表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/71

第三章 第二十一話 今回の狩場は、地雷湿原

「場所は……そうだな。風船(ふうせん)湿原にするか」

「にゃ?! 地雷(じらい)湿原かにゃ?!」


 風船湿原、またの名を地雷湿原。

 経験値効率だけならば、非常に美味しいフィールドである。

 だが、出現するモンスターの傾向ゆえに、ほとんどのプレイヤーから忌み嫌われているフィールドだ。


 ウィル――頭の中で変換するのは、面倒だ。


「パーティーメンバーしかいない時は、本名で呼んでいいか? 全員、身バレしているのだから」


 俺の問いに、皆が答える。


「うん。いいよ!」

「にゃ。了解にゃ!」

「分かりました。他の人がいる時は、注意しましょう」

「まあ、ニカは元々ニカだし」


 全員の了承が得られた。

 ここからは、実名で呼ばせてもらおう。



「あそこだと、僕は飛燕(ひえん)くらいしか使えないけれども……」

「私はもっと悪い。手斧を投げるのが、精一杯」


 結希とニカが、難色を示す。

 気持ちは、分からなくもない。


 このフィールドに出現する代表的なモンスターは『バルーンスライム』、『ボムファンガス』、『ブラストトード』、そしてレアモンスターとして『マナバルーン』の4種類だ。


 これらのモンスターには、共通しているところがある。

 それは「どのモンスターも、自爆攻撃をおこなってくる」ということだ。


 バルーンスライムならば、赤くなってから距離を取ることで、何とか対応できる。

 ボムファンガスも、爆発するまでに時間があること、弱めの毒霧が自爆後に残るだけであることから、対応は比較的容易だ。


 だが、ブラストトードから一気に難易度が上がる。

 爆発時の威力が上昇し、近接攻撃のキャラクターが逃げる猶予が少ないのだ。


 最悪なのは、マナバルーン。

 魔力による爆発なので、物理防御力よりも魔法防御力の方が重要になる。

 近接攻撃系のキャラクターは、魔法防御力が低めであり、致命傷になりかねない。


 それならば、遠距離攻撃タイプだけで入ればいいと考えるだろう。

 だが、ブラストトードの跳躍力、踏み潰しによるダメージは、相当なものだ。

 さらにバルーンスライムも、意外と移動速度が速い。

 足止め役がいなければ、蹂躙されるだけという結果になる。


 故に、プレイヤーが蔑称として使うのが「地雷湿原」。

 不人気フィールドの中でも、上位に入る場所だ。


「だが、奏の経験値稼ぎにはもってこいだ。俺やみかんにとっても、相性は悪くないフィールドだからな」


 自爆するモンスターは、誘爆という現象が発生することがある。

 群れの一体を自爆させられるだけのダメージを、遠距離から与えることができれば、群れをまとめて処理することが可能なのだ。

 当然、入手できる経験値も高い。


「そうなると、結希やニカは、防御に徹するのが良いにゃ」


 遠距離攻撃ができる俺たちが、敵を倒す。

 バルーンスライムの突撃や、ブラストトードの踏み潰しなどは、結希やニカが防御する。

 距離を取ったうえで、再度遠距離攻撃。

 この流れなら、悪くないだろう。


「どうだろうか? 結希とニカには負荷がかかるが、奏の成長には最適だと判断するが」


 俺は、二人に問いかける。


「仕方ないね。分かったよ!」

「防御し続けていれば、経験値も入る。考えてみれば、悪くない」


 結希とニカも、了承した。

 さて、狩りの時間だ。


 フィールドに、プレイヤーはいない。

 そのため、狩り放題だ。


 最初に遭遇したのは、バルーンスライムの群れ。

 30体の大群が、こちらに向かって突撃してくる。


「奏、一体に攻撃を集中!」

「分かりました!」


 奏が、真ん中の一体に攻撃を集中させる。

 赤くなったバルーンスライムは、膨らんでいき……爆発する。

 それによって、隣を飛んでいたバルーンスライムも赤くなり、爆発が連鎖していく。


「た~まや~!」

「ば〇え~ん!」


 ニカはともかく、みかんは待て。

 色々な意味で、それはまずい。


「次、来るよ!」


 結希の言葉に、緊張が戻る。

 今度はボムファンガスが、5体ほどこちらに向けて進んできた。

 さらにバルーンスライムも10体混ざる、混合編成だ。


「バルーンスライムを狙え! 誘爆すれば、恐らくボムファンガスも倒せるはずだ!」

「了解です!」


 奏が、一体に攻撃を集中させる。

 二連射で、確実に仕留めるようだ。


 結果、ボムファンガスを含めて敵は全滅。

 毒霧がかすかに、漂うだけとなった。


「次、ブラストトード!」


 結希の声に、俺は反応する。

 かなりの大物であり、これは奏だけでは厳しいだろう。


「俺もやる! ニカ、守れ! 結希も飛燕で援護!」


 俺の銃、結希の飛燕、みかんの爆弾、奏の矢が一斉に突き刺さる。

 それでもなお、倒すことができなかった。

 こちらに向けて跳躍する、ブラストトード。


「あなたは死なないわ。私が守るもの」


 ニカが、巨体を盾で受け止めた。

 そして、全員で距離を取る。

 一度着地すると、すぐに動けないのがブラストトードの弱点だ。

 ……ニカも、みかん並みにまずい発言をしているが、とりあえず回避が先だろう。


 距離を取って、再び一斉攻撃。

 今度は耐えきれず、ブラストトードは大爆発を起こした。

 近くを漂っていた、マナバルーンが巻き込まれる。


「うわ、経験値が凄いことに!」


 結希が、驚きの声を上げる。

 マナバルーンは、極めて経験値の高いモンスターだ。

 偶然とはいえ、非常に幸運な出来事であった。


「もう少しだけ、稼いでから帰ろう。もっとも、油断は禁物だが」


 俺の言葉に、全員が頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ