第一章 第三話 始まりの警報
国歌斉唱、学校長祝辞。
式は、円滑に進んでいく。
そして、来賓祝辞の時に事件は起きた。
「久郎、これ!」
「ああ。分かっている!」
空気が一変する。
凄まじいプレッシャーが、俺たちに襲い掛かる。
間違いない。
バグ発生の兆候だ。
しかも、今までに経験したことがないほど、強烈なものだった。
「慌てないでください。この場所がもっとも安全です。動かないでください!」
辛うじて、パニックは避けられている。
しかし、このままではまずいことになるのは、間違いない。
「ヒーロー科二年生は、直ちに出撃してください!」
アナウンスが流れる。
二年生たちが、整然と席を立つ。
その動きには迷いがなく、訓練という言葉では説明できない「慣れ」があった。
「特別措置。ヒーロー科新入生も、出撃!」
舞の代理を担当している教師が、俺たちに命じた。
そうなるだろうと、思っていた。
明らかに今回の反応は、二年生だけで処理しきれる範囲を超えている。
「よっしゃ、行くぜ! 俺の力、叩き込んでやる!」
赤い髪をした男子生徒が、勢いよく飛び出した。
「うわあ……指揮系統、完全に無視しているね」
「だな。この流れは間違いなく、死亡フラグだぞ」
俺たちは小声で、言葉を交わす。
ゲームや漫画で何度も見た展開であり、結希も同じように思っているようだ。
俺たちは教師の指示に従い、隊列を組んで体育館を出た。
学校のグラウンド。
明らかに、通常の学校よりも広く作られており、ヒーロー科が訓練に使用することを想定された場所。
そこに、巨大なバグが存在していた。
「おかしい。学校には、バグを食い止めるはずの結界があるはずだが」
「だよね……なんだか、嫌な予感がする」
俺たちは、言葉を交わす。
結希の予感なら、間違いない。
異常事態が発生しているのは、確実だ。
「どりゃ! っ、硬ってえ~!!」
既に、戦闘は始まっていた。
二年生が中心となり、陣形を組んでバグと対峙している。
そして真紅の機体が、遊撃という形でバグの注意を引いていた。
機体。
バグに対抗するために、ヒーローが使う力。
それぞれの個性に合わせ、最適化されるため、一つとして同じものは存在しない。
これを開発したのが、藤花コーポレーション。
担任の舞は、会長の妹だ。
なぜそんな人が、学校の教師をしているのか。
さすがに、俺でも答えは分からない。
「新入生、前衛と後衛に分かれ、攻撃開始!」
「「おお!!」」
新入生たちも、次々と機体を纏う。
「久郎、僕たちも行くよ!」
「分かった。『フェイズシフト』!」
掛け声とともに、周囲の空間に歪みが生じる。
そして、俺たちの機体がこの場に現れた。
結希の機体は、純白の『タケル』。
そして俺の機体は、漆黒の『レイヴン』。
共に、幼いころから愛用している相棒だ。
「それじゃあ、行くね! 久郎も支援、頑張って!」
「分かった。全力を尽くす」
そして、新入生を交えた戦闘が始まった。




