皮なんかを出しといてくれ」
「わかった」
ウルと協力してカウンターの上に次々と素材を積んでいく。すぐにカウンターには小さな山が出来た。
「ひゃ、こ、こんなに!?え、えと、確かカードを貰って、それでえーっと」
「落ち着いてください。鑑定士さんを呼ぶんじゃないですか」
「あ、そうでした。鑑定士さーん。お願いしまーす」
ラージが大声で呼ぶと鑑定士と思われるおじさんが眉間にシワを寄せてやってきてラージを怒鳴り付ける。
(大丈夫なのか、このギルド)
宗司は早くも心配になってきた。
時間を知らせる鐘は朝5時が1の鐘。そこから1時間ごとに鳴り、夜7時の15の鐘が最後です。