第6話 俺の高校って設計ダメダメ
これ以上、変なものを見ないよう、なるべく下を向いて歩いて、やっと学校に着いた。学校には、生徒たちが教室間をせわしなく行き来する、いつもと変わらない風景があった。その中に、幽霊とか混じっているかもしれなかったが、あからさまにおかしい化け物類は、いなかったので取りあえず安心する。
俺の通っている阿我汰高校は、街の中心部から2キロほど東に位置する。中心市街地までの2キロの間にもちらほら店があるから、下校時ついつい寄り道してしまう。家から5キロ以上離れている場合は、この辺では珍しくバイク通学が許可される。俺もバイク通学だから、家までは5キロ以上は離れているということだ。
幾つもの渡り廊下を歩きながら教室へ向かう。この高校の構造は、ちょっと変で、昔火事で焼けて急いで建てた所為か、全体で4棟の校舎が独立しており、その各棟を渡り廊下や連絡通路が連結している。上から見ると、漢数字の三に更にもう1本横棒を追加したような形だ。連絡通路は基本、2階にしかないので、A棟の4階にいるとき、B等の3階に行きたいときには、一旦、2階に下りて連絡通路を渡り、また階段を上る、という無駄な体力を使わなければならない。それに、1階の渡り廊下も、各棟一ケ所しかないし、全校生徒が毎時限通る主要通路なのでシャッターがいつも開けっ放しで、雨の日なんか雨粒が吹き込んで酷いことになる。これ設計した奴、バカなんじゃねぇか。
「はようぅ」
「はよ。朝からダルそうだね、トウシ」
そう返すマコ。
そりゃ、そうだろうよ。見てはいけないものを立て続けに目撃したんだから。しかも、日を追うごとに、その現象が鮮明になってくるとなれば、俺は、これからの日常を想像し憂鬱になった。
「うー」
「・・顔色が悪いぞ。どうした」
ノブが気遣うような口調がしているが、顔の表情が明らかに裏切っている。
にやにや笑いやがって、コノヤロウ。
「うるせー、メガネ」
力なく、それだけしか俺は返せなかった。
「いやいや、ここはひとつ、トウシのだるい原因を当ててみようよ」
「そうだな・・。朝ごはんの卵かけご飯の中に自分の鼻水が混じって、渋々捨てようとしたが、やはり勿体なくなって食べてしまい、その上、案外、塩味が効いていてうまかったと思ってしまった自分に絶望した」
「僕は、歯磨きをしようとして口に入れたのが、まさかの親父さんのくしで、口の中にポマードの香りが広がり、危うく意識を手放しそうになった」
「いまどき、ポマードはないだろ。シンプルにカワイイ女子に見とれてたら、電柱に頭をぶつけた」
「普通すぎて面白くないよ。オバケを見たくらい言わなくちゃ」
「オバケ言うなーー!」
マコのズバリ的中に驚いて、思わず叫んで止める。
デカい声を出しすぎたせいか、教室中の視線を感じる。やべ。
「あ、わり、わり。なんでもないから」
二人とも横を向いて、笑いをこらえている。くっそ、笑うな。
「で?何があった」
机に頬つえをつきながら、俺に振ってくるノブ。
「あー・・、それ聞くのか?」
俺は言い澱んだ。なんか、変な現象が次々と起こって、理解が追いついていないし、上手く話せそうにない。
「思い出したくないんだったら、いいよ。また、話せるときで」
マコが、そうフォローしてくれた。まあ、そういうわけでもないんだが。そのまま話しても、支離滅裂過ぎて信じてもらえそうにないからで。
「あー、えっとな」
俺はこの二人にあーのこーの言いながら、実際頼っているところが多い。俺は登校中に起きた内容を頭の中で整理しながら、ざっくりと話した。
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