〈国王…父からの叱責と謝罪〉
ステイルは、国王に連れられて国王の私室に来ていた。
国王は、ため息混じりに「なんと馬鹿げたことをしてくれたのだ。」と半分呆れたような口調で話し始める。
ステイルは国王…父の目を見る事は出来ず沈黙していた。
「…なぜ、アヤナーラを閉じ込めた?」
「……彼女が、私の名を呼んでくれなかったからです。死の淵にあってなお、彼女が求めたのは私ではなく、あのアキトという男だった……!」
ステイルの声が震える。
「私は幼き頃より、彼女を我が物にしたかった。教師に心を殺す教育を叩き込まれ、孤独が当たり前だった私にとって、彼女の笑顔だけが光だったのです。……学生時代、彼女が他の男と話す姿を見るたび、どす黒い嫉妬が心を蝕みました。結婚してようやく、すべてが手に入ったと思ったのに……彼女の瞳には、いつも私ではない『誰か』が映っていました。」
ステイルはギリッ、と奥歯を噛み締めた。
「それが許せなかった。私だけを見、私だけを愛してほしかった。だから……」
「それで、禁忌の魔道具にまで手を染めたというのか!彼女の記憶を、心を、その手で粉々に破壊してまで!」
国王の地を這うような低い声が、部屋に響き渡った。
ーー本当は、わかっていた。
彼女が私を前にして心から笑わなくなったことも、その瞳が絶望と恐怖に塗りつぶされていたことも。
別の男を忘れてくれるなら、彼女が人形になっても構わないとさえ思っていたのだ。
あんなに欲しかったはずの笑顔を、自分の手で握りつぶしていた。
その事実にようやく直面し、ステイルの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「…アヤナーラは、アルベルト殿下ではなくお前を選んだ。次期国王となるお前を支えることが義務だという思いもあっただろう。だがな、ステイル。あの子は先程こう言ったのだ。『アヤナーラは幼き頃より、ステイル様をお慕いしておりました』とな」
ステイルが息を呑む。
「お前が、彼女の愛を、そして何よりお前自身を信じることが出来ていたなら、こんな悲劇にはならなかったはずだ。……だが、これは私への罰でもあるのだろう。お前を完璧な王に育てようとするあまり、一人の息子として愛を注ぐことを忘れていた。……すまなかった、ステイル」
国王は椅子から立ち上がり、一人の父親として、震える息子の肩に手を置いた。
その温もりに、ステイルの心の中でせき止めていたものが決壊した。
「あっ…父上…私は、私は……ッ」
「お前の優秀さは、私が一番よく知っている。アヤナーラのこと以外ではな。」
わすがに苦笑を漏らし、国王は力強く告げた。
「本来なら、許されることではない。だが、私は、今でもお前が次期国王に最も相応しいと信じている。……一年だ。一年の猶予を与える。その間に、アヤナーラと共に公務に励み、成果を出せ。そしてーー何よりも、あの子の笑顔を必ず取り戻し、幸せにしてみせよ!これは王としての命であり、父としての願いだ。」
「はい……っ、はい……!ありがとうございます、父上……!」
ステイルは子供のように声を上げ、泣きじゃくりながら何度も頷いた。




