第三章 第二十一話 今回の狩場は、地雷湿原
「場所は……そうだな。風船湿原にするか」
「にゃ?! 地雷湿原かにゃ?!」
風船湿原、またの名を地雷湿原。
経験値効率だけならば、非常に美味しいフィールドである。
だが、出現するモンスターの傾向ゆえに、ほとんどのプレイヤーから忌み嫌われているフィールドだ。
ウィル――頭の中で変換するのは、面倒だ。
「パーティーメンバーしかいない時は、本名で呼んでいいか? 全員、身バレしているのだから」
俺の問いに、皆が答える。
「うん。いいよ!」
「にゃ。了解にゃ!」
「分かりました。他の人がいる時は、注意しましょう」
「まあ、ニカは元々ニカだし」
全員の了承が得られた。
ここからは、実名で呼ばせてもらおう。
「あそこだと、僕は飛燕くらいしか使えないけれども……」
「私はもっと悪い。手斧を投げるのが、精一杯」
結希とニカが、難色を示す。
気持ちは、分からなくもない。
このフィールドに出現する代表的なモンスターは『バルーンスライム』、『ボムファンガス』、『ブラストトード』、そしてレアモンスターとして『マナバルーン』の4種類だ。
これらのモンスターには、共通しているところがある。
それは「どのモンスターも、自爆攻撃をおこなってくる」ということだ。
バルーンスライムならば、赤くなってから距離を取ることで、何とか対応できる。
ボムファンガスも、爆発するまでに時間があること、弱めの毒霧が自爆後に残るだけであることから、対応は比較的容易だ。
だが、ブラストトードから一気に難易度が上がる。
爆発時の威力が上昇し、近接攻撃のキャラクターが逃げる猶予が少ないのだ。
最悪なのは、マナバルーン。
魔力による爆発なので、物理防御力よりも魔法防御力の方が重要になる。
近接攻撃系のキャラクターは、魔法防御力が低めであり、致命傷になりかねない。
それならば、遠距離攻撃タイプだけで入ればいいと考えるだろう。
だが、ブラストトードの跳躍力、踏み潰しによるダメージは、相当なものだ。
さらにバルーンスライムも、意外と移動速度が速い。
足止め役がいなければ、蹂躙されるだけという結果になる。
故に、プレイヤーが蔑称として使うのが「地雷湿原」。
不人気フィールドの中でも、上位に入る場所だ。
「だが、奏の経験値稼ぎにはもってこいだ。俺やみかんにとっても、相性は悪くないフィールドだからな」
自爆するモンスターは、誘爆という現象が発生することがある。
群れの一体を自爆させられるだけのダメージを、遠距離から与えることができれば、群れをまとめて処理することが可能なのだ。
当然、入手できる経験値も高い。
「そうなると、結希やニカは、防御に徹するのが良いにゃ」
遠距離攻撃ができる俺たちが、敵を倒す。
バルーンスライムの突撃や、ブラストトードの踏み潰しなどは、結希やニカが防御する。
距離を取ったうえで、再度遠距離攻撃。
この流れなら、悪くないだろう。
「どうだろうか? 結希とニカには負荷がかかるが、奏の成長には最適だと判断するが」
俺は、二人に問いかける。
「仕方ないね。分かったよ!」
「防御し続けていれば、経験値も入る。考えてみれば、悪くない」
結希とニカも、了承した。
さて、狩りの時間だ。
フィールドに、プレイヤーはいない。
そのため、狩り放題だ。
最初に遭遇したのは、バルーンスライムの群れ。
30体の大群が、こちらに向かって突撃してくる。
「奏、一体に攻撃を集中!」
「分かりました!」
奏が、真ん中の一体に攻撃を集中させる。
赤くなったバルーンスライムは、膨らんでいき……爆発する。
それによって、隣を飛んでいたバルーンスライムも赤くなり、爆発が連鎖していく。
「た~まや~!」
「ば〇え~ん!」
ニカはともかく、みかんは待て。
色々な意味で、それはまずい。
「次、来るよ!」
結希の言葉に、緊張が戻る。
今度はボムファンガスが、5体ほどこちらに向けて進んできた。
さらにバルーンスライムも10体混ざる、混合編成だ。
「バルーンスライムを狙え! 誘爆すれば、恐らくボムファンガスも倒せるはずだ!」
「了解です!」
奏が、一体に攻撃を集中させる。
二連射で、確実に仕留めるようだ。
結果、ボムファンガスを含めて敵は全滅。
毒霧がかすかに、漂うだけとなった。
「次、ブラストトード!」
結希の声に、俺は反応する。
かなりの大物であり、これは奏だけでは厳しいだろう。
「俺もやる! ニカ、守れ! 結希も飛燕で援護!」
俺の銃、結希の飛燕、みかんの爆弾、奏の矢が一斉に突き刺さる。
それでもなお、倒すことができなかった。
こちらに向けて跳躍する、ブラストトード。
「あなたは死なないわ。私が守るもの」
ニカが、巨体を盾で受け止めた。
そして、全員で距離を取る。
一度着地すると、すぐに動けないのがブラストトードの弱点だ。
……ニカも、みかん並みにまずい発言をしているが、とりあえず回避が先だろう。
距離を取って、再び一斉攻撃。
今度は耐えきれず、ブラストトードは大爆発を起こした。
近くを漂っていた、マナバルーンが巻き込まれる。
「うわ、経験値が凄いことに!」
結希が、驚きの声を上げる。
マナバルーンは、極めて経験値の高いモンスターだ。
偶然とはいえ、非常に幸運な出来事であった。
「もう少しだけ、稼いでから帰ろう。もっとも、油断は禁物だが」
俺の言葉に、全員が頷いた。




