第3話『最初の目標』
「『チャージ』ショット!ってな」
「『シャイン』!」
ユーマが、3匹で行動していた緑色の体毛のプレーンウルフのうち1匹の頭を、『チャージ』を使った攻撃で頭を吹き飛ばし、続けて2匹目の頭も吹き飛ばす。
「おっと!……早くこっちもトドメを刺してー」
プレーンウルフの噛みつき攻撃を回避しながらシャヤがのんびりと言う。
信仰魔法の『シャイン』は回復・強化が多い信仰系魔法の数少ない攻撃魔法である。威力は低めなのでまだプレーンウルフを一撃で倒せるほどではないので、ヘイト取りに使う程度に止まっている。
「分かってるよ!……よし溜まった!」
そして1発だけ弾がリロード出来たのを確認したユーマは、すぐさま3体目のプレーンウルフの頭も撃ち抜いた。
『レベルアップ!Lv.4→Lv.5 STP+5 SP+3』
「5の倍数だと貰えるポイントが多いのか?」
ユーマはレベルアップのリザルトを見てそう呟く。
ファンタジア・オンラインのレベルアップはレベルアップごとに全ステータスポイントが+1され、自由に割り振れるステータスポイントがLv.2〜4までは3。スキル取得などに必要なスキルポイントが1貰えていたのだ。
「キリが良い数字だし、そうなんじゃない?」
パッと確認だけしたシャヤもその意見のようだ。
「スキルポイントも溜まったし、街で掲示板でも見ながらスキル取得とステータス割り振りしない?」
「そうだな。溜まった素材もどうにかしたいし、1度戻るか」
シャヤの提案に同意したユーマ。2人は並んでログスの街へと歩き出した。
「にしても、チャージのの効果が弾倉にかかるのは便利だな」
「初期スキルの組み合わせでは、結果的に相性が良かったんじゃない?全部の銃系統武器がそうなるかは分からないけど」
ユーマが初期取得したスキル『チャージ』は次の攻撃の威力を上げると言う説明だが、少なくともノーヴィスライフルの通常攻撃だと、装填されている2発に効果が乗るので1回のチャージで2回の強化攻撃が出来たのである。
「シャヤはテイムは出来そうなのか?」
「『従魔のカケラ』は溜まったから、初心者用の『従魔結晶は作れると思う」
テイムスキル持ちが戦闘するとドロップする『従魔のカケラ』を100個集めると、街のテイマー用のアイテムショップで『従魔結晶』と言うアイテムと交換後にテイムモンスターを呼び出すことができるのだ。
「最初のテイムモンスターはどんなのがいるんだ?」
「ログイン直後に少し見ただけだから詳しい能力は分からないけど、犬・猫・鳥・魚の4種類がいるみたい」
そんな話しをしながら2人は見かけたモンスターを倒しつつ、ログスの街へと帰還した。
「さて、掲示板でも見るか」
そしてユーマはメニュー画面から、外部サイトを見ることができるページを開くと、活発なファンタジアオンラインの掲示板サイトを開いた。
〜正式サービス ファンタジアオンライン 攻略スレ1〜
125:銃は外れだな。攻撃力がDEX依存で体力もMPも上がりずらい。おまけに武器更新タイミングも他より、かなり遅れそう
126:物理遠距離なら弓が安定だろうけど、矢が消費アイテムなのは痛いよな
127:武器はこれから開拓が進むだろうから置いといて、何か有用なスキルとか見つかった?
128:さすがにまだ見つかってないんじゃ?このゲームのNPCの挙動も複雑で、持ってる武器とかスキル、そよ組み合わせでも会話イベント変わるし
129:開拓のしがいがあるな!!
「一般攻略スレには何もなし、テイマー関連はどうだった?」
「初級テイムモンスターは犬系の『プレーンドッグ』猫系の『ロックキャット』鳥系の『ヒノコスズメ』魚系の『ブルーフィッシュ』の4匹で……」
プレーンドッグは噛みつき攻撃と草を操っての足止め、ロックキャットは爪を石でコーティングしての物理攻撃と石を利用した物理攻撃に強い盾を作り、ヒノコスズメは火の粉の遠距離攻撃と熱による持続ダメージ、ブルーフィッシュは水鉄砲に魔法系統に強い水のバリアを形成できるということだ。
「ぶっちゃけ、みんな小さくて可愛い系だからいまいち惹かれない……」
それらの情報を見てシャヤは暗い表情で言う。
「大きい動物が好きだもんな、シャヤは」
シャヤは動物なら何でも大歓迎!と言うわけではなく、サイズの大きい動物が好きなのだ。
「お?面白い情報が出てるぞ」
「え?」
シャヤに続いて、テイマーの掲示板を覗いたユーマが言う。
ユーマが見たタイミングで出された情報なようで……
ファンタジア〜テイマーの集い〜オンライン
450:『プレーンウルフの従魔結晶』ってアイテムドロップした。テイム屋に持っていくと、野良のモンスターがごく稀に落とすアイテムで、そのモンスターをテイムできるみたい
そこからはさっそく、プレーンウルフの能力も開示された。物理火力が高めに振られたプレーンドッグのようなもので足止めなどの補助スキルを持っていなかったので、見た目が好きとかでもない限りはプレーンドッグの方が良いと結論が出たようだ。
「どうする?好みのモンスターが出るまで我慢するか?」
ユーマがそう聞くと
「テイムスキルが腐るのは勿体無いけど、そうしようかな……全力の愛情を向けられないのにテイムするのは気分が乗らないし」
「だと思ったよ」
拘りが強いシャヤならそう言うだろうと、思っていたユーマはそう呟く。
「じゃあ一旦解散して、お互いにステ振りとスキル取得が終わったらまた集合しようぜ」
「それで良いよ」
そして、1人になったユーマは
「そうだ、まさ兄はどうしてるんだろ?」
おそらく配信はしているだろうと思って、兄のチャンネルを開くと案の定配信をしていた。
『やっと歯ごたえのあるやつが来たか?』
クロマサというプレイヤーネームで配信している正徳は、ユーマたちがまだ入っていない、『ログスの森』という森林エリアで戦っていた。
・クマー
・クマちゃんキター♪───O(≧∇≦)O────♪
・オオカミやイノシシよりは強そう
・イノシシもあんな正面から突進されたら怖いけどな
クロマサの正面には両腕を上げて、威嚇のポーズをとっているクマのモンスター『グリーンベアー』がいた。
『……よっと』
振り下ろしてきた片腕をクロマサは軽くかわすと、他よりは体毛が薄い伸びた関節部分を刀で切り裂いた。
・何でこんなに柔らかい部位を的確に切れるんだろうな
・しかも攻撃避けながら
・あの魔神アリーナをクリアした怪物だから驚かない
・もう倒しちゃったよ
・アクティブスキルの存在を忘れそう
クロマサはあっさりとグリーンベアーを倒す。ユーマが使うチャージのようなアクティブスキルは使わずにだ。
ユーマも視聴者と同じように呆れていると
『目標は決めた、『グリーンベアー』テイム』
同じように正徳の配信を見ていたのか他の場所から情報を得たのか分からないが、タイミング良くシャヤからユーマにメッセージが送られてきた。
「『了解』っと」
シャヤが言わなければ、自分から提案していた内容を快諾したユーマは消耗品なども補充するために、正徳の配信を閉じて動き出した。
『魔神アリーナ』
ジャンル:VRファンタジーアクションゲーム
『内容』
ファンタジーゲームに出てくるボス戦のみをするゲーム。ギミック満載な上に純粋なプレイヤースキルを要求される鬼畜ゲームとして有名になった。正徳は全ステージソロ討伐という、最難関の実績を解除した数少ないプレイヤー。