真実
「ええっと・・・、ここにガルドって言う鍛冶職人はいるかい?」
目の前の少女に語りかける。
「私がガルドよ」
「いやいや、名前からして男の人じゃないの?」
「歴としたレディよ!」
本当にこの子がガルドなのだろうか、なんか嘘くさいなぁ。
「君が本当にガルドさんだったとして、そんな小さい体で槌なんか振れるの?」
「私はドワーフよ、それくらいのことなんでもないわ」
「君がドワーフ?聞いた話だと女のドワーフは髪の毛の量が多いって聞いてたんだけど君は少ないよね?」
この女の子の髪は肩までのショートヘアで、特に量が多いって感じがしない。
「確かに女の髪の量が多い人は多いけど、それはただ単に髪を切るのが面倒くさいからのばしたままにしている人が多いってだけよ?男の方も髭をそるのが面倒だからってだけ。ドワーフは鍛冶のこと以外には無頓着なのよ」
「でも君は違うんだね」
「当たり前よ。だって可愛くしてないと行き遅れるじゃない。私は素晴らしい旦那と一緒に子供を作って過ごしたいのよ」
「鍛冶はいいの?」
「もう作りすぎて飽きたのよ」
「ならもの凄い素材で武器とかも作ったりした?」
「当たり前よ、オリハルコンで作った大剣、神樹の枝で作った弓、ドラゴンの鱗で作った鎧も作ったわ。ありとあらゆる素材でね」
「ならこれは見たことある?」
魔法の袋から朱雀の爪と嘴を取り出す。朱雀自身が大きかったため、爪と嘴も大きかった。そのため重量もあり、封印しているステータスでは取り出すのが大変だった。
女の子の前にそれらを置くと、きょとんとした顔で此方を見てきた。
「これが何?ただの大きな鳥の素材じゃない」
この言葉で俺はこの子がガルドではないと思った。
だって考えてごらんよ、ドラゴンの素材や、神樹を使ったことのある鍛冶師であれば素材の良し悪しくらい簡単にわかりそうなものだろう?
実際はよくわかんないけども。
「ねえ、本当のことを教えてくれない?君の名前は?」
「だ、だから私はガルドだって言ってるじゃない」
明らかに動揺し始めていた。最初は憮然とした態度であったのに。
「この素材を見てただの鳥の素材だなんて言うやつが世界一の鍛冶師な訳が無いじゃないか。君はガルドではない、そうだろう?」
「ううっ・・・」
俯いてしまった。少し意地が悪かったかな?
「正直に話してくれないか?」
「・・・わかったわよ。・・・私はガルドじゃない、ガルドは私のお父さんの名前よ。私の名前はアネモネよ」
「そうか、話してくれてありがとう。僕の名前はマサムネだ。して、お父さんはどこに?」
「2年前、私が12歳のころに鍛造の素材を採取しに出てったっきり戻ってきてないわ・・・」
「・・・そうか。頑張ったんだね」
俺は気が付くとアネモネの頭を撫でていた。
「なっ!?何するのよ!?」
「お父さんがいなくても1人で頑張っていたんだろう?偉かったね、でも、辛かったよね、苦しかったよね」
「・・・」
「もしかして、今まで泣くことも出来なかったんじゃないかい?お父さんがいなくて、悲しみをぶつけることも出来ずに、ただ我慢していたんじゃないのかい?」
「・・・」
「君のことは何も知らないけれど、君の言葉を聞くことはできる。だから、俺に話してみなよ。少しだけかもしれないけど苦しみが和らぐかもしれないよ?」
「ううっ」
「もう何も我慢しなくていい、存分に泣けばいい、でも、そのあとは前に進まなくてはならない。お父さんが帰ってくるための居場所を残しておくために」
その言葉で今までアネモネを支えていたものが崩れた。
「うっうっ、ううっ、うわぁぁぁああああん!うぁぁあああん!」
手に持っていた金槌を床に落とし、身長が低いため、俺の鳩尾あたりに頭突きをかます勢いで飛び込んできた。
俺は苦しさに耐えながらもアネモネの背中をさすり、思う存分泣かせてあげた。
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アネモネが泣き終わり、少しずつ心が落ち着いてきたところでアネモネが今まで思ってきたことをぽつりぽつりと話し始めた。
アネモネのお父さんである、ガルドさんは本当に世界一の鍛冶屋だったらしく、いつも武器や防具を作っていたらしい。
でも、世界一なだけあっていろいろな人たちに武器を作ってくれと言われた。最初は快く依頼を受けていたのだが、武器の価値も知らない貴族や冒険者が大勢来た。ガルドさんはそれが嫌になり、商い通りの一角にあった店を閉めて、店が見つけずらいこの場所へと店を移したのだそうだ。
それでも貴族たちはどこからかこの店の場所を聞きつけ、やって来た。
ガルドさんは鍛冶屋の前はAランクの冒険者で、力ずくで追い返したりしたらしい。
武器を依頼するだけで怪我を負ったりするのはバカらしいと考えたのか、今度は手紙で催促してきた。ガルドさんは送られてきた手紙をことごとく燃やしていった。それでも手紙は一向に減る気配を見せず、むしろ多くなっていった。
そこで、ガルドさんは一度この街から姿を消した方がいいかもしれないと考え、少なくなっていた武具の素材を採取するとともに、この街を出て行ったそうだ。
そしてそれっきり、今まで戻ってこないと言う。
その間、アネモネ1人でこの店を守っていたのだと言う。
苦しみや悲しみに耐えながら。
「ちょっと待って、気になっていたんだけどアネモネのお母さんは?」
「ああ、私は捨て子だったものですからお母さんはいなかったんですよ」
「・・・もう一回泣く?」
「もう泣きませんっ!」
「そうか、にしてもこの店の中は酷いな。埃まみれだし、人がいていい場所じゃないよ」
「そう・・・ですよね」
「と言うわけで、掃除をしよう」
「はい?」
「さっきも言ったでしょ、ガルドさんが帰ってくるための場所を残しておかなくちゃね、いつ帰ってきてもいいように」
「・・・はいっ!」
僕らはまず部屋の換気をするべく、ドアや窓を全開にして、埃を箒で外に掃出し、床を水拭きした。豆知識として、埃などは高所よりも低所の方がたまりやすかったりする。
床の次は店に置いてあるカウンターや椅子、装飾品などの汚れを落としていく。
一通りの掃除が終わり、店は最初に入ってきた時よりも見違えるほどに綺麗になっていた。
「ふう、ようやく一息つけるね」
「ねえ、良かったの?」
「ん?何が?」
「色々と話を聞いてくれた挙句、掃除まで手伝ってもらってさ」
「いいのいいの、かわいい女の子の為ならこれぐらい喜んでさせてもらうよ」
「か、可愛いって・・・」
アネモネが顔を赤くしながら俯いてしまった。あれ?これってフラグたったかな?
もう少しフラグを強化してみよう。
「それに、頑張ってる女の子を放っておくのは嫌だし、アネモネのことを尊敬したから手伝ったんだよ」
「尊敬?私を?」
「うん、僕ならアネモネみたいに耐えることなんてできないからね」
「そ、そう」
強化されたかな?まあ、それは置いといて、
「次はカウンターに山積みになっている手紙をどうにかしようよ」
「あ、あれは捨てちゃってもいいわよ、どうせ武器とかの依頼だろうし」
「もしかしたら重要な手紙とかもあるかもしれないじゃないか」
手紙の山へと向かい、1つずつ名前を確認していく。
アネモネの言うとおり、殆どが依頼の手紙だった。そんな中、
「あれ?これって・・・アネモネ!これみなよ!」
「どうしたのよ、大声出して」
椅子に座ってカナリアとじゃれていたアネモネを呼びつけた。
つーか何遊んでるんだよ、君もやりなさいよ。
「いいから、これ!」
差し出された手紙の差出人をみて、アネモネの目が大きく見開いた。
「これって・・・お父さんの・・・」
その手紙の差出人はガルドさんだった。長い間放置されていたらしく、紙が擦り切れて、ところどころ傷んでいる。
「なんて書かれてるの?早く教えてよ」
「待ってよ!そんなに急かさないで!」
アネモネは震える手で封を切っていく。
アネモネへ
元気にしているかい?君のもとから離れて1年がたつ、月日と言うものは早く過ぎていくものだね。
この手紙を書いたのは君に報告するべきことができたからなんだ。
僕に妻ができたんだ。隣の国のアーフェリスを旅していた時に、魔物に襲われているところを助けた時に惚れてしまわれたんだよ。
僕もその人を一目見て心を奪われた。そして結婚したんだ。
数か月後には子供も生まれる。君も好きな人を作って楽しく生きてくれ
それじゃあ。
ガルドより
・・・アネモネにかける言葉が見つからない・・・。
隣からもの凄い殺気を感じる。今すぐに逃げ出したい・・・。
「ねえ、マサムネ?」
「な、なんでしょう・・・」
「これってどういうことなの?」
「ええっと、つまり・・・もう、ガルドさんはここには帰ってこない・・・かな」
「へえ、そう・・・」
怖い・・・アネモネの後ろに般若の顔が見える気がする・・・。
「ふっっっっざけるなぁぁぁあああああああ!!!」
アネモネの声があたりに響き渡った。
シリアスは苦手です・・・。
明日も投稿できるかもしれません。




