第四章 交差する視線
物語はいよいよ核心に近づいていきます。
隠された真実に手を伸ばそうとするフィオナたちの前に、思いもよらぬ壁が立ちはだかる――。
ここからが本番、ぜひ読んでみてください!
通路を進んでいたフィオナは、ふと足を止めた。
胸の奥をかすめるような、微かな魔力の波。
淡く、しかし確かに覚えのある気配——。
(……この魔力……妹の?)
懐かしさと同時に、警戒心が背筋を這い上がる。
目を凝らすが、そこに姿はない。残滓だけが、風に溶けるように消えていく。
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この頃クロエは、保管庫の奥で棚を調べていた。
古びた木箱や型落ちの部品が、薄い埃をまとって静かに並んでいる。
不意に、空気がねじれるような感覚が走った。
視線を奥の木箱へ向けると、隙間から小さな羅針盤がほのかな光を放っていた。
クロエは両手で包むようにそれを持ち上げる。
(……この羅針盤て……)
そのままポーチに滑り込ませようとした瞬間、肩の上からノアールの声が降ってきた。
「それ、盗みではないのか?」
「手に取っただけで盗み扱いはおかしいでしょ」
「しまおうとしておるではないか」
「何事もなければ後で返すわよ」
「ほう、“何事もなければ”か。……つまり何事かがあれば返さんと」
「大切なことかもしれないの!大丈夫ならその後かえす!……わよ」
「なんじゃ今の『間』は」
クロエはそっけなく返し、ポーチに滑り込ませた。
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男は炉心区画の前で立ち止まった。
結界膜の奥、台座にはもうコアはない——いや、今は別の場所に隠されていることを知っている。
それを取りに行き、黒幕に渡せば……娘は助かる。
だが、その瞬間、背後から伝わる微かな振動に意識が向いた。
車輪の響き、鉄の軋み、時折混じる子供の笑い声。
——この列車の上には、無関係な乗客が何百人もいる。
もしコアを奪えば、推進も制御も崩れ、彼らは——。
拳を握り、視線を床に落とす。
娘の声が耳の奥で蘇る。「……お父さん、助けて」
胸の奥で何かが強く揺れた。
(迷っている時間はない……だが——)
喉の奥に言葉にならない息を押し込み、男は一歩後ずさる。
今はまだ、決断できない。
⸻
客室付近を歩くフィオナの耳に、低く鋭い声が届く。
「……久しぶりだな」
その声には、驚きとわずかな躊躇が混じっていた。
振り向いたフィオナは、声をかけられたことに驚きつつも、その男が誰なのか分からない。
「……どこかで会いました?」
男の眉がわずかに動く。短く息を吐き、目を伏せて、
「いや……なんでもない」
とだけ言って背を向ける。
ゆっくりと歩き去る中、口元だけが小さく動いた。
(僕にあんなことをしておいて……忘れているだと?)
(思い出させてやらないとな)
その顔には、どこか企みを秘めつつも、軽く段差につまずきながら油断の色がちらりとのぞいた。
⸻
フェルナーは調査の進捗を確認するため、客室を通りながら現場へ向かっていた。
途中、子供に呼び止められ、魔道機関の仕組みを簡単に説明してやる。
興味津々で聞き入る少年に、彼は笑って古い工具を一つ見せ、軽く動かして仕組みを実演してみせた。
近くにいた老婦人にも声をかけられ、彼女の荷物を棚へ持ち上げるのを手伝う。
そんな、技師としての顔と人間味を見せながら、フェルナーは何事もなかったように足を進めた。
現場の確認を終えて客室に戻ったフェルナーは、廊下でフィオナとすれ違った。
「どうだ、何か分かったか?」
「……まあ、ぼちぼち」フィオナは曖昧に笑い、少し首を傾げる。
「ただ、さっき変な人に声かけられてね。覚えはないんだけど……やたらと意味深な態度で」
「ふむ……列車には色んなのが乗ってる。気を付けろ」
フェルナーは短くそう告げると、再び歩みを進めた。
フィオナは背を見送りながら、小さく息を吐く。
こうしてそれぞれの胸に芽生えた疑念と記憶の断片が、まだ見ぬ真実を中心に、少しずつ交差し始めていた——。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
物語も徐々に進み、核心部分が少しずつ見えてきました。
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