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第二章 閑話その一 交わらない時間

 Side メア、ゆめ


 奏が歌で、世界を塗り替えた後のことである。


挿絵(By みてみん)


「ターゲット確認。状況は……既存パターンと異なる」


 私は、カラオケボックスの近くで待っていた。

 迷子の子供と間違われ、何度も警察署に連れて行かれそうになった。――余談だ。


 この日、舞はここに仲間たちを集め、ループやトウキョウの現状などについて、説明を行う。

 そして各自解散し、結希と久郎、三人組、そして舞は単独で帰るはずであった。

 そのことを確認し、問題がなければこの場を去るつもりであった。


 しかし、予想していた状況とかなり異なる。


 結希の隣には、この段階で接触するはずのない奏の姿があった。

 そして舞の横には、久郎がいる。

 今までにないパターンだ。


「ふむ……我が、中の様子を探っていた方が、良かったかのう?」


 私の隣にいる、ゆめが語り掛ける。


挿絵(By みてみん)


 ゆめ。

 私の大切な存在であり、現時点では私と行動を共にする仲間。

 そして毎回、ループの中で消えるという結末を迎えている。


 彼女に科せられた『ギアス』は、物質干渉不可。

 ポルターガイストなどのような形ですら、物を扱うことができないという、私と比べても明らかに重い枷。

 実世界に干渉するには、彼女の「切り札」を使うしかないのだ。


 その代わりに、彼女が有している『ギフト』は『幽世(かくりよ)』。

 この世とあの世を、自由に行き来し、状態を確認することもできる。

 また『ギアス』の副次的な効果として、壁などの遮蔽(しゃへい)物を通り抜ける力も持っている。


「その必要は無い。恐らく舞の結界で、妨げられていたと思う」


 舞。

 私の親友であり、協力者。

 彼女の慎重さは、私が一番よく分かっている。

 何しろ、かつてはルームメイトであったのだから。


 恐らく部屋には、何かしらの結界が使われているであろう。

 ゆめは物質的干渉には強いものの、霊的干渉は苦手としている。

 彼女が行ったとしても、多分無駄になっていただろう。


「まあ、そなたが言うのならば、間違いないじゃろうて」


 ゆめが答える。


 私とゆめは、共にループの際に「年齢」を犠牲にしている。

 ループするたびに、若返っていく私たち。

 既に見た目は、十歳程度になってしまった。


 しかし、ループのことを覚えている私たちの精神年齢は、高い。

 二十四歳の時から、ほぼ一年間を過ごしたのちにループしている。

 結果、十四年分の経験を重ねているのだ。


 見た目は十歳、中身は三十八歳。

 体と心のアンバランスに、脳が悲鳴を上げている。

 もう、次のループには耐えられないだろう。


 ゆめの姿も、若返っている。

 私と同じ、十歳程度。

 そして、彼女はわざと「老婆」のような口調を使っているようだ。

 舞が昔、語った概念に例えるならば、いわゆる「のじゃロリ」というものに該当するのだろう。

 なぜそのような言動をするのかは、私には分からない。


「そなたはどうする? 我は、奏と結希についていくつもりじゃが?」


 彼女は、ほとんどのループで奏と行動を共にしている。

 今回はいつもより、かなり早い別れになりそうだ。


「私は、まだ会うことができない。力を手に入れてからでないと」


 今の私は、無力だ。

 幸いフジこどもの国という、児童養護施設に所属することはできた。

 だが、機体を持たない今の段階では、舞と接するには早すぎる。


「ふむ……ばあ!」


 ゆめがいきなり、目の前で変顔をする。

 思わず、ふき出してしまった。


「何をするの?」

「見ての通り、笑わせたのじゃ」


 意味が分からない。

 なぜ今、笑わなければいけないのか。


「笑う門には福来る、というじゃろう。それに、今の我たちの外見を最大に生かすには、無邪気にしていた方が良い。それを、伝えたかったのじゃ」


 ゆめは、いつもそうだ。

 自分のことよりも、人が苦しむのを見る方が辛いらしい。

 ループで脱落する理由は、ほぼ全て『奇跡の使用回数』を使い果たした結果なのだから、筋金入りである。


「さて、我は行くぞ。そなたはそなたの道を、歩むがよい」


 ゆめが、去っていく。

 その背中に向けて、私はつぶやく。


「バイバイ、ゆめ。願わくは、消える運命から逃れることを」


 そして私は、この場を去ることにした。

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