第零章 閑話 メアの独白
こちらについても、訂正を行いました。
細かい描写や、矛盾点などについて修正しております。
世界が、青い光とともに巻き戻されていく。
何度も経験した、おなじみの感覚。
だが、次はないだろう。
今、私は何もすることができない。
だから、ここで考えをまとめ、言葉にしておく。
私の名前は、メア。
有栖川メアが、正式な名前。
「この世界は、恐らくそちらとは異なる――フィクションの世界」
今までのループで、私が感じ取ってきたことをまず述べる。
恐らく『そちら』の世界には、私たちの使う機体は存在していないだろう。
もしかしたら、もっと巨大なロボットが、実用ではなく展示用として存在しているかもしれない。
私には、それを知るすべはないのだが。
「そのため、登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ない」
これも、事実だ。
「なお、登場人物はすべて18歳以上である」
――ギアス、発動。
私が口にした言語に、世界の「修正」が加えられる。
これが、私が『奇跡を起こす力』と引き換えに背負ったギアス。
その名は『明らかな嘘』。
嘘をつくこと、そのものは可能。
しかし、その嘘は世界の修正力によって、必ず相手に嘘だと分かる形で伝えられる。
結果として、嘘によって相手をだますことは、極めて難しい。
それが、このギアスの特性。
だから私は、基本的に嘘をつかない。
ついたとしても、意味がないから。
「私は、何度もループを繰り返している」
事実。
ゆえに、ギアスは発動しない。
「ループのたびに、年齢を一つずつ失っていく」
これも事実。
ただし、失うのは「後」ではなく「前」。
結果として、私は一年ずつ若返っていることになる。
元々私は、舞と同年齢であった。
ループを繰り返す中、年齢差はどんどん大きくなり……今では教師と生徒という立場ですら、かかわるのが難しくなってしまっている。
この言葉のような、意図的な省略はギアスの対象外。
そして、この形であれば私は「嘘をつかずに語る」ことができる。
相手を騙すとするならば、嘘がつけないことを逆に利用すればよいのだ。
「今回のループで、舞――ループの輪を観測する、協力者を得ることができた」
これが、今回の最大の成果。
彼女の頭脳ならば、次のループは、これまでとはまったく違う形になると推測される。
「しかし、もう私は限界」
士郎の指摘は、正しい。
次の世界で、私は十歳の少女として生まれ変わることになる。
積み重なった知識と、未成熟な肉体。
一方だけならば、まだ何とかなるかもしれない。
しかし、40年近い経験が、10歳の体に宿るといういびつな状態。
その乖離は大きすぎて、これ以上耐えることは不可能であろう。
「次が、最後のチャンス」
これもまた、事実。
いわゆる「ループもの」では、主人公が何度もやり直し、最善の未来を選び取る。
けれど、私にやり直すための余地は、残されていない。
ループものとしての前提が、壊れた状態なのだ。
「幸い、残された奇跡の数は回復する」
最後の奇跡を使い、世界が巻き戻るたびに、『奇跡を起こす力』の使用回数はリセットされる。
その回数は、わずか六回。
使うタイミングは、慎重に考えなければならない。
(ふむ。いよいよ最後のチャンスじゃのう)
想いが、私に向けられる。
彼女の名は、ゆめ。
私とともに、長いループを経験してきた、姉妹のような存在。
(いつも通り、我はそなたと共に歩む)
彼女もまた、強力な力を有した存在。
私とは強い絆で結ばれており、心強い。
(然るべき時には、また道を分かつがの)
そして、必ず私の元から去っていくのも、定められた宿命。
私とは違う角度で、このループを終わらせようとしているのだから。
(われてもすゑに、あはむとぞおもふ……もしかしたら、再び一つになるかもしれぬがな)
そう、願いたい。
恐らく彼女にも、過酷な運命が待ち構えているのだから。
「……そろそろ、始まりの時」
光の流れが、ゆっくりと速度を落としていく。
それは、私が「この世界の、最終決戦の一年前」に戻る合図。
「……舞、お願い。あなたがキーになるはず」
その願いと共に。
世界は、完全に巻き戻された。




