幼馴染
あれから数日経った中番の日。
「センパイ、大丈夫ですか?」
「あぁ、何とかな。グエェ〜。」
「あ〜ぁ、はい、お水です。」
「スマン、いや〜、参ったね。」
「まったく、どうしたんですか?センパイらしくもない。」
「あぁ、実は、昨日、久しぶりに幼馴染と飲んでな。」
「幼馴染?」
「あぁ、師団にいるヤツなんだが、本当、久しぶりに休日が一緒になったんで、つい、朝から呑んじまってな。」
「朝からですか?でも、センパイ強い方でしたよね?」
「いやぁ、その幼馴染ってのが、とんでもなく強くてな、そのことすっかり忘れてて、同じペースで呑んじまって、このザマよ。」
「そうだったんですね、でも、そろそろ交替の時間ですし、ホント、大丈夫ですか?」
「う〜ん、たぶん、だい、グエェ〜。」
「わ〜、もう一杯お水持って来ますね。」
「グエェ〜。」
「はい、お水。」
「お〜、スマねぇ。」
「そうだ、センパイ、ちょっと待っててくださいね。」
「おん?」
ハルは急いで事務所の近くにある薬師の店へ駆け込んだ。
“カラン“
「いらっしゃいませ〜、って、ハルか。どした?」
「ハルかって、相変わらず愛想がないねぇ〜。」
「そんなことないよ〜。(愛想よく)何か御用でしょうか〜?」
「はいはい。あのさ、お酒飲みすぎた時によく効くお薬ってあるの?」
「へ〜、ハルもお酒呑むんだ〜?」
「いや、僕じゃなくて、センパイが、ね。」
「な〜んだ、違うのか。呑み過ぎに効く薬ね〜。あるわよ、確かこの辺に・・・」
「そういえば、お師匠さんやミーシャさんは?」
「っと、あった、これこれ。はい、これよ。師匠は、3日前から籠って錬金中よ。私とミーシャは昨日交代したの。」
「そうなんだ、大変だね。ありがとう、いくら?」
「まぁ、仕方ないわね。何か大量に回復用ポーションが必要らしいのよね、薬師で手分けしてるわね。あぁ、いいわよ、サービスしておく。」
「えぇ、それは悪いよ。お師匠さんにも怒られるでしょう?」
「別に大丈夫よ、ハルが相手だから。でも、まぁ、どうしてもって言うのなら、今度の休日、ちょっと付き合ってよ。」
「付き合う?」
「そう、“カンミ“でのお食事。もちろん、ハルの奢りで。」
「は〜、なるほど、なら、それで。」
「やった〜、約束だよ〜。」
「はいはい。休みの前の日に寄らせてもらうよ。」
「うん、わかった。じゃ、まいど〜。」
彼女は、ラベンドアール辺境伯の領立学園で一緒だった幼馴染のヒナミ・アズロイ。職業は“薬師“。成績は優秀だったので、王都にあるサンフラン高等薬学園に入学。卒業後も王都に残り、三大薬士の一人、フリージア薬士に師事している。何でも、薬学園在学中にフリージア薬士に認められて、本人の意思に関係なく、決まったとか。ところでこのフリージア薬士。三大薬士の中でも一番の腕前だとか。その人に師事しているヒナミが薦めてくれたこの薬なら、すぐにセンパイの状態も良くなるだろうと薦めたところ、
「うわっ、にっが〜‼︎これ全部飲まないとダメかな〜。」
「ダメです。薬師の人が、一気に飲むように、と言ってました。」
「うぇ〜、わかったよ、頑張ってみるよ。」
“ゴクッゴクッ“
「うわ〜、クホッ。」
フィオレッティは、何とか薬を飲み干したが、あまりの苦さに、少しうずくまっていた。しかし、急に立ち上がり、
「へ〜、すごいな、ほんとに何ともなくなった。」
「どうですか?」
「あぁ、大丈夫になった。いや〜、スゲ〜苦かったけど、今は何ともない。すごいなこの薬は。」
「だからって、同じことを繰り返さないでくださいね。」
「あぁ、わかったよ。この苦さはもうこりごりだよ。で?この薬、いくらだ?」
「それが、サービスってことで、お金は払ってないです。」
「そうか。で、その薬師、前に言ってたハルの幼馴染さん、だろ?」
「はい、そうですが?」
「じゃぁ、これで。今度食事でも誘ってやれ。そん時、お礼言っといてくれ。」
「えっ?いいんですか?」
「構わん、構わん。」
「すみません。」
「さぁて、仕事に入りますかねぇ。」
と言って、ハル共々、仕事に入った。
後日、約束通り、ヒナミに付き合って、“カンミ“で食事をした。フィオレッティのことを話し、お礼も言った。
「そんなこといいのに、ねぇ。律儀だこと。でも、いいセンパイね。」
「うん、信頼のおけるセンパイ、だよ。」
通常は薬師。薬師の中で、一定のレベルを超えると“薬士“になる。薬師は数はいれど、“薬士“は数える程度しかいない。その中の上位3名が“三大薬士“と呼ばれている。




