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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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覚悟(3)

 「おかえり、ハル君。」

 「ただいま、かあさん。紹介するね、こちら、シルビアーノさん。王立学園時代の同級。」

 「こんにちわ、ハルテイラの母、ハースワット・ラズベールです。」

 「こ、こんにちわ。シルビアーノと申します。」

 シルビアーノは、元伯爵家令嬢らしい振る舞いで、ハースに挨拶した。


 「以前にも、我が家へいらしたことあったわよね?確か、ハル君が専科1年の時。」

 「はい、その節は大変お世話になりました。」

 「かあさん、いろいろ事情を説明したいんだけど、できれば、ゼノ爺たちにも聞いて欲しいんだ。なので、」

 「えぇ、詳しいことは夕食の後にしましょ。それまでは、ゆっくりしてらっしゃい。とは言っても、気疲れしちゃうわよね?とにかく、私たちは、あなたのことを悪いようにはしないので、安心してね。だから、ねっ?」

 「は、はい。お気遣いいただき、ありがとうございます。」

 「ほら、ハル君。何、ボ〜っとしてるの。ちゃんとエスコートしてあげなさい。」

 「あ、はい。ごめん、シルビアーノ。それじゃぁ、かあさん、また後ほど。」

 と言って、ハルは、シルビアーノを客間に案内した。シルビアーノも、改めてハースに会釈して、ハルの後ろをついていく。二人の後ろ姿を見ながら、ハースがつぶやく。

 「そう、あの子なのね、ロゼリアールさんのお嬢さん。」

 そして、

 「アキ!」

 「はい、奥様。お呼びでしょうか?」

 「えぇ、急で申し訳ないんだけど、一つ、お使いを頼んでもいいかしら?」

 「かしこまりました。」

 ハースは、領都への使いをアキに頼んだ。


 客間に通されたシルビアーノ。大きく息を吐き、

 「覚えていてくれたんだ。」

 と、少しホッとした表情を浮かべた。そして、これからのことを考えた。

 おそらく、全てを、それこそ包み隠さず話すことになるだろう。一番の気掛かりは、ハルを“始末“する想定だった、ということ。どのように話すか?言葉を濁すか、いや、そのまま素直に話すべきだ。変に濁せば、それはそれで、余計な誤解を生む可能性がある。場合によっては、今なお、その狙いがあると思われてしまう。すでに、その思いは消え去っているのだから、それは悪手だ。だから、全てを話す。父のこと、この国を追われてからのこと、勇者の一人となったこと、そして、ハルを狙って、この国に戻ったこと。

 「うん!」

 シルビアーノは、腹を括った。


 (さて、今回のこと、何からどのように話を進めようか?)

 ハルは、自室に戻り、今晩のことを考えた。どのように話を切り出すか。何から話すべきか。何について助言を貰えばいいのか。そして、最大の自問。僕はどうしたいのか。少なくても、感情的になってはダメだ。特に王国にいる多くの間者のことは、冷静に対処しないと取り返しのつかないことになる。アレスタ王女やシルベスタ現女王のこともそうだ。そして何より、姉フィレスのこと。おそらくシルビアーノは、フィレスのことも隠さずに話すだろう。でもなぜ、イントリーニアは姉フィレスを狙うのか。これだけは、ハルにも見当がつかない。もしかしたら、父母ならわかるのか?とにかく、間者のことだけは、アレスタ王女に伝えるべきだ。でも、どうやって?書簡を送るにしても、それはそれで危険だ。必ず内容を見られる。ならば・・・。

 「試してみるか。」

 そうつぶやいて、ハルは、アレスタに念話を飛ばし、間者の件、獣魔騒動の件、アレスタ自身と女王の件などの調査結果を報告した。そして、間者の件については、王家内にも存在しうることから、ある提案を持ちかけた。それは、今話した内容をそのまま書簡にしたためて送る、というもの。もし、同じ内容が届けば、まずは、アレスタ周辺に間者はいない、と考えられる。ただし、内容が異なる場合、それは・・・。最初は、驚き、俄かには信じがたい、と言っていたアレスタであったが、最後は、ハルの提案を採用してくれた。

 次に、ハルは、フィレスに念話を飛ばした。内容はシルビアーノのこと。正直に、かつ、端的に伝えた。そして、このことで、フィレスにも何かしらの邪魔が入るかもしれないこと。王都に潜入している間者のことにも触れ、くれぐれも油断しないように、そして、特に師団員に対しては、たとえ相手が誰であれ、その人を信用したとしても“言葉“は信じないように、と強くお願いした。流石に、“狙われている“とは言えなかったが。


 これで、当面の懸念は払えた。あとは、自分自身、腹を括るだけだ。何があっても、王女を助ける。女王を助ける。王国を助ける。そして、フィレスを助ける。そう、ハルのやるべきことは、誰かを守ることでも誰かを救うことでもなく、“誰かを助ける“こと。その“誰か“の力を信じて。そのことをもう一度、“コア“に焼き付けた。

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