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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第5話 日常の異変

 2泊3日の林間学校合宿のちの、休み明け。

 俺は、あの山の中から日常に戻ってきた。あの星空や普段体験できないようなこと(肝試しは嫌だが)は、得難いものだったが、やはり家に帰れば、文明の利器の有難さをしみじみと感じた。レンジでチンすれば温かい飯がでてくるし、夜も電気を点ければ明るいし、風呂だってボタン一つで沸かせる。そして、何より安心する。

 空を見ると、雲りだが、ところどころ晴れ間が差している。近ごろ、真夏に向けて日に日に気温が上がってきているので、曇りは多少涼しく感じてありがたい。

 住宅街の中を、俺は学校へ向かって歩いている。いつもだったら、愛車のバイクでの通学だが、休みの内にガソリン補充するのを忘れていた。いつもバイクで移動しているから、歩くのがクソ面倒くせぇ。あぁ、バイクが恋しい。

 バイク以外は、何のことはない、普段通りの生活が始まるだけだ。あー、そう言えば、中間テスト近かったな。嫌なことは、すぐ思い出すのに、授業の内容とか、暗記問題とか、なんですぐに思い出せないかね。

 ただでさえ頭の回らない脳みそが、さらに月曜日という最悪の条件の中、グダグダくだらないことを考えている。

 ふと、道路のわきに白いものが見えた。いつもならバイクだからそんなもの目にも入らず、素通りしている。

 なんだ?

 近づき、しゃがんで見てみると、高さ七センチくらいの砂で出来たような小さな白い山があった。

 「なんだこれ」

 なんとなく、どこかで見たような。

 あー、そうそう。これ、盛り塩だ。その場所を清めるために使う、昔ながらの簡素な結界。三角錐に塩を盛り上げ、厄除けや縁起かつぎに使うやつだ。

 どっかで見たことあるかも・・程度なのに、スラスラと知識が出てきた。なんか、そんな自分のことが気持ち悪い。俺は、オカルトから一番遠い180度の立ち位置にいるつもりだったが、廻り廻って実は360度の位置にいたとでも言うのだろうか。いや、そんなわけがない。俺の小さな脳の容量にそんな知識を入れるスペースがあったら、すぐさまバイクの情報に置き換えたいくらい、超常現象、未確認物体等に興味はない。 

 でも、なんでこんな道端に盛り塩があるんだ。端にあるとはいえ、誰か蹴飛ばしそうなところにある。店の入り口の脇によく見るが、公道に設置してあるのは、見たことがない。ここに置かざるを得ない理由があるのか・・。例えば、ここを浄化しなければならないほどのことが過去起きたとか。確か、これって二対に、つまり盛り塩が4か所に設置されているパターンが多いはず。一対だけだと線だけで、濁ったモノをそこから払い退けるだけだが、二対にして四角の中に対象を囲んでしまえば、それを逃がすことなく浄化が可能になる。

 ・・。

 そこまで考えて、止めた。

 考えても、しょうがない。こういうのには近づかない方がいい。因縁を拾う。

 立ち上がると、俺のすぐ脇をすり抜けていくミニ四駆。

 「誰だよ」と思っておもちゃが来た方向を振り返るが、誰もいない。

 「?」

 どうせ小学生くらいの子が、走らせているものだと思ったんだが。

 頭をかしげていると、そのモーター音が、消えた。

 周囲を見回すが、ミニ四駆は、既にない。・・あれ?

 俺は、狐につままれたような気分がした。

 「早く、ガッコ行こ」

 なにか、急に背筋が寒くなるような気がして、速足で歩き始める。この嫌な感じ、つい最近もあったような気がする。いや、気のせいだ。こんなことが、しょっちゅうあったんじゃ、たまったもんじゃない。

 そうさ、ガードレールの下に、靴なんか並べて置いてあったりしねぇし、車止めの赤白ポールに抱き着いて「ごめんなさい」って呟いているおっさんなんて見えねぇし、妙にきょろきょろしているもんぺ姿の幼女なんて、断じて全く見えない!

 俺はそう自分に言い聞かせながら、口でも「気のせい、気のせい」、とつぶやきながら、足早に学校へ向かった。思えば先週の林間学校の肝試しで気味の悪い目に遭ってから、変なことがちらほら起こっている気がする。今までは、気の所為にしてやり過ごしてきたが、その許容範囲を超えてきている。

 ああ、こんなことが、日常であってたまるか。


毎日16:00頃、更新しています。

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